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異世界冒犬譚  作者: さくら
面影に君を想う
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16話

よろしくお願いします

 最悪の未来は想像を超えていて、泣けばいいのか、叫べばいいのかが分からなかった。終わる事のない絶望と屈辱が止めどなく押し寄せてくる


それを振り払うように俺は無我夢中で通路を走っていた


体に染み付いたあの感触と匂いから逃げるように、宛てもなく——



『お?』


横道の前を駆け抜けると、抜けた声が聞こえ、目の端に見覚えのある顔が写り込んだ。そこには一人歩くセイファルがいた


『なんじゃこんなところにおったのか。おぬしはいつも勝手にいなくなるのぅっ!?』


俺は急ブレーキをかけるとセイファルに飛びついた


『きゃっ! な、なんじゃ!? どうした!?』


癒される〜


『ええいっ!! 離さんか!』


倒れこんだセイファルは上に乗っていた俺を脇に押し返し立ち上がる


『と、突然なにをするのじゃ!』


(ぽっかり空いた心の穴を埋めようと……)


何を言ってるんだお前はと言いたげな目で見つめられた


(あ!? そうだ! マニーズ達はどこにいる?)


『む? ああ、あやつらならこの先におるが……ちょっと離れてしまったな』


(そうか。まあ、セイファルが居ればいいか)


隠れているあの少女を助けに行くのだ。できる事ならマニーズが居てくれた方がいいのだが……要は変な奴に見つかった時にナントかできればいいのだから、セイファルが居れば事足りる


(ちょっと付いてきてくれよ)


そう言うと、俺は残してきた少女の元へと向かった




 (お、いたいた。無事みたいだ)


通路の先にある小部屋で少女はベッドに腰掛け俯いていた。こんなとこに一人では心細かった事だろう。早く行ってあげなければ


(セイファル。この子なんだけどさ)


小部屋に入り、後ろをついてくるセイファルの方を振り向く。するとなぜかセイファルは小部屋に入ろうとしない。その顔はどこか驚いたような顔すらしていた


(何やってんだよ。こっち来いって)


もしかして知ってる人なのだろうか?


『はぁ、わかってはいたがこうして見ると驚くのぅ』


なにいってんだこいつ


(なに言ってんだよ。いいから来いって)


『なるほど、見えていないのか』


(なにが?)


『扉あって進めん』


はい?


『フレアヴォイドの力が込められた魔法の扉のようじゃ。今の妾ではこれはどうにもできん』


(え? 扉? じゃあ、この子はそれが見えててここから出ようとしなかったのか?)


『逆じゃ、逆。見えて当たり前なんじゃ。お前がおかしい』


まるで俺が変だと言わんばかりの言い草に、俺はそれを確かめるように少女の顔を見ようと振り返った


振り返った先は真っ暗だった。突然抱きついてきた少女の胸元に顔を埋めるようになったのだ


(むぉ!? く、苦しい……)


無言で俺を抱きしめる少女はどこか震えていた。少女は出なかったのではなく、出れなかったのだ


俺は少女を慰めるように、少女の頬を鼻先で撫でる。ちょっと舐めちゃったけど捕まらないよね?


「ふふっ。くすぐったい」


お、笑ってくれた


『あー、セイファルだー。えー、奇遇じゃーん』


聞きなれない声が後ろから聞こえて振り返る。セイファルの横には一人の女性が浮いていた


キラキラと輝く黄金のドレスを身にまとう女性は、その美しい体のラインを惜しげもなく見せつける。ストラップドレスというのだろうか、肩紐のないドレスは女性のうなじ、華奢な肩、そして胸の膨らみを強調し、自然と目が奪われた


髪をアップにし、レースを羽織るその女性は一目で女神だとわかった


『ちょっとー、無視しないでよー』


『お主といると目が痛い』


『なにそれー、ひどくなーい?』


なるほど、セイファルとは服装も正反対なのだ。あまりセイファルは好きではないようでそっぽを向いている


『どうしてセイファルがこんなとこにいるのー?』


『付き添いじゃ』


『え!? 誰の誰の?』


『ええい! 誰でも良いじゃろう! そんなことよりこの扉を開けてくれ! そなたなら開けられるじゃろう?』


そう言うとセイファルは俺を指差す。正確には俺の目の前にある扉を指差した


『え? あ、本当だー。あれー? 私、こんな扉作ったかなー?』


どうでもいいけど、なんだそのチャラい喋り方は。お前はギャルか


『大方、お主の力を悪用した誰かじゃろう。そんなことより早う開けてくれ』


『はいはーい』


チャラい女神が手をかざすと何やら扉があるらしきとことが淡く光る


「え……?」


俺の頭の上から驚きの声が聞こえた。淡く光るそれは次第に収まっていった


「開いた……? どうして……?」


驚いてきょとんとしたアイリスはなぜか俺を見つめていた


『あれ? 女の子がいるー。もしかしてこの子の付き添い?』


チャラい女神が興味深そうにこちらを見ていた


『まあ、いっか。それじゃあ私行くねー。あの子達の事、褒めてあげないとだしー』


そう言うと、姿を消した


『まったく、あやつは苦手じゃ』


あー、なんか気が合いそうにないのはわかる。セイファルがインドア派だとすれば、さっきのはアウトドア派って感じがした。パリピーだパリピー


『ほれ、開いたならさっさといくぞ』


セイファルに促された俺は少女の腕からするりと抜ける。だが、少女は未だに唖然としたままだった


(おーい、さっさと行こうよ)


仕方なく俺は少女の後ろから鼻先で立つように促す。お尻触ってるけど捕まらないよね?




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