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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 右近衛将監(左兵衛佐)


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第32話 青鬼


 地下3階に降りたつと同時に、俺の心体は最高の覚醒状態を迎えた。


 よーし、いっぱい闘うぞ。


 俺は迷宮の闇に身を溶け込ませながら、慎重に周囲の気配を探る。


 廊下にも扉の向こうにも敵の気配がするが、どれから行くか…近いのから手あたり次第でいいか。


 通路の角から気配の主を窺う。

 うーん、あれは鬼か? 5体いるな。


 通路の先には身の丈2mを大きく超える半裸の巨漢がたむろし、手には巨大な棍棒を携えているのが見える。

 コバルトブルーの光沢がある皮膚と、額に生えた二本の角が人に非ざる存在を示していた。


 ふむ、あの異常に発達した腕で巨大な棍棒を振り回すとなると…、こりゃ恐るべき強敵だぞ。


 我々人類は鋭い爪も牙も持たないが、この手に武器を握ることで猛獣を克服してきたんだ。

 人ならざる者がその膂力のままに武器を振り回すなんて控え目に言って反則である。


 遠心力を加えた棍棒の強撃を受ければ、おそらくひとたまりもあるまい。


 さて、どう仕掛けるか。

 投擲で奇襲を仕掛けるにしても、あの巨大な頭蓋を見るに、棒手裏剣の質量では頼り無く感じてきたぞ。


 よし、ならこれだ。

 俺は腰袋から予備の短刀を取り出し、腰の短刀と合わせて両手に1本ずつ握る。


 一気にいくぞ、3、2、1、今!


「ギャグ!?」


「ゲォ!?」


 暗闇から放たれた銀の軌跡が2体の鬼の側頭部に突き立ち、くたりと脱力した鬼は塵と化していく。


 よし、通った。

 残りは、頼りないが棒手裏剣でいく。


「ググ!」


「ガァ!」


「ギィ!」


 俺が次々に放つ棒手裏剣が次々と鬼どもの顔面や首筋を捉えるが、今度は致命傷にならない。


 やはり質量不足か。


 しかし3体の鬼どもも無傷とはいかず、みな血の滴る顔を両手で覆っている。

 これは好機には違いない。


 俺は背中の太刀を引き抜くと、迷宮の闇から飛び出して一気に駆け寄る。


「しぃああ!」


 屈みこんでいる鬼の首を斬り下げると、堅竹を束ねたような強い手ごたえが返って来る。

 それでも俺は渾身の力で刃を押し込んで、なんとか断首に成功した。


 これは、太刀の方が持たんぞ。


 俺は切っ先を前に向けて胸元に柄頭を挙げると、身体ごと衝突するようにしてもう1体の鬼の首筋に太刀をねじ込む。


 仕留めはしたが、刃も切っ先も潰れてしまった。

 この太刀はここまでだ。


「グルゥア!」


 とっさに石畳に伏せた俺の元いた空間を、電車がホームを通過するような轟音を残して大質量の棍棒が通り過ぎる。


 やはり直撃を受ければ、生きては帰れない一撃に違いない。


 伏せ姿勢から跳ね起きた俺が小太刀を鞘払うと、顔面と首筋から血を滴らせた鬼が憤怒の表情でこちらを睨みつけている。


 …こりゃいいぞ。

 俺もコイツも生き残るためには、死力を尽くして相手を殺すしかない。


 混じりっ気なし純度100%の殺し合いだ。


 怒りに任せてメチャクチャに棍棒を振り回してくるかと思ったが、鬼は距離を取ってこちらを窺っている。


 仲間を一息に仕留めた俺の攻撃力を警戒しているのか、それとも得物のリーチ差を活かそうという意図か。


 俺は小太刀を右手一本で脇構えにすると、ジリジリと距離を詰めていく。

 奴から炎のように立ち昇る殺気のプロミネンスが俺を叩き、攻撃のタイミングを明白に教えてくれる。


 しかし、あんな化け物相手に小太刀でチマチマと先を取っても意味がない。

 狙うはカウンターだ。


 必殺の間合いに踏み込んだ俺は、あえて動きを止めて鬼の攻撃を待つ。


 来い。

 来るしかないぞ。


 …俺を殺して見せろ。


 刹那、猛烈な殺気の波動が俺を包んだかと思うと、半拍遅れて死の通過電車がホームに突入してくる。

 俺はこれに、小太刀の薙ぎを、合わせる。


「ギャ!」


「ぐっ!」


 親指を切り飛ばされた鬼の手から棍棒がすっぽ抜けるが、わずかに見切り損ねた俺の頭部をかすめて鉢金が千切れ飛ぶ。


 視界に鮮血が舞った。

 しかし身体は、動く。問題なし。

 

 俺は棍棒を失って怯む鬼に向けて立て続けに斬撃を繰り出し、小手や脛を散々に痛めつけていく。

 これで小太刀の刃もおおよそ潰れてしまった。


「ギァ…」


 それでも鉄棒で脛を撃たれ続けては堪らないらしく、鬼はついに膝を屈した。

 俺の目の高さに、苦悶する鬼の顔面が降りてくる。


 終わりだ。


 その瞬間眼があった気がしたが、そこには互いの健闘を称える色などあるはずも無い。

 憎悪と憤怒と、わずかな恐怖が含まれていたか、あるいは全て気のせいだったか。


 その顔面の中央に小太刀の切っ先を身体ごと押し込むと、全てが塵となって消えていった。


 やがてあたりに迷宮の静寂が戻って来ると、刃の潰れた太刀や短刀、そして大ぶりの魔石が転がる空間に、俺だけがとり残されて闘いの残滓を漂わせていた。


 ふぅ。

 こういうのでいいんだが、次は武器調達をしないとな。




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