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56 途中下車で宜しく♡

 「ありがとう、イリーナ。俺の事好きになってくれて」



 押し倒した筈の女性に首を抑え込まれ強引にキスをされるという、おいしいシチュエーションを続ける気はなかったのか、身体をそっと離すジュリアン。



「好きに、じゃなくて、愛して、でしょ?」



 下から見上げながらニッコリと笑顔を見せるイリーナ。



「・・・うん。愛してくれてありがとう」



 律儀に言い直しながら髪をかき上げる仕草が妙に色っぽい男である。



「・・・かわいい」



 イリーナが思わず呟く。



「ずるいジュリアン、私よりもずっと色っぽいんだもん」



 ちょっと拗ねて口を尖らすと、



「俺には今の君の姿の方がずっと色っぽいんだけど? 我慢するのも大概大変なんだよ・・・」



 最後の言葉がよく聞こえなかったけれど寝転がったまま思わず自分の肩や胸に視線をやるイリーナ。


 自分がジタバタしたせいなのか、元々下がっていた首元は大きく広がり肩がはだけて丸見えになっていて、日に当たることのない真っ白な乳房は半分ほど剥き出しで防御力のカウンターはゼロになる寸前だ。


 ドレスの裾も捲れ上がりガーターベルトが見えてしまってすんなり伸びた脚の片方がソファーからダラリと落ちかかっている・・・



「あ・・・」



 急に恥ずかしくなり真っ赤になるイリーナに、ニッコリと秀麗な笑顔を見せるジュリアン。(と、元気に存在を主張するジュリアンJr・・・)



「君のそんな格好は、俺を煽ってるだけにしかならないからね」



 ニンマリと良い形の唇が弧を描き、唐突に深い口付けを落とされた――


 ジュリアンの舌が口内に侵入してきて逃げ回る小さな舌を捕まえると、舌の上部を優しく舐められてイリーナは何故か下半身がゾクゾクするのが止まらなくなる。


 舌先で歯列をなぞられそのまま上顎を擦るように舐られてイリーナのピンク色の口の端から涎が流れるが、それも彼の舌先が拭い去り、ついでに首や胸元にまでキスをされる。


 初めての経験に頭はクラクラして、息は浅く心臓の鼓動が自分の耳にまで聞こえてきそうだ。



「俺のキスが気持ちいい?」



 突然与えられた深くて甘い口付けの気持ちよさに頭がぼぉっとするイリーナは顔を赤くさせて目を潤ませ力無く頷くしかできなかった。



 ――何あれキスって言うのアレが?――



「かわいい・・・」



 腕の中の愛しい人を片手で自分に引き寄せるジュリアン。



「ねえ、後1ヶ月で婚姻式だよね」



 唐突に耳元で話しかけられて、夢(うつつ)のままでコクリと頷くイリーナ。



「もう我慢しなくてもいいかなあ・・・」



 もう1度深く舌を差し入れるようなキスを腕の中の愛しい婚約者に与えたあと少しだけ唇を離し、彼女の顔を見るためにジュリアンは首を傾げる。


 気持ちの良さでトロンとした瞳は涙で潤み、頬は薔薇色に染まったまま半開きの唇からは小さく蠱惑的なピンクの舌がちろりと見えた。



「キスだけでそんなに気持ちイイんだ? イリーナ。なんて可愛いんだろ。もうすぐ君が俺の奥さんになるんだね・・・ああ幸せだな・・・もっと気持ちよくなって?」



 耳の横で囁くジュリアン声との言葉でますます頭がボーっとして気持ちよくなってしまい、はしたなく腰が浮いてしまうのをイリーナは止められない。


 耳元で、可愛い可愛いと囁かれ続け、胸の奥から何かがジンワリと溢れて来る――言葉にしたら・・・



「愛してる・・・」


「!!~~」



 その言葉にグッと詰まる。



「ああ。俺も愛してる」



 そう答えるジュリアンの顔は泣き笑いで。



「一生大切にするよ」



 ――ああ、なんてこの人は綺麗なんだろう――



 自分の未来の夫の顔面偏差値の高さに今更ながら、胸を鷲掴みにされイリーナは頭がクラクラする・・・



 久々のパーティーに婚約破棄騒動、おまけに慣れていない性的な刺激(エロ)・・・ 


 彼女の体力はもう限界で、後はもう何も覚えていなかった――



 ××××××××××



 「いいですか?!《《旦那様》》、あと1ヶ月の辛抱なんですから焦っちゃだめです!!」


「ハイ・・・」


「2年以上待ったんですからもうちょっとくらい我慢なさって下さいなッ!!」


「うん。ゴメン」


「ホンッとにもう~! 閣下にバレたら絞め殺されますから気をつけて下さいねッ」


「え?!」


「くれぐれも途中下車でお願いしますね」


「・・・ハイ。頑張ります」



 幸せな気分でフワフワと意識が浮上して行く中、いつも世話をしてくれる大好きなメイドと愛しいジュリアンの声が聞こえた気がする。


 でも何だか眠くて、



「ジュリアン・・・愛してる」



 其れだけ呟いて又意識が沈んで行った。



 ベッドの横で添い寝をしながらイリーナの髪を撫でるジュリアンが顔を真っ赤にしたことは、全く気が付かなかった。






 因みに彼の頭にデカい()()()()()出来ていたのは余談である。


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