第121話 位階
おっ?
大運動会を催してくれた「重戦士」の迷人たち、その殲滅後に現れた宝箱を開くとこれまでとは違う毛色の戦利品が現れた。
これは、マジックバッグだな。
今俺が使っているのとそう変わらないデザインで、一回り小さいだろうか?
ふむ…、それなりに値の張るものだから価値としては悪くない戦利品なのだが、しかし問題があるぞ。
マジックバッグにはマジックバッグを収めることが出来ないのだ。
そのまま所持して持ち帰るのは少し面倒だし、勿体ないが捨て置いて…んん?
拾得したマジックバッグの中に手を差しいれてみると、肘を超えて肩口まで腕を突っ込んでも底に手が届かない。
どうやらこれは、今使っているマジックバッグよりも収納倍率が高いようだぞ。
試しに予備の太刀を取り出して入れてみると、なんと柄も余らずにすっぽりと収まってしまった。
何倍相当のマジックバッグなんだこれは…?
予備の太刀は陣屋大名から譲り受けた物で、柄まで含めると4尺を優に超えるのだが。
こうして柄まで入ってしまうとどうやって取り出すのかと思っていると、中に物が入った状態で手を差しいれると脳裏に物品が思い浮かぶな。
そこで取り出したいものを念じながら掴むと、しっかり対象の物品を取り出すことが出来る。
柄の向きに依存しないので、左右どちらの手にも好きな武器を取ることが出来るな。
こりゃいいぞ、むしろ今使っているマジックバッグを遺棄して中身を全部入れ替えてしまおう。
また出たな、巨人シリーズ。
今度は霜の様に真っ白な体表をもつ巨人が、手には巨大な両手斧を携えている。
これまた巨大な胴鎧を身に着けていて、頭にも牛のような角が生えた兜を被っているな。
ふーむ、こりゃさすがに俺でも分かるぞ。
今度は触れたら凍るほど冷たいんだろう…?
数は4体か…、横着せずに足から斬り倒して行こう。
俺は背中の太刀を引き抜いて…、そう言えばもう背中に太刀を背負わなくても良いのでは無かろうか…?
マジックバッグに入れておけばいつでも手に取ることができるわけで…、腰の刀は抜き打ちに使うかも知れないが背中ではそうもいかんしな。
いやそれは戦闘が終わってから考えよう。
ともかく俺は三日月の太刀に魔力を充填すると、4体いる白霜巨人どもの死角を探る。
…あっさり取れるな、やはり巨人タイプはどれほど強力な魔物でも俺とは相性が悪いらしい。
「グアッ!?」
…さすがに多少手応えが硬いな、いやそれでも見事に三日月の太刀は斬り裂いてくれるが。
アキレス腱を断ち切られた白霜巨人が地響きを立てて転倒するまでに、俺は迷宮の石畳を駆け回ってすべての足に斬撃を加えていく。
うおっ、白霜巨人どもが迷宮の床に寝そべっているだけで、今にも草鞋が凍って張りついてしまいそうなほどに冷気が広がっているぞ。
こりゃイカン。
動けなくなる前に急いでトドメを刺して回ろう。
俺は相変わらずどっぷり死角に浸かったまま、白霜巨人どもの大木のような首筋を太刀の振り下ろしで断ち落として回る。
巨大な首級が巨大な兜とともに落ちるたびに、ガランガランと落石災害のような巨大な音が響き渡る。
…しかしコイツらの身になってみると、目に見えない一寸法師のような敵に足を斬られて次は首を刎ねられるのか。
ちょっとどうしようもない理不尽があるな。
まあ、だからと言って俺もやめるつもりは無いんだが…位階上昇だ。
身体の奥底から力が湧き上がって来るような感覚がして、これで通算12回目だから現在は13位階という…なんだ!?
湧き上がって来る力の量が尋常ではない…!
これまでとは比較にならない勢いで身体の出力が向上していて、これでは事前のイメージトレーニングで想定していた身体の動きとのズレが大きい…。
…まいったな、これをされるのが一番困るんだ。
どこか手近に魔物のいない空き部屋はないだろうか?
おっ、あの扉の向こうにいるのは牡山羊の悪魔が一匹だけか。
じゃああそこの部屋を占拠して…くっ、ただ歩くだけでもう感覚がおかしい…。
こんな状態では危ういか…?
さりとて、このまま通路空間にいて他の魔物が群がって来てはなおさら危うい。
やるしかあるまい…なんてこった、気配を隠せていないから気付かれているじゃないか。
ええい、ままよ!
「だぁありゃあああ!」
俺は扉を蹴り破って飛び込むと、待ち受けていた猛炎を気合で強引にかき消して早足で接近する。
これでは恰好がつかんが、走るとつんのめって転びかねないので仕方ない…!
「ゴゥオオオオオ!」
「死ねえええええ!」
技のキレも何もあったもんではないが、俺は手数と太刀の鋭さに任せて牡山羊の悪魔を切り刻む。
泥仕合のすえ途中で増えたもう一匹もバラバラのなますにして、俺はやっと落ち着ける空間を確保したのであった。
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