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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 右近衛将監(左兵衛佐)


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第40話 術理


 早朝のさわやかな空気の中、俺は5日ぶりに迷宮の入り口に足を向ける。

 広場では衛士たちが朝の体操を行っていて、俺に気付いたウーゴがさっそく近づいて来た。


「よう、シュウか。久しぶりだな、お前にしては」


「ああ、防具を新調するのに時間がかかったんだ」


「ふむ、お前は軽装過ぎたからな。それでもまだ頼りないが、だいぶ良くなったぞ」


 ウーゴが俺の頭部に目を向けている通り、今回からついに俺は兜をかぶる装備に更新している。

 身体は以前から使っている綿襖甲を修繕した物だが、頭に関してはエリカから頭部全体を守る兜の着用を厳命されてしまったのだ。


 これには俺も困ってしまったのだが、武具の店舗を回ってみたところ意外と良いものがあった。

 見つけた鋼鉄製のヘルメットは、額の庇から後頭部へと伸びる縁が、耳を避けるように大きく湾曲していた。


 兜は聴覚を阻害するという先入観があったが、どうやら斥候タイプの探索者には俺と同様の需要があるらしく、このようなデザインの兜も既製品が存在したのである。

 これならば聴覚を阻害されることは無いだろう。


 俺は手拭いを剣道の豆絞りのように頭に巻いて、その上から兜をきつく被っているので首を振っても逆立ちしても脱げることは無く、想像以上に良いフィット感だ。


 従来の鉢金と違って頭頂部や後頭部も守れているので、防御力としては格段の進歩だろう。

 しぶしぶと忠告に従ったのだが、案外と良い結果が得られたものである。

 

「頭は良くなったが…、前回は火にやられただろ。胴はもっと何とかなんねえのか?」


 ウーゴが言う通り、胴体に関しては一見変わりなく綿襖甲である。

 だが、これにも工夫は凝らした。


 決め手は明礬(みょうばん)だ。

 まさかこの世界で明礬が手に入るとは思っていなかったのだが、錬金術師なる職業の店舗で購入できた。


 簡単に解説すると明礬とはすなわちアルミニウム硫酸塩で、日本でも古くから襖絵の滲み止めとして使われている物質だ。


 俺は綿襖甲の布部分をたっぷりの明礬水に漬けたのちに、乾燥させて綿に明礬をくまなく浸透させた。

 これにより明礬の難燃性質が発揮されて、耐火服とは言わないまでも簡単に燃え上がったりはしないだろう。


 というわけで、一見変化が無いように見える胴体部分の防備も、しっかりとバージョンアップしているのである。

 まあ、これと棒手裏剣の増産のせいで準備に5日もかかったのだが、それは仕方ない。


 おかげで身体の鍛錬もはかどったし、種々のイメージトレーニングも積んで来た。

 よく分からんセクハラ妨害はあったが、準備万端で探索再開である。





 5日ぶりの迷宮の空気を鼻から吸い込むと、頭の芯が澄んでいく心地よさを覚える。


 ああ、これだよな。

 何度味わっても飽きることのない、迷宮探索の第一歩を踏み出す時のこの快感。


 俺は浮つく心を抑えながらも、ゆっくりと階下に向けて足を踏み降ろしていく。

 落ち着け…、迷宮は逃げたりしないんだ。


 俺は腰の小太刀の鯉口を切って、鈍く光る刃に自分自身を投影するように精神を統一していく。

 地下一階層のフロアに到着した時には、俺は一筋の刃として完成していた。


 さあ、行こう。




 通路の正面から犬頭の魔物、いやエリカから主だった魔物の名前も教わった。

 こいつらはコボルトだ。


 最近は地下1階層を通り抜ける際にウォーミングアップ代わりに蹴散らしていくのだが、今日は試したいことがある。


「グルゥ!」


 俺は身を隠していないので、3匹のコボルトどももこちらに気付いている。

 連中は左手に備えた盾を掲げ、半円形に俺を囲むように接近してくる。


 俺は腰を落として小太刀を右脇構えにすると、脳裏にあの痺れるような感覚を思い描く。


 この5日間、飽きもせずあの斬撃を脳裏で再現してきた。

 そして分かったことがある。


 あの時、雷が迸るようにして奔った刃には、超常の力が宿っていたのだ。

 俺がにわかに達人の領域に達した理由は、すなわち尋常の剣の道にあるものではない。


 つまるところ…、この世界特有の力が発揮されたのである。


 もちろんそれで構わない。

 俺は今やこの世界の住人なのだから、この世界の術理を窮めるまでである。


「ふっ!」


 短く息を吐き出すと、瞬時に身体の奥底からエネルギーを引き出す。

 魔法防御に利用する場合と同種のエネルギーであるが、防御のために身体を覆うのではなく、爆発させて踏み込みと共に剣を奔らせる。


「ゲ!?」


 一閃に振りぬいた小太刀は、掲げられた盾ごとコボルトを上下に分断した。


 …できたぞ。

 あの痺れるような手ごたえが、俺の手中にある。


「ギャギャ!?」


「クゥ~ン…」


 突然の稲妻の煌めきと、水平両断された仲間を目撃したコボルトどもはすでに戦意を喪失している。

 普段なら無理に仕留めにかかったりはしないのだが…、すまんが、この身から湧き上がる歓喜を受け止めて欲しいんだ。


 あと少し、付き合ってくれ。




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