37 御令息のツケ払い
この国の男子は貴族も平民も関係なく16歳から19歳までの間に国王軍での兵役義務が1年間ある。
その中で才能のあるものや家の事情などでそのまま軍属する者も結構いるのだが、貴族学園に通う者は卒業後18歳で兵役に参加する事が多い。
この国の男子がいざというときに国や家族のために戦えるようにこの兵役期間という名の訓練指導を設ける事となったきっかけは、領地の取り合いで隣国との戦争が勃発し、軍属できる男性が一気に減った歴史があるせいだ。
――因みにこの制度のお陰で国王陛下と将軍が、竹馬の友になったのは余談である――
女性にはこの兵役義務はないのだが希望者は受け入れる体制が整っていて、これを利用する事で女性騎士が誕生するようにもなった。
まあ、これも実は昔の名残りで、男性の数が減った事により出来上がった制度であるのだが・・・
兎に角――
軍属を望まない男性は1年の兵役を終えればお役御免となる訳だ。
勿論トーマス・セイブル伯爵令息も王国民である以上漏れなくその1人である。
身体欠損がない限り王族だって免除されない制度なのだから、ただの伯爵令息が免除されるわけがないのである。
顔が王子様のように麗しくても女にモテても、国民の義務である以上仕方がない。
「私が何でこんな事を・・・」
そう呟きながら、早朝からトレーニング場で腕立て伏せをするトーマス・セイブル伯爵令息。
まあ、トーマス以外の者も一緒に全員がやっている事なので別段彼だけが虐められている訳ではない。
学園に通う間に1年間だけ我慢して行っても良いのだが、後回しにしたのでツケ払いである・・・
そんな彼らを横目に通り過ぎていくのは何故か将軍閣下と赤い騎士服を着た女性である。
目が覚めるような美人に誰もが思わず訓練の手を止めそうになった。
「コラ―!! 休むなー!」
鬼教官の声に、思わず慌てて腕立て伏せに戻る訓練生達。
その中で唯一人、トーマスだけが美女に目を奪われたままだった。
自分が欲しいと思った女性は殆ど堕としてきた彼が初めて敗北し続けるたった1人の女性。
それがジュリーである。
その彼女が笑いながら、夫であるカルザス将軍と並んで歩いて目の前を通り過ぎていく――
彼の目が一瞬だけ仄暗くなった。




