39 一般開放の日
「今日の訓練メニューは・・・」
友人でもある副官が訓練生達全員に今日の訓練内容を淡々と告げている横で、ふと渡り廊下に目を向けると何やら貴族の御令嬢の集団がやって来るのが目に入るジュリアン。
「あ~、見学者の集団か」
恋人や婚約者がいる令嬢達だけでなく、私兵を雇いたい貴族や裕福な商家等が訓練生を調査しに訪れる事が許されている日がある。
いわゆる一般開放日というやつだ。
今日が丁度その日に当たっていたようで、華やかな集団の後ろに如何にもお金持ちですよ~、という風情の大人達が数人続く。
「ん?」
その令嬢達の集団の中に何故か見慣れた、茶色のふわふわした巻き毛の少女が1人・・・
「なんで居るんだ?!」
何故かイリーナがいつもの友人達と一緒にお喋りをしながら混ざっていたのである。
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「皆様、今日はお付き合い頂きましてありがとうございます」
友人の1人が頭を軽く下げる。
「いいのですわ。今日は一般開放の日ですもの」
「そうですわ、お兄様の勇姿を見れると良いですわね」
「ええ、そうですわね。兄も今日はいつもよりかっこいい所を見せてやると張り切って出掛けましたから。期待しておりますのよ」
頭を下げた友人がニッコリと笑顔になる。
「でもいつも以上に人が多いような気が致しますわね?」
首を傾げる友人は周りを見回す。
確かにきれいに着飾った妙齢の御婦人や、貴族令嬢がいつもより多い。
「私は見学が初めてなので分らないのですが・・・」
イリーナは周りを見回した。
「えらく不思議な方達もいらっしゃいません?」
友人に聞いていた見学者、つまり未婚の貴族の御令嬢か大人の商人や領主といった人達とはかけ離れた雰囲気の女性が大勢居るのだ。
派手な舞台衣装のように脚が見えそうなほどスリットの深いドレスを着た妖艶な女性が混ざっているし、どう見ても玄人だろ? と言いたくなるような派手な化粧を施した年齢不詳の女性達など色んな人が立っている。
イリーナのすぐ近くにいる妙齢の御婦人等は、王族かよと言いたくなる位装飾品と厚化粧でギランギランである。
背が1番低いであろうイリーナは益々周りに埋没しそうだ。
「どなたか、人気のある方でも訓練生にいらっしゃるのではないでしょうか?」
月に1度は来ているという友人が首を傾げながら、囲いの向こうを覗き込む。
「あ」
「「「あ?」」」
「あれは、セイブル家のご令息ではないでしょうか・・・?」
「「「え」」」
4人は同時に訓練場に目をやると、
「「「「ああ。成る程」」」」
と呟いた。
要はトーマスの恋人達が大勢押しかけてきているのである。
4人が全員同時に引き攣り笑いをしたのは仕方ないだろう・・・
そして婚約者である筈のイリーナはトーマスが奉仕軍役に来ているなどということは一切知らず・・・
「あの方でも義務は果たすんですのねぇ・・・」
そう呟いてしまったのであった。




