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【8/7第一巻発売】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る【web版】  作者: 左兵衛佐


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第148話 人魂


 好敵手のニンジャ迷人が残した宝箱からは金銀財宝が得られたが、なんと言っても一番の贈り物はこの鋼糸だろう。


 この糸は暗がりでは目に見えづらいほどの細さで出来ていて、この世界にはこれほど高度な金属加工技術は無いだろうから替えの利かない逸品である。


 技も見せてもらったしな。

 闘いの最中に鋼糸で輪を作ってそこに敵を誘い込む技法、是非とも習得していこう。


 あるいは、投擲した武器を引き戻すのにも使えるだろうか?

 うーん、勝手に手元に還って来る手裏剣たちがいる今となっては、あまり意味を感じない技法ではあるか。


 まあ、色々と使い方を考えてみよう。






 部屋の中に二つある転送空間の内、俺はもちろん左側を選択して進む。


 今回はとても順調なので、あと何個こういう部屋があるかは分からないがこの分なら階層の全ての部屋を巡ることが出来るんじゃなかろうか。


 浮遊感を感じて移動した先は、今度も曲がりくねった一本道だ。

 数字の2のような形をした通路を歩むと突き当りに扉が現れる。


 さあ、3つ目の部屋を攻略していこう。

 俺が扉に身を寄せて中の様子を窺うと…、はてな?


 生物のような気配ではなく、かといって不死でも悪魔でもない。

 力強くもないし、数だけはやたらとたくさん感じるが…どこかで感じたような気配なんだが。


 どこで感じたんだったか…?


 あ、そうか。

 これはあのフワフワと漂う人魂の気配だな。


 以前に遭遇した時は1つだけだったので、これほど密集しているとまるで虫や魚の群体のようで別の魔物かと思ってしまった。


 俺は扉を開いて迷宮の一室に踏み込むと、そこは無数のLEDライトに照らされたダンスホールのような明るさであった。


 仄暗い迷宮の中でこれほどの明るさに身を置くことになるとは…てか、眩しいなおい。


 光源はもちろんフワフワと漂う人魂どもで、その数たるや100では効かないのではなかろうか?

 こりゃまるで照明弾の弾幕だな…。


 俺は手近の空間を漂う一体の人魂を粟田口の脇差で斬りつけてみる。

 シュルッ…と裂けた人魂はすぐに消滅して…うん、やはり強くもなんともないぞ。


 うーん、近寄ると意外と俊敏に逃げ回るので、こりゃ刀で斬って回るのは面倒だな。

 …よし、お前たちに任せたぞ。


 手中に手裏剣たちを呼び出してみると、こんな雑魚の相手をさせやがってと不満たらたらの様子が伝わって来る。


 ええい、いちいち文句の多い奴らめ…。

 せっかく出番を与えてやったというのに。


 しかし、俺の手を飛び立って散っていった手裏剣たちは、口では文句を言っていたくせにすぐに溌剌と飛び回って人魂狩りに夢中になっている。


 手裏剣たちの突撃を人魂はフワフワヒラヒラと躱して、こりゃアイツらの攻撃練習にもってこいだな。


 ときおり俺の手元に戻って魔力の補給を急かす手裏剣たちに苦笑しつつも、俺はドッグランではしゃぎ回る飼い犬を見るような心境でその様子を眺めていた。


 ふふふ…、減らず口で腹を立たせることも多いヤツらだが、こうして無邪気に人魂を追いかける様を見ているとまあ許してやろうかと言う気にもなる。


 お、部屋の四隅には人魂が大量に固まっていたらしくて、一枚の手裏剣が突っ込んでそれを散らすと他の手裏剣たちが次々と空中で狩り落としていく。


 かなり動きも良くなって来たな?

 この分では数分とかからずに駆逐が終わるだろう。





 最後の一体を切り裂いた手裏剣の「乙」が手元に戻って来ると、これでこの部屋の人魂は残らず掃討できた。


 よしよし、俺にとってはさしたる意味のある部屋でもなかったが、手裏剣たちの充実した様子を見るにまあ悪くはなかった。


 さて、それではさっそく次の…むおっ!?


 身体の奥底から猛烈な勢いで湧き上がる力の奔流。


 こ、これは…。

 位階上昇なのか?


 立っていられないほどの衝撃を受けて俺は石畳に這いつくばる。

 手裏剣たちからはオロオロと慌てる様子が伝わって来るが…いや、大丈夫だ。


 あまりにも強烈なのでこれまでと勝手が違うが…、しかし位階上昇は悪いことではないからな。


 いや、それにしてもこれは過去のどの位階上昇とも違うな…。

 どうしてこんな…、もしかして複数の位階が一度に上昇したのか?


 そういえば、以前にあの人魂を仕留めたときも急に位階上昇が起きたんだったな。

 …今の今まで忘れていたぞ、迂闊だった。


 ようやく全身の激しい脈動が治まったので、俺はその場で軽く身体を動かしてみる。


 なんじゃこりゃ…?


 筋力といい、神経の反射といい、魔力の浸透度といい、何から何までつい先ほどまでとは違い過ぎて…。

 こんなの技の精度がどうこう以前に、まともに歩くことも覚束ないぞ。

 

 くそっ。

 せっかくここまで順調だったというのに、まさかこんな足止めを喰うとは思わなかった。


 ともかくこのままでは戦闘など及びもつかないことなので、俺はこの部屋で身体の感覚を馴染ませるための鍛錬を開始するのだった。


 …コントロールが上手くいかず俺から漏れ出す魔力を浴びて、ワイワイと楽し気に飛び回る手裏剣たちに囲まれながら。


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