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【web版】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る  作者: 左兵衛佐


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第101話 牡山羊の悪魔 ②


 くそっ、もう一体だと。

 いったいどこに潜んでいたんだ…!?


 俺は挟み撃ちを避けるために左手側方に駆けて距離を取る。


 ちょうどこれまで闘っていた悪魔と、新たに姿を現した悪魔との間で正三角形のような位置取りになった。


 距離を空けると魔法が来るだろうが、しかしあの4本腕で前後から攻撃されては捌き切れん。


 予想通り猛烈な火炎が二波襲って来るが、俺は魔力で抵抗しつつも今度は素直に横に走って火炎の帯から逃れる。


 ちいっ、おろしたての綿甲が早くも黒焦げか…!


 俺は魔力の乱れた空間を利用して牡山羊の悪魔の死角に潜り込む。

 光学視覚の処理もかなりの高速クロックで長くは潜れないが、一太刀を浴びせるのには十分な隙だ。


「しぃああぁっ!」


「ブォオオオオ!」


 新たに現れた悪魔の腕を深く切り裂いて、続けざまに脇差で太ももに裂傷を負わせる。


 反撃の爪撃を躱しながら、背後から迫るもう一体にけん制で打刀を振りつけて再び横に駆けて離脱した。


 …一度には僅かな攻撃しか出来ないが、しかし足を止めて切り結べば挟み撃ちに遭う。

 仕方ないのでこのまま一撃離脱で行こう。


 距離を取るので魔法が来るだろうし、それに抵抗すれば魔力を消耗するが…それは魔法を放つ相手も同じことだ。


 二体の悪魔と距離を取った俺は、火炎魔法に備えて身体の魔力を高めるが、くそっ…!


 部屋の片隅には再び魔力の揺らめきが生じて、まるで空中に生じた扉をくぐる様にして新たな牡山羊の魔物が現れる。


 明らかに何もない所から…、隠れているわけじゃないのか…!


 3体となった悪魔は俄然優勢と見てか俺に向けて包囲網を狭めてくる。

 ええい、こうなったら手段を選んではいられんか。


 俺は両手の得物を鞘に納めると、マジックバッグに両手を差しいれる。

 取り出したのは数個の煙玉。


 …こんな密閉された空間で有毒ガスを使うのは避けたかったが、背に腹は代えられん。


 俺は悪魔どもの足元だけでなく、4方の石壁にも煙玉を投げつける。

 ばぁんっ、という炸裂音が鳴り響いてあっという間に室内は黒煙に包まれた。


 …ここからは、ぶっつけ本番だがやってみよう。


 呼吸を止めた俺は駆けだして、さらに身体から魔力を迸らせて自身とは反対方向に繰り出した。


「グォオオオゥ!」


「ブルオオオオ!」


「ゴアアアアア!」


 よし、上手いこと俺の魔力の影に喰いついたな。

 3体の悪魔は一斉に何もない空間に殺到して腕を振り、互いの身体に傷をつけ合っている。


 俺自身は身体からの魔力漏出をピタリと抑えたまま、煙幕の中を静かに走って背中の太刀を抜き払う。


 ここからは時間勝負だ…!


「ギョッ!?」


 背後から俺の太刀に首筋を半ばまで断ち切られて、牡山羊の悪魔が一体崩れ落ちる。

 まず一体…!


 もはや防御のことは考えていないので、俺は両手握りの太刀で渾身の剣閃を繰り出していく。


 再び魔力の影を走らせて、今度は芸を細かくして転んだように見せかける。


 そこに飛び込んで来た悪魔を横から待ち受けていた俺は、断頭の一撃を振り下ろして一太刀の元に首を刎ね飛ばした。


 あと一体だが…、俺も激しく動いているせいで酸素の消費が激しい。


 もう後ろに回り込む暇も惜しいから、最後の一体は正面から魔力の影を走らせて時間差で俺も突っ込む…!


「ギョアア…ゴッ!?」


 上から飛び掛かる魔力の影を追って伸びあがった牡山羊の悪魔の、股の間から太刀を振り上げて鳩尾まで一気に斬り上げた。


「…!!」


 悪魔の両足の間に大人の前腕ほどもある邪教のシンボルが千切れ落ちて、牡だった山羊の悪魔はワナワナと身体を震わせている。


 俺はそのまま悪魔に背を向けると、太刀を背負うようにして渾身の力で振り抜く。


 …終わりだ。


 股座から顔面までを逆さ真っ向に断ち割られた山羊の悪魔は塵と化していくが、俺はもうそんなのを見届けている余裕はない。


 悪魔どもに目もくれず一目散に出口に駆けると、扉に体当たりするようにして部屋の外に転び出た。


「ぶはっ!!」


 呼吸を再開すると有毒ガスの影響と酸素の欠乏で暗くなっていた視界が急激に回復して、むしろチカチカと閃輝して鈍い頭痛が襲って来る。


 …密閉空間で自分ごと有毒ガスに捲かれるとは、我ながらもっとマシな作戦は無かったのか。


 呼吸を落ち着けながら自身の身体を見ると、綿甲のあちこちが炎に焦がされて酷い有様だ。

 うーん、いくら黒い生地だからと言ってもこれでは誤魔化せんか…?


 俺は顎を撫でて時間の経過を確かめると、まだ幾分も伸びていない。


 …よし。


 まだ時間はあるから、どうせ叱責を受けることが確定しているならもっと遊んでから帰ろう。


 綿甲にこびり付いたガス成分を手でパンパンと叩き落とすと、俺は次なる獲物を求めて迷宮の暗がりに足を進めていった。


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