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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 左兵衛佐


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第122話 毒巨人


 …よし。


 いきなりの身体能力大幅アップにかなりてこずったが、なんとか感覚を馴染ませることが出来た。


 やはり感覚がズレた状態での戦闘というのはかなり厄介で、この部屋にいた牡山羊の魔物を仕留めるのにも悪戦苦闘してしまった。

 

 おかげで回避し損ねた爪撃により綿甲もあちこち引き裂かれてしまったし、火炎魔法も一度浴びてしまった。


 …どこからどう見ても叱責確定の状況だし、いやそれは元からそうなんだが…。


 それに加えて、位階上昇に身体の感覚を馴染ませるための時間も浪費してしまった。


 あごひげを撫でるとジョリジョリとして、完全に帰還すべき時間の経過を示しているが…。


 でもせっかく身体の感覚を合わせたのだから、ちょっとくらい試してから…いててて。


 後頭部を熱する感覚に加えて、頭の鉢を締め付ける緊箍児の圧痛までもが俺を苛む。


 …これ、もしかして呪いの装備だったのか…?


 いや、後頭部の熱感と完全にリンクしていることを考えると、これも俺の内なるエリカがしていることだろう…。


 頼む、今の身体能力を一度だけ試させて欲しいんだ、一度だけでいいから、お願いだ、ありがとう。


 よし…。

 

 俺は頭部への集中攻撃をどうにか耐え凌ぐと、一戦だけと自身に制約を課して次なる魔物の気配を求めるのだった。






 …よし、未知の魔物の気配だ。


 迷宮の通路、曲がり角の向こうからは魔物の気配が4体。

 俺はソロソロと曲がり角まで潜行すると、肩越しに気配の正体を窺った。


 …また巨人か。

 今回は本当によく巨人と遭遇するな。


 これまでに見た4種類の巨人の中では一番小柄だが、それでも身長約6mと言ったところだろうか。


 これまで武装した巨人が続いていたのに対して、今度の巨人は腰布だけを身に着けた裸身の巨人で…。


 なによりその特徴は毒々しい紫色をしたその体表だろう。


 ふむふむ、これはさすがに俺でも分かるぞ。


 灼熱の肉体を持つ巨人に続いて凍てつく肉体の巨人が現れた後だ、コイツはどう考えても毒性を秘めた肉体をしているんだろう…?


 ともかく直接触れないように気を付けることにしよう。


 さて、巨人系は相変わらず死角を取るのは難しくないが、せっかくだから姿を見せたままやってみるか…。


 先ほどの位階上昇による身体能力の向上、想定と違ったので混乱したがおそらく上昇幅は2割くらいだと思われる。

 

 そうすると、現在の身体能力は元からはおよそ242%の上昇ということになり、つまり元の身体能力の3.4倍だ。


 ますます意味不明さが加速してきたが…、ともかくどんな動きが出来るのか早く試してみたい。


 俺は腰のマジックバッグから三日月の太刀を引き出し、魔力を浸透させる。

 おっと、魔力の出力も増強されているな…。


 …死角は敢えてとらない。


 いくぞ。


「「ギョア!?」」


「「ゴォウ!?」」


 雷が地面を並行に走って剣閃だけが後に残される。

 計8本の足首がスッパリと上下に分断されて、巨人どもは一斉に尻餅をついた。


 ふむ、巨人の中では比較的細い脚首だったので、腱だけでなく骨まで断つことが出来たな。


 俺は巨人どもの首を斬り落として回りながら、今の動きについて反芻していた。


 脚力や膂力もさることながら、太刀筋もさらに走るようになったので…んなっ!?


 ドバッ、と奔流音がして俺は紫色のガスに包まれる。


 …ちいっ、人型なのにガスを吐くのか。


「ガッブ…!」


 俺はガスの流れを頼りに前進して巨人の喉を突き通した。

 ガスの噴出がたちどころに止んで毒巨人は塵と化して消える。


 くそ…油断した。


 顔面の皮膚が爛れていて…、視力もやられたな。

 しかも直接のダメージだけではなくて、さっそく手足にしびれが広がっている。


 俺はマジックバッグから解毒ポーションを取り出すと、栓を齧り取って急いで飲み下す。


 おえっ…、自作ポーションのマズさは一切改善していないな…。


 手足のしびれは無事治まったので、次は治癒ポーションだ。


 おえっ…、自作ポーション二連発は舌に厳し過ぎるぞ…。


 ふぅ…。

 どうにか視力も回復して事なきを得たか…。


 …いや、全身がますますボロボロになっていて、全然事なきを得ていないぞ…。

 はー、もうともかく平謝りでいくしかないか…。


 ともかく、目の前の宝箱を開けたら今回はもうエレベータへ直行だな。


 えーと、…ここでも毒ガスの罠か、とことん毒だな。


 カチリ、と音が鳴って開錠に成功すると…おっと。

 中からはいつもの金貨と宝石に加えて、青白く輝く鎖帷子が出てくる。


 …ふむ、例によって静穏仕様で、今使用している鎖帷子よりも強い魔法の力を感じる。

 触ってみるとひんやりとした冷感が特徴的だな。


 ちょうど今回の探索で鎖帷子を破損しているから、鑑定結果次第だがこれはいい発見になったかも知れん。


 …このあとメチャクチャ怒られるからな。

 最後にこのくらいは良いことがあってもいいんだよ…。


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