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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 左兵衛佐


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第111話 詰み筋


 迷宮に踏み入るたびに感じる、この頭の冴えが心地よい。


 一呼吸ごとに、まるで良質な瞑想のように意識がクリアになっていく。

 今回は特に地上活動の期間が長かったからな…。


 地下1階層で遭遇する魔物も、いつもなら無視するところを積極的に暗殺術の練習台にしていこう。


 …それも真正面からだ。


 5匹ほどいるコボルトの集団に、俺は隠れもせずに歩み寄っていく。


 視覚処理の死角だけでなく意識そのものの傾向も読み取って、注意が向いていないポイントを捉えていくのだ。


 そして十分に接近すると、俺は両の手刀を振って無警戒状態のコボルトを全て斬り裂いた。


 …ふむ、やはり意識の空隙を利用することで、より安全に死角を渡り歩くことができるな。


 同じことが迷宮深層の魔物や迷人に出来るわけではないが…、生き物である以上は意識の濃淡というのは必ずあるはずだ。


 ほんの僅かでも戦闘が有利になる工夫ならば、軽視せずに追究していこう。


 …いや、明らかに生き物じゃないような魔物は置くとしてね?


 やがてエレベータに到着した俺は、内部空間に乗り込んで壁面のスイッチを押下した。





 ここは迷宮6階層、今日はここでウォームアップを済ませていこうと思う。


 以前には「最深階層の2つ手前から開始する」としていたが…、考えが変わった。


 …だって、怒られる時間が来るまでになるべく長く最深階層を探索したいからね。


 前回は叱責中に絡んできたヤツがいたから良かったものの、そうでなかったら何時間あのままだったことか。


 さて、最初は「盗賊」の迷人集団が6体。


 暗闇からの奇襲で3体の首を刎ね、そのまま死角に滑り込んで残りの3体にも何もさせず殲滅する。


 一応意識の空隙も狙ってみたが、さすがにコボルトほどに隙だらけでは無かったな…。


 まあ、「盗賊」の迷人は魔物の中でも索敵に長ける部類だからな。


 次はお馴染み巨大タランチュラが4匹。


 昆虫系の魔物は死角が取れないのでシンプルに背後から襲い掛かり、一息に2匹を断ち割って残り2匹は前足を斬り飛ばしてから捌いた。


 その次は巨大なトカゲが5匹だが…、こいつらはどうも危険な気配を感じさせるんだよな。


 コモドオオトカゲの尾をもっと長くしたような外見で、鋭い牙を備えてはいるが動きはそこまで速くもない…のだが。


 …なんだろうな、このうなじがチリチリとする感覚は。


 おそらくは毒の類を備えているんだろうが…まあ、感覚に従って安全策をとるか。


 俺は暗がりに身を隠したまま棒手裏剣に魔力を注いでいく。


 精密にコントロールできる範囲の魔力を充填するが…、以前のものに比べて1~2割は多く注げるようになっただろうか?


 鍛冶屋もただの尖った棒を丹念に鍛造することには戸惑っていたな…。


 一度俺が投擲して金属盾に穴を空けて見せると使用イメージが湧いたらしく、あとは良い仕事をしてくれたと思う。


 俺は両腕をクロスして、振り抜く。


「「「「「!?」」」」」


 5投全てが正確に大トカゲの魔物の頭部を粉砕して、この戦闘は終わりである。


 …ウォームアップの為には近づいて白兵戦をしたいところなんだが、油断して自身の危機勘を無視してはなるまい。


 その分は「魔法使い」の迷人4体、虎男の魔物6体、再び「盗賊」の迷人5体を次々と斬り裂くことで補填していく。


 …急速に身体の芯に熱が入って来た。


 よし、目の前にいる迷人集団を斃したら、ウォームアップは完了としよう。


 俺と似た黒装束の「ニンジャ」迷人が5と、短剣と革鎧の「盗賊」迷人が6…か。


 いずれもそれなりの手練れで、特に「盗賊」迷人は同タイプの中でも最も強い奴らだな。


 迷人どもは階層が深まるごとに同タイプで一回り強いのが出てくるのだが、「盗賊」タイプの迷人にこれ以上強いのはいないのかも知れない。


 俺は息を潜め闇と同化しながら、計11体の迷人どもの視覚処理と意識の傾向を全て取り込んでいく。


 …この数を相手に、しかも索敵に優れる「ニンジャ」迷人と「盗賊」迷人の眼から完全に消え去ることは難しい…。


 しかし、何度も言うが濃淡がある。


 迷人どもが最も俺を意識しづらい瞬間に、意識しづらい位置を占め、意識しづらい剣刃を放つ…そのルートを模索するのだ。


 まるでゴルフのパターラインを読むように、まるで象棋で相手の将帥を詰ます筋を探すように…。


 …いま。


 迷宮に疾風が走り抜けるたびに剣刃が閃いて、次々と迷人どもの首が落ちた。


 迷人どもは俺に気付いてそれぞれが得物を手に身構えるのだが、意識の薄さを攻める俺に対して迷人どもの動きは鈍い。


 反撃はおろか受け太刀に成功する者すらおらず、したがって剣戟も無くただ肉が裂ける音と呻き声だけが迷宮に響いて、ほどなく11体の迷人集団は塵となって消えていった。


 ふぅ…。


 イメージに近い動きだったんじゃないか?


 俺は鎧下にうっすらと汗がにじむ感覚を得てウォーミングアップを完了とし、地下7階層に続く階段に足を向けたのだった。

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