48 横顔
「ステューシー様には、色々な事でお世話になりました」
両手でプレゼントを持ったまま続けるイリーナ。
「それと、沢山お話を毎晩聞いて貰ってしまって・・・」
ポッと赤くなるイリーナ。
それを見て一緒に赤くなるジュリアン。
「「あの・・・」」
2人同時にお互いに声をかけた。
「「あ、先にどうぞ」」
又2人同時。
「あ。じゃあ、ステューシー様から先にどうぞ」
ゴホンと咳払いをするジュリアンに話を譲るイリーナ。
「じゃあ、俺から。例の婚約は今月末でめでたく白紙に戻すという事は決定してるんだけど、まだ本人に伝わっていない。そこは知ってる?」
「はい」
「妃殿下の遠戚に当たる家柄なので、出来れば穏便に済ませたいという陛下の意向があるからどういう形になるのかがまだ未定なんだ」
「そうなんですね」
眉が不快そうに歪むイリーナ。
イリーナ本人は知らないが、実の所元々正式な婚約者として陛下も許可していないし、貴族の戸籍を登録して編成する部署にも届けがされていない。それどころか神殿に婚姻宣誓書を提出していない時点で婚約者どころか赤の他人同士だ。
手続きをするもの自体が存在しないという状態で、しかも通達する必要のある本人が隣国近くの森に合同演習に行ってしまっている。
伯爵家当主、つまりトーマスの父親には書架で婚約撤回命令が王宮事務官――暗部の隊員だが――によって通達されており、内密だが陛下による当主との謁見も先日終わっている。
「今回の婚約は元々なかった縁組という事になるから、お互いに経歴に傷はつかない。問題は君の父上、つまり閣下が有名な為、周りがどう受け取るかなんだ」
「まわり?」
「そう。セイブル伯爵家が親族や友人達に妃殿下の仲介で将軍の娘と婚約したと触れ回ったのが問題なんだ。アイツ嫡男で一人っ子だからな。両親共に甘やかし放題で婚約者が見つからないんでよっぽど困ってたんだろう」
「はあ、確かに」
何度か顔合せをした時、伯爵夫妻に平謝りをされた事が何度もあるのを思い出すイリーナ。
その度に、息子の放蕩具合がヤバいって分かってんならテメーらでなんとかしろよ、と腹の中で何度憤慨したことか・・・
――彼女の腹の中の言葉が少々下品なのは、お目溢し頂きたい――
「貴族同士の面子とか、ゴシップを追いかけてる大衆紙とか色んな方面をどう制御するかを今話し合ってる所なんだ」
そう言って。
困ったように眉を下げるジュリアンのきれいな横顔にジッと見入るイリーナ。
それに気が付いたジュリアンが
「イリーナ嬢?」
と、首を傾げた。




