第34話 実験
武器を再調達した俺は、その後は快調に戦闘を進めていくことが出来た。
遭遇する敵としては、お馴染みのウサギやら巨大ネズミやら、巨大カエルやら巨大クモやらボーリング甲虫やらで、まあ苦戦する相手はいないな。
これまでに苦戦した相手というと、ガスを吐いてきたドラゴンやらコバルトブルーの鬼やらだが、どうも滅多に遭遇しない相手らしい。
サムライ迷人も比較的稀少であるため、見つけ次第確実に斃して武器を補充している。
そして今、俺の眼前には新たな敵の集団が見えている。
ふむ、僧侶風の迷人集団が約10…12人か。
手持ちの棒手裏剣が潰れているから、これはちょっと厄介な相手だぞ。
奇襲からの開幕投擲ラッシュで数を減らせないと、やつらの魔法攻撃を大量に浴びることになってしまう。
魔法攻撃を防御する技法も身につけたが、やたらと消耗するので何発まで防げるか分からん。
ちょっと作戦を考えるか。
「…!!?」
背後から忍び寄り僧侶迷人の口を手で塞いだ俺は、手早く短刀でその喉を切り裂いた。
僧侶迷人は腕の中でビクビクと痙攣したのち、塵となって消えていく。
こいつらは死体が残らないから、こういう時には便利だな。
迷人どもの隊列の最後尾から一人ずつ仕留めているが、すでに5人を塵と化してもまだ気づかれる気配がない。
隊列が半壊しても気づかないとは、こいつらの危機管理能力はどうなってるんだ?
おっと。
元々隊列の中央にいたはずの迷人が後ろを振り返って騒ぎ始めた。
さすがに気付いたらしいな。
残りは7人、あとは一気にいくか。
潜伏を解いて闇から躍り出した俺は、混乱している僧侶迷人どもの隊列に斬り込む。
「ヒュ!?」
「ゲフ!」
小太刀の右薙ぎで迷人の首を刎ね飛ばすと、同時に逆手に持った短刀で別の迷人の腹を深く切り裂く。
俺は迷人どもの間を縦横に駆け回り、一振りごとに血煙を巻き上げて行った。
と、そこで背後から例の気配が立ち昇る。
魔法だな。
それと分かって気配を追い続けると、魔法のエネルギーが立ち昇り、凝縮し、今まさに放出されようとしているのが分かる。
…なんとか躱せないかな、これ?
俺はあえて気配の主を放置して、魔法の回避を試みる。
放出のタイミングは簡単に読めるから、そこに合わせて回避を…、ぐっ!
放出されたエネルギーの目視に成功したが、こりゃダメだ。
まさに光の速さで飛来したエネルギーが俺に直撃して、内臓が捻じられるようなダメージが残るのみで回避など及びもつかない。
そして周囲からは複数の魔法エネルギーを感じる。
仕方ない。じゃあこうだ。
「つぁああああ!」
俺が発する気合と共に身体の奥底からエネルギーが湧き出し、身体に纏わりつくようにして滞留すると、迷人から放たれた魔法エネルギーと衝突して霧散した。
肚の内に空隙が生じるような独特の消耗感を覚えるが、このくらいならば戦闘に支障はない。
よし、実験は終了だ。
魔法を放った余韻で隙だらけの迷人どもを、俺は左右の剣刃で一息に斬り裂く。
ほぼ同時に宙に舞った迷人の4つの頭部は、石畳に落下する前に塵となって迷宮の闇に溶け込んで消えた。
後には迷宮の静けさと魔石の輝きだけが残り、いつもの戦闘後の寂寥感が漂うだけだ。
ふーむ、この防御方法も段々とコツが掴めて来たぞ。
前回は慣れないもんだから一気にエネルギーを使い過ぎたらしい。
今回の様に相手の魔法攻撃の威力を意識して、それをやや上回る程度の出力でいけばそうそう行動不能になるほどの消耗も無いだろう。
限界がよく分からんが、この感じなら4~5回は無理なく使えるのではないか?
鍛錬で限界を見極めてから実戦に投入したいところなのだが、いかんせん相手が放つ魔法攻撃があってこその技法なので稽古が難しい。
まあ、こうして迷宮内の実践で魔法攻撃の威力を身体で憶え、持ち帰った戦闘記憶を元に鍛錬を積んでいこう。
そして、位階上昇の感覚が俺を包む。
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