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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 左兵衛佐


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第107話 稀代の探索者


「アンタがシュウね、…どうして床に座ってるのかしら? 」


 もうかれこれ2時間の正座を敢行中の俺に、ローブ姿の女性が話しかけて来た。

 はて、見たことの無い顔だが、漂人局の職員だろうか?


「あっ、パストラ様…! すみません、いらしてたのなら言っていただければ…」


 俺を叱りつけていたエリカが慌ててローブ姿の女性と向き合った。

 パストラ…、やはり聞いたことがない名前だ。


 見た目は俺よりも幾分年上で、知性を感じさせる美貌の持ち主だが…しかし不躾で人を値踏みするような視線を俺に注いでくるのが気になる。


 あからさまな好奇の眼というか…いや、こんなところに正座してたらそうなるか。


「…ふーん、稀代の探索者って言うからどんな豪傑かと思ったけど…。こんな田舎の小娘に頭も上がらない小心者とはね。わざわざ王都から足を運んだっていうのに…」


「…妻の名はエリカだ。田舎の小娘ではない」


 …この女、初対面で随分と失礼な奴だな。

 しかし俺の抗議を聞いても女は鼻を鳴らす。


「ふんっ、どこから見ても芋臭い田舎の小娘でしょうが! それにいい様にされるアンタも期待外れね!」


「…エリカ、正座を解いてもいいか?」


 俺が面罵されていることを悔やんでか、エリカは悄然としながら俺を支えて立たせてくれる。

 実際、足が痺れていたから助かったよ…さて。


「…最後の警告だ。訂正してエリカに詫びろ」


「笑わせるわね! オシッコ臭い田舎娘が助けなきゃ立てないようなのが、この私を…ふぐっ!?」


 俺は右手を伸ばしてパス…、パスなんとか言う女の細首を鷲掴みにした。


 急に息ができなくなったパスなんとかは俺の手を振りほどこうともがいているが、俺は万力のように力を込めて1ミリも指を開かせない。


「…妻の名はエリカだ。侮辱を全て取り消してエリカに詫びろ」


「ぐぎぎ…! だ、誰が…!」


 顔色が青くなり始めたパスなんとかだが、謝罪の言葉を口にする代わりに依然として俺を射殺すような視線を向けてくる。


 エリカはオロオロと仲裁に入ろうとしているし、周囲には漂人局の職員も多数集まって来てしまった


 ちょっと俺も熱くなり過ぎたか…。


 パスなんとかが謝罪の言葉を口にしないのは癪だが、ここはいったん矛を収め……コイツ。


 涙目のパスなんとかの身体から俄かに魔力が立ち昇る。


 これはお馴染みの火炎魔法の気配だが…、ここで放つ気なのか?

 エリカにも火炎を浴びせるつもりだと言うのか?


 …ならば、殺すしかない。


 俺は右手に力を込めて、パスなんとかの脛骨にギリギリと圧を加えていく…。

 集約しかけていた魔力がすぐに揺らいで、パスなんとかの黒目が裏返ると共に霧散した。


 と、そのとき。


「待ってくれ! パストラの非礼は私が詫びる! …おい、こんなところでブッ放したらお前も役目を解かれるぞ!?」


 急に飛び込んで来た長身の男が俺の腕を掴む。


 ほう…、今まさにパスなんとかの細首を捩じ切らんとする俺の腕を、この男は巧みに正中神経を圧迫することで痺れさせてくる。


 では、一時的に正中神経の機能を橈骨神経と尺骨神経に分配して…と、よしこれで再度力を込められる。


「ちょちょちょっ…! 器用なことをしないでくれ! 私が謝るから…、細君を侮辱したことは申し訳なかった!」


 男が真摯に頭を下げてくるので、俺は泡を吹いて意識を失っているパスなんとかを解放してやった。


 …いや、俺だってさすがに明らかに漂人局の関係者っぽい女を殺す気は無かったぞ。

 ただ、魔法を封じるためには意識を奪う必要があったんだ。


「…なるほど、こりゃとんでも無い怪物だね…。パストラが挑発したのは悪かったよ。君の力量や人物を確かめるつもりだったんだろう…お役目だからね」


 グッタリとしたパスなんとかを支えながら、男は懐からなにかの紋章が刻まれたメダルを掲げて来た。


 周囲の漂人局の職員たちもザワザワとして騒がしい。

 …これは俺が何かマズいことをした雰囲気だろうか?


「さあ、これで分かっただろう? 我々はお役目で来ているんだ」


「…いや、分からん。そのメダルが何かの意味を持っているのか?」


 俺の言葉を聞いて男はギョッとした表情になる。

 周囲の漂人局職員たちも呆気に取られたのか、にわかにこの場は静かになってしまった。


 …すまんが、地上のことはよく分からないんだ。


「シュウさん…、私からご説明します」


 眉間に指を当てたエリカが、深いため息を吐きながら俺に助け舟を出してくれる。

 苦労をかけてスマンな…、我ながらまさかここまで地上適性が乏しいとは思っていなかったんだ。


 …やっぱり俺は地上よりも迷宮の方が向いているらしい。


 もっとこう分かりやすく…、殺すか殺されるかというテーマで来てくれるならすぐに対応できるんだが…。


「シュウさん、この方はナサリオ様。メダルの紋章の通り王家の…、近衛騎士の方です」


 えーと、つまり。

 後は全部エリカに任せていいかな…?



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