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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 左兵衛佐


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第103話 暗殺術


「ゲブッ!」


 最後のカエルを脳天から叩き斬ると、予想外に手間取った戦闘もやっと終わった。

 …苦戦したというほどでもないんだが、闘ってる内にドンドン増えるから終わらなかったんだ。


 さっきまで闘ってたのは、体長1mくらいのカエルの魔物で大して強くも無い相手だった。


 でも、前回の山羊の悪魔と同様にどこからともなく追加の個体が現れてきて、どうやらこういうタイプの魔物がこの階層からは出てくるらしい。


 事前に戦闘フィールドを入念に調べても隠れてる魔物はいなかったし、やはりワープみたいな感じで出現してくると考えてよさそうだ。


 いくら異世界でもワープとは非常識な…と思ったけど、よく考えたら俺自身がそんな感じでこの世界にやって来たんだった。

 じゃあ文句は言えないか。


 出現した宝箱からは銀貨と宝石類の他には何も得られなくて、前回の探索に比べると武具の調達面では成果が無いな。


 まあそれでも宝石類の換金額には期待できるだろうし、そう言えば地上に戻ったらそろそろ魔石の鑑定ができる人物とやら来ていないだろうか…?


 そんなことを考えながら迷宮の通路を徘徊していると、未知の魔物の気配を感知した。


 ふむ…、未知の魔物とは言ってもこれは同種類の魔物、いや迷人と遭遇したことはあるな。


 これは陣屋大名のお供にいた、槌鉾を持ったマントの迷人どもと同じ種類の気配だ。

 通路の角からそっと覗き見ると、やはり間違いない。


 手には棘が飛び出した厳めしい星型の槌鉾を携え、暗赤色のマントを羽織った様子は依然見た通りだ…が、以前に見たよりも一回り気配が強い。


 これは「破戒僧」や「魔法使い」でもよく見られる現象で、同じ種類の迷人のより強力なバージョンの個体なんだろう。


 考えてみるとニンジャ迷人なんかも典型的なそのパターンだな。


 とは言え大した相手にも見えないし、この階層は魔物の強さの振れ幅が随分と大きいように感じられる。


 …よし、ちょうど6人いるし、今度こそ暗殺をやり遂げて見せよう。


 簡単な相手だからと言って漫然と闘っていては成長もないのだ。


 俺は息を潜めながら慎重に迷人の隊列に接近し、じっくりと時間をかけて迷人どもの視覚処理の様子を詳細に解析していく…。


 …読めたぞ、およそ70秒後に全員の死角に飛び込める瞬間がある。


 右手を順手、左手を逆手にして両手を得物の柄にかけたまま、俺は迷宮の暗闇に深く同化していく。


 呼吸を絞って、自分の存在をなるべく幽かにしながらも、その瞬間に向けて内実の気をどんどん高めていく。


 …俺は炸裂寸前の爆弾だ。

 ひとたび信管が叩かれたとき、全てを破壊し尽くす災厄となるのだ…。


 1分少々の時間が無限にも等しく感じる。


 …


 …


 …いま。


 迷宮に電光が奔ると、次の瞬間には4つの首が宙を舞い、ほんのわずかに遅れてもう2つの首が刎ね飛んだ。


 全員が死角の中にある間に首を刎ねたので、おそらくヤツらには何も見えなかっただろう。


 …成った。


 俺の暗殺術とはこれだ。

 すなわち、一瞬で全員を殺す。


 …実際上手くいったんだから、誰にも文句は言わせないぞ。

 暗殺とは気付かれずに殺すことが重要なのであって、その時間が短くてはならないという法は無いのだ。


 いや、暗殺に法も何も最初から無いんだが。


 さて、暗殺術が成って気分もいいので宝箱を処理したらすぐに次に行こう。

 えーと、罠は爆弾だが…これはガスが詰まった爆弾なのか?


 初めて見るタイプの罠だったが、結局のところその発動を一手に担っているのが単純なウォード鍵なので意味がない。


 簡単に解除すると、中からは銀貨と宝石類に加えて…短刀が出てきた。


 これは、明らかに魔法の効果を感じる品だ。

 鞘を払ってみると刃渡り一尺にやや足らず、反りは一分と少々でほとんど直刀に近い。


 眇めて見ると刃もよく冷えて、魔法を抜きにしても良い出来の短刀だな…。


 そして魔法の効果もすぐに見当が付いたぞ、まるで羽のように軽くて、しかも振ってみるとなおさら刃がよく走る。


 まるで短刀そのものが加速して、ひとりでに早業を繰り出しているかのような様相だな。


 ふむ…、素晴らしい逸品だが今さら俺が使うには短すぎる。

 それに俺は動きそのものに影響するタイプの魔法効果がどうも苦手なのだ…。


 よし、これはボドワンのパーティの斥候、ミクリング族のヤルミルへ土産としよう。


 彼は中々の腕前の斥候だが、種族特性もあって体格にも膂力にも優れないからな。

 その点、この短刀の特性はピッタリ合うに違いない。


 俺自身の装備更新という訳にはいかなかったが、家族の為にもボドワンたちとは友誼を深めておきたいので、これも十分よい戦利品だった。


 あとは…、弓でも出てくれればイリニヤの機嫌も取れるんだがな。


 アイツはなぜか俺のことを胡散臭そうな目で見てくるから、秋山どのといい日本人とはそりが合わないのかも知れん。


 まあ、それもおいおいのこととして、まだ時間はあるから次の遊…探索に掛かろう。


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