49 悩む男
「やっぱり、お義母様なんだなあって思って」
「え?」
「この1年一緒に暮らして来たお義母様の横顔だと思って、何だか嬉しくって・・・あの日、一般開放日から帰って来ないお義母様を、家でずっと待ってたんです。私」
「え、えと?」
イリーナの言葉に戸惑うジュリアンの手に、自分の手を重ねると
「以前言っていた、理想の恋人像のお話覚えてますか?」
「え~と。ハイ・・・」
ギクリと肩が動くジュリアン。
「今でも私の理想はお義母様です」
恥ずかしそうに俯く彼女の顔が赤くなっていたのは、夕日のせいではなかったらしい・・・
××××××××××
「理想がお義母様・・・」
執務机の上に突っ伏して悩む暗部の統括師団長ジュリアン・ステューシー。
――え? どういう意味?『お義母様が今でも理想の恋人像』って、女装した俺がいいってことか? それとも俺そのものなら性別はどうでもいいの? どっちだよ??!
イリーナの意を決した告白の直後、エリザベスに茶席に呼び戻されて少女達のお見送りの後、イリーナの告白の真意を確かめることもできないままカイザル邱を後にしてしまった。
実はあの日、ジュリアンは仕事中で時間に余裕が無かったせいなのだが・・・
『また会いに来て下さいますよね?』
そしてイリーナが帰り際に自分を見上げながら、甘えた声でおねだりしてきた事を思い出しては顔がだらしなく緩んでくる・・・
――だめだッ仕事中だぞジュリアン・ステューシー!!
『ガツンッ』
そのまま机に額をぶつけて喝を入れる・・・
「いてえっ!!」
「何やってんだ? オマエ?」
友人が会議の資料を片手に悩むジュリアンを訝しげに眺める。
「いや、なんでもない」
「ふ~ん。まあいいか。所でだな、閣下が隣国との国境近くの森の視察に行くらしいんだが、今回は第2師団が着いて行くらしい」
「何でだ? いつもは第1だろ? 第2はまだまだヒヨッコだぞ」
「次世代教育の一環だってさ。ま、俺らはどっちにせよ行けねえからさ」
「まーな」
第1騎士団は古参の騎士が多くカルザス将軍と苦楽を共にしてきた騎士が多いが、比べて第2騎士団は実戦験のない若者ばかりで編成されている。
「俺ら特殊部隊は基本お留守番だからな」
「ああ。俺らが動くのは余程ヤバい時だけだからな」
暗部を兼ねた騎士団である特殊隊は基本国王陛下か将軍の勅令で動く。
彼らは国が揺らぐような事態でなければ実働隊として前線に出る事はない。ましてや将軍の視察の為の騎士としてのお供などあり得ない。――当然王族なら話は別で、影として付くこともあるが、彼らは平時はもっぱら国内外の諜報活動に従事しているのだ
だがしかし、その翌日・・・




