50 行方不明と招待状
「「将軍閣下が行方不明?!」」
翌日。
陛下の執務室に急遽呼ばれたジュリアンと副官は2人揃って陛下の言葉に驚きで目を剥いた。
「コレが届いた」
陛下が彼らに差し出した物は、緊急時に放される伝書鳩用の短筒。
その中に第2騎士団長の筆跡で報告書が。
「川に落ちたって・・・」
「熊に襲われたって・・・」
「春の熊は子連れで凶暴だからな。他所の熊に縄張りを荒らされたと思ったのかも知れん」
陛下がくっそ真面目な顔で言うが、笑えない冗談であってほしかったとジュリアン達は天を仰ぐ。
「緊急捜索ですね」
「ああ。内密に頼む」
2人は国王陛下に敬礼をした。
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あっという間に10ヶ月が過ぎた頃、カルザス将軍の捜索が打ち切られたという正式な発表があった。
「陛下、良いんですかね本当に」
「まあ、一挙両得と行こうじゃないか」
「はあ。まあそうなるように下準備は出来ましたが」
此処は国王陛下の執務室である。
「伯爵には、嫡男の動向をくれぐれも把握しておくようにと伝えてあるからな」
陛下はそう言いながら、ニンマリ笑い、ジュリアンは敬礼をしてから退室した。
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翌日。将軍が熊に襲われ行方不明になるという痛ましい事件は、英雄が死亡したという三流ゴシップ誌の号外で大騒ぎとなった。
すっぱ抜かれた国王軍は未だ押し黙ったままである。
国王陛下の正式発表もないまま国民はかつての英雄の死を悼んで、王国旗や黒い布で半旗を掲げたのであった。
そんな中、トーマス・セイブル伯爵令息の誕生祝いの招待状がイリーナ・カルザス伯爵令嬢の元に届けられた。
「何で今更私に招待状が・・・」
首を傾げるイリーナ。
エリザベスが、もう1つの招待状を開封しながら
「こっちはジュリー・カルザス女伯爵宛になってるわね」
「・・・謎ですわ」
エリザベスがニッコリ笑って
「やっと義務兵役が終わってトーマス子息は今日で21歳でしょ? 後1ヶ月でイリーナと婚姻式の予定じゃなかったっけ?」
「まあ、そうですわね。本来ならば」
「彼がどういうつもりで貴女を呼んだのかは行かないと分からないし、そもそもコレは私宛では無いですからね」
エリザベスは後ろを向いてウィンクをした。
そこに立っていたのは、美しい水色のドレスを着た、ミルクティーブロンドの女性・・・ではなく、ジュリアンが優雅に扇で口元を隠して大欠伸をしていたのである。
「まー、行くか。アホ面拝みにな」
そう言いながら彼は、イリーナをエスコートするために片手を差し出した。




