40 青い騎士達
「訓練始めッ!」
副官の号令で全員が柔軟運動を始める。
訓練生の列の間を縫うように青い騎士服を着た者達がチェックをしながら歩いていくのを、ワイワイと言いながら見ている大人達と、小声で話し合う淑女達。
「なあ、今日の指導の騎士達は動きがやたらスマートじゃないか?」
「ああ、青い騎士服は特別隊だよ」
イリーナのすぐ横に立って見学している商人達の話が聞こえてきた。
「ああ。陛下のお膝元の連中か。絶対にスカウト出来ん連中だなあ。惜しいなあ」
その言葉に、首を傾げるイリーナ。
「おや、お嬢ちゃんはスカウト出来ないというのが不思議かい?」
1人の紳士が首を傾げるイリーナを見て微笑んだ。
こういう時、人より幼気に見える彼女は大人達が特別に色んな事を教えてくれることが多い。――まぁつまる所、子供扱いされているのだが・・・
「はい。商人の方や各地の領主様達は王国騎士でもスカウトは自由だと聞いていますから、不思議だなと思ったんです」
大きな目をクリクリさせ不思議そうな顔をするイリーナに、顔を綻ばせる商人達。
「よく知ってるねえ、お嬢さん。青い服の彼らは特別隊でね、主に国王陛下や将軍閣下の直属の騎士達なのさ。だから普通の騎士とは違って私達や普通の貴族家では雇えないのさ」
フフフ、と含み笑いをする商人達。
「そうなんですね・・・」
――お父様の直属ということは特殊部隊。つまり暗部の騎士隊かぁ。初めて本物を見たわ・・・
青い騎士服を着た青年達に視線を戻すイリーナ。確かに指導する姿の動きに無駄が全く無いように見える。
訓練は柔軟と走り込みが終わり剣技に入る準備をしているようだ。
友人の兄がこちらに手を振っているのが見えた。
そして不思議な集団――トーマスの恋人達――が、黄色い声で彼の名を呼び自分たちの方に視線を向けさせようとしているのを冷めた目で眺めた。
『大勢いらっしゃること・・・』
イリーナから随分離れた場所でその集団は、我こそは彼の恋人であると言いたげに胸を張り姿勢を正して彼に向かって手を振っている。
「ありゃあ、セイブル家の嫡男か?」
「ああ、あの金髪の男だろうよ。ま、女癖の良さは天下一品だからな」
彼女はその言葉を聞き一瞬だけ顔を顰めたが彼らに礼を言うと、商人達が笑いながら話すのを他人事の様に聞き流すことにして眼の前でようやく始まった模擬試合に目を向けた。




