第37話 そんな
「そうか、あんたがシュウか。一人で探索しているって話は本当だったんだな。いや、本当に助かったぞ」
パーティのリーダーである前衛戦士のシーロが俺に礼を述べる。
これまでも迷宮内で彼らの姿は何度か見ていたが、今回で初めて名前を知ることになった。
前衛戦士はリーダーのシーロと、もう一人がすでに名前を知っているダリオ、そして両手剣の女剣士ベリンダ。
後衛の僧侶姿の女がクロエ、ローブ姿の男がクレメンテ、そしてすでに知っている女斥候がアニタと名乗った。
彼らは巨大アシダカグモとの戦闘で苦戦し、ベリンダが毒牙を受けたことでピンチに陥っていたらしい。
なお、ドロテア婆さんの解毒薬はさすがの薬効で、女剣士のベリンダはすでに顔色を取り戻している。
現在はベリンダの体力の回復を待つために、迷宮の一角で休息しているところである。
まあ、これ以上俺は一緒にいる必要は無いだろう。
ここに留まると、人数が6人を超えてしまうしな。
「相身互いだ、気にすることはない。じゃあ、俺はこれで」
「ま、待ちなよ…。あんたもボロボロじゃないか」
まだ本調子でないのかベリンダが力ない声を上げ、俺を引き留めようとする。
周囲のメンバーも俺の姿を見てうんうんと頷く。
…たしかに、迷人の火炎魔法を浴びた俺は装備や衣服が黒焦げであり、皮膚にも治癒し切れていない熱傷跡があちこちある。
傍目に見ればむしろ俺の方が遭難中に見えても不思議ではない。
「そうだぞ、無理すんな。ここは4人と3人に分かれて、それぞれで地上を目指そうぜ」
このダリオの提案については、少し説明が必要だろう。
6人を超える集団で迷宮を探索することは禁忌とされている。
なぜならば6人を超える集団で戦闘に至った場合、クラスの恩恵が一切働かなくなってしまうのだ。
位階がいくつであるかにもよるが、数十%の身体能力低下状態に陥るわけだから、それは致命的と言えるだろう。
このため、大概の探索者は6人組のパーティを結成して探索に臨んでいるわけだ。
前回俺が救援したパーティも落命した者が3名と生還した者が3名で、元はちょうど6人のフルパーティだったのである。
この辺のことは地上に出た初日にエリカから説明を受けているが、俺にとっては今の今まで関係のない話だった。
端から一人で探索する気だったからな。
それはそれとして、帰還のための分隊割を話し合い始めたシーロたちにハッキリ断りを入れねば。
「いや、俺は一人の方がやりやすいんだ。あんたらも慣れた6人構成の方がいいだろうし、ここで別れよう」
「あ、おい。待てって!」
俺はダリオの静止の声を振り切って、迷宮の闇に姿を消した。
程なく地下2階層へ戻って来た俺は、周囲の気配を窺いながら敵を回避して帰還ルートを選定していく。
地下1階層まで戻って来ると、さすがにもう敵回避は面倒になってきたぞ。
もういいかな。ここから地上までは直行しよう。
クールダウン体操代わりに犬頭の魔物の首を、すぽんころん、すぽんころん、と刎ね飛ばし、骸骨の魔物は蹴り飛ばしてバラバラにしていく。
そして地上への階段にたどり着くころには、俺は心身ともに落ち着いた状態へと移行することが出来ていた。
今回も充実した探索だった。
このまま下宿に直行して、飯を食って身体を清めたらすぐに床に就きたい心境だな。
しかしそうはいかん。
このまま帰宅してしまえば、ドロテア婆さん経由でエリカに通報が行ってしまう。
色々と偽装工作をしてから戻らねばなるまい。
などと考えをまとめながら、光に目を慣らし終えた俺はいよいよ地上へと足を踏み出した。
「おっ、シュウか。て、なんだお前、ボロッボロじゃねぇか!?」
衛士のウーゴが俺の風体を心配して駆け寄って来た。
こいつも気のいいやつだが、エリカと通じているので口止めをせねば。
「シュウさんが戻って来たんですか!?」
ウーゴの後ろから駆け寄ってくるエリカの姿。
え、そんな。
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