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36 瞠目する女装男子

 真夜中遅くまで、学園での出来事をつぶさに語るイリーナ。


 そして、それを聞いてどういう顔をしていいのか分らないジュリー。


 しかし心中は、大慌てである。



『え、俺?! 俺なの? 理想の恋人像が?!』



 理想の恋人像として思い浮かぶのが、自分の姿と言われて喜んでいいのか悲しんでいいのか分らない。


 だって彼女は自分の事を女性だと思っているのである。


 と云う事は自分が男性であると彼女にバレてしまえば自分は理想でもなんでもなくなり、その辺の男子学生達と同じ『恋愛対象外生物』ということになるのではないだろうか?!



「えと、イリーナ? 本当に男性に興味が無いの?」


「そうみたいです。かと言ってお友達の女の子達に興味があるとかではないのです。男子学生も同様です。お友達か、それ以外としか思えないんです」



 ちょっと困り顔で答えるイリーナ。



「じゃあ、トーマス子息は・・・」


「嫌いに決まってますわ」



 彼女の眉間に一気に皺が寄った。



「デスヨネー」



 棒読みのジュリー。



「婚約者が1番嫌いだなんて、この世の終わりだわ・・・」



 両手を合わせて神に祈るようなポーズのままで、ソファーの座面に突然パタンと倒れるイリーナ。



「イ、イリーナ?」


「お義母様、私変な子でしょう? だってお義母様が理想の恋人像だなんて。確かに騎士服をお召になった姿は凛々しくて美しくて。その辺にいる男子学生なんて足元にも及びませんわ。隣国の王子様だって、公爵子息だって。()()()ならセイブル伯爵子息だって、素敵に見える()なのです。なのに私にとっては皆、お義母様以下の存在なのですわ・・・」



 ソファーに寝転んだまま、顔を両手で隠して呻くように話すイリーナ。 


 ジュリー(♂)にとっては、これ以上に無い殺し文句のハズなのだが――



『それは、俺が女だから安全パイって思ってるからじゃ・・・』



 彼にとっては、更なる悩みの種になる告白であった・・・


 そして、今日も今日とて・・・



「イリーナ? あれ?!」



 ソファーに横倒しになったままスヤスヤと寝息を立てるイリーナに気がつくジュリアン。



「またか・・・」



 仕方なくよっこらしょと眠る彼女を抱き上げるとノブに片足を上げ、爪先で器用にドアを開けると廊下に出る。



「はぁ~。酔っ払いの介抱みたいだよ・・・」



 ――言いたいことだけ言いやがってこっちの気も知らねえで・・・



 そんなことを考えながら、長い廊下を歩き始める。



「あ~あ、もうすぐ誕生日だよなあ。今年はどうすんだろ?」



 独り言をつぶやきながらイリーナの部屋に向かうのであった・・・


 

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