46 17歳の誕生日
今日はイリーナの誕生日である。
彼女の誕生日といえば隣国との諍いや招待状無しの乱入(?)騒ぎ。
何だか碌な思い出がないな~と、遠くを見る目になるイリーナ。
今月末で晴れて婚約者でなくなるトーマスには招待状は当然送っておらず、いつもの学園の友人ばかりを招待した。
「去年はジュリー様がいてくれたから心強かったのに・・・」
鏡の前で思わずトーマスの乱入を思い出して呟き眉を顰める。
「今年は流石に乱入はしないわよね・・・あの人」
「お嬢様、額に皺ができますから変な顔やめてください。それとあの伯爵家のボンクラ息子は義務兵役中で遠征中ですからね」
髪留めの位置で悩んでいたメイドが声を掛けてきた。
「あと、今年はエリザベス様がいらっしゃいますから大丈夫ですよ」
「先生が?」
「あの方も近衛騎士ですからね」
「・・・」
召使い達も何やら自分の誕生日に何か起こることを想定している気がして更に渋顔になるイリーナ。
「お嬢様、顔!!」
メイドに怒られた・・・。
××××××××××
「こ~んなもんかな。どうだエリザベス?」
「やーだ、アンタに何だか似てるわねえ・・・」
「似せたメイクだから当たり前だろうが!」
こちらカイザル家のタウンハウスの客室に長期滞在しているエリザベスだ。もっとも今日は本邸でもある領地のカントリーハウスの客室だが・・・
真っ赤なティードレスを着て髪を若干ミルクティーブロンドに見えるように染め、それを既婚者のように結い上げていく。
メイクは分からない程度に濃くして、ノーズシャドウを入れ鼻を高く見えるよう化粧を施した。
「ねー、暗部の連中こんなモンまで使ってるの?」
鏡の前に映る自分を覗き込んでから後ろを振り返る。
「まあ、滅多には使わんが、任務次第で使う事もあるな」
そこに立っているのは、青い騎士服を着たジュリアンだった。
「目が痛い・・・」
「擦るなよ。レンズが落ちちまうからな」
「分かったわよ」
鏡を覗き込むと、そこに映るのは姉弟のように似た2人。
「悔しいけどアンタのほうが随分鼻が高いってことかぁ~。しっかし目がゴロゴロするわね」
それには答えず肩を竦めるジュリアン。
「『カラコン』って言うらしいぞ開発部の変人が言ってた」
「目の色が変わるのは面白いけど、痛いわね」
エリザベスの目はジュリアンと同じような深い緑色になっていた。
「さ、行くわよ」
「俺も? ホントにいいのか?」
今度はエリザベスが肩を竦めると、
「イリーナがアンタに会いたいんだからいいんじゃないの? マシュー様にも許可は貰ったわよ?」
「でも、俺自信ねぇよ。彼女より7歳も年上なんだぜ。性別だって男だしさ・・・」
見目のいい男がションボリすると庇護欲が唆られるかも知れないが、生憎エリザベスの好みは熊のような筋肉達磨である。
「ウザいわよっ漢らしくしなッ」
「うぐッ$%&✫・・・」
突然床に突っ伏すジュリアン・ステューシー・・・
どうやら彼の鳩尾に彼女の鉄拳が炸裂したらしい。




