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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 左兵衛佐


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第118話 灼熱巨人


 …下り階段が見つからないぞ。


 この階層は通路ばかりで探索そのものは順調に進むのだが、肝心の下り階段がまだ発見できていないのだ。


 もうすでにこの階層のエレベータには到達しているし…。


 これまでの階層のおおよそのサイズを考えると、残りの未探索領域もそう広くはないぞ。


 うーん。

 エレベーターのスイッチを見るに、この迷宮には地下9階層があるはずなんだがなぁ。


 …おっ。

 久しぶりの扉が視界に飛び込んで来た。


 ふむ、中からは既知の魔物と未知の魔物、両方の気配がするぞ。

 この階層は魔物の絶対数が少ない代わりに、未知の魔物がよく出て来てくれるのがよい。


 既知の魔物はいつもの牡山羊の悪魔、そして未知の魔物は…こりゃデカいな。


 数は3体で重心や足の踏み替えリズムは人型を示唆しているが…。

 つまり以前闘った土巨人のような巨人タイプの魔物ということか。


 しかもこれは…靴を履いているな。

 いったいどれだけデカい靴なんだろうか…?


 …衣服を身に着けているとなると、武器も持っていると考えるべきか。


 推定体重から人型だとした場合の身長を割り出すと…6~7mと言ったところだろう。

 とすると、武器だけでも相当な大きさになるか。


 ふふふ…、間違っても受け太刀をするわけにはいかんな。


 よし、まずは魔法が邪魔な牡山羊の悪魔から仕留めていこう。


 俺は三日月の太刀を抜き払うと、ふぅ…と一息ついて魔力を込め。


 扉を蹴破って一気に踏み込む。


「ゴォオアッ!?」


 とっさに4本の腕で頭部をかばった牡山羊の悪魔だったが、首も含めてその全てを一太刀で刎ね飛ばす。


 うひょ~、相変わらず凄まじい切れ味だぜ。


「「「ドアアアアアアアァァ!!」」」


 ビリビリと身体が痺れるような凄まじい咆哮が響き、3体の巨人が俺めがけて殺到してくる。


 …驚いたな。


 この巨人どもは衣服どころか、金属の胸当てや鋲が打たれたベルトまで締めてるじゃないか。


 その手には波打つ刃を持つ剣を握っていて、こりゃ人間の戦士をそのまま巨大化させたような存在だな。


 筋骨隆々たる身体に赤毛の長髪と髭が見事で、まるで中世のヨーロッパ北部を荒らしまわったノルド人戦士のようだ。


「オアアァ!」


 振り下ろされた馬鹿デカい剣を俺が横っ飛びに躱すと、まるで大型トラックがクラッシュしたような衝撃音が石畳から鳴り響く。


 いや、実際それに匹敵するような質量だろうな。

 あの直撃を受けたなら、ひと堪りもあるまい。


 …うん、でもまあ。


「ガッ!?」


 俺を見失った巨人が左右をキョロキョロと見渡している。

 …目の前にいるんだけどね。


 こいつらは人間とほぼ同じ視覚処理をしていて把握しやすい上に、脳のクロック速度がものすごく遅いので…こりゃ完全に死角に滞在し続けられるぞ。


 うーん。

 強敵かと思ってワクワクしたんだが、こうなってはなぁ…。


 まあいい、次の魔物に期待するか。


 俺は手近な巨人に近づくと、石畳に振り下ろされたままの剣を伝って一気に駆け上がる。


 巨大な剣の鍔のあたりから跳躍すると巨人の肩に着地して…むっ!?


 三日月の太刀が振るわれて巨大な首級が宙に舞い、石畳に着地した俺は…足元を確かめていた。


 …なんと、サンダルが焼け焦げている。


 こりゃあ抜かった。

 どうやらあの巨人の肌は、灼けた鉄の様に高温になっているらしいな。


 ともかく俺はサンダルの紐を解いて両足とも解放すると、素足になって迷宮の石畳を踏んだ。


「オオオォォォ!」


「ガアアアァァ!」


 再び姿を現した俺を目掛けて巨大な剣刃が降り注ぐが、その剣を振り始めたところですでに俺は死角に消えて巨人どもの足元に移動している。


 …直接触れるのは危険なようなので、横着せずに足から斬り倒して行こう。


「ゲッ!?」


「アッ!?」


 大木のような4本の脚は全てがアキレス腱を断たれて、堪らず巨人どもは尻餅をつく。


 ふむ、魔物の首を斬るときは刃長が足りなくても斬撃が走るのだが、首でない部分はやはり物理的に斬れる範囲しか斬れていないな。


 ものすごく今さらだが、俺のクラスは敵の首を斬ることに特別な力が働くらしい。


 ヴィクトルがコボルトの首を刎ね飛ばしたのも、おそらくこれだろう。


 さて…。


 メチャクチャに暴れている巨人に慎重に近づいた俺は、三日月の太刀をするりするりと振り落として巨人の首を二つ刎ねた。


 ふぅ…。


 コイツらも弱い魔物という訳ではないんだろうが、どうにも俺との相性が良くなかったな。

 終始死角に入られたままでは、どうにもならんだろう。


 それにしても…。

 俺は手にした三日月の太刀を眇めて刃を確かめ、刀身に指で触れてみる。


 …灼けた鉄のような巨人の肉を斬ったのだが、この太刀は何ともないどころか熱せられてもいないな。


 さしもの天下五剣も魔法剣ではないので、この不思議現象の理由は俺が込めた魔力にあるんだろう。


 魔力を込めた武器は変形に耐性を持つことは既に判明しているが、熱伝導すらも拒むという事か…。


 まあ、俺にとって都合の良いことには突っ込まないぞ。


 なにより公方様から下賜された剣が丈夫になるのだから、なおさら文句はないのだ。


 さあ、あと僅かな未探索範囲を調べるとしよう。


 それと。

 …人間サイズの迷人が現れたら靴を拝借するか…。


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