17話
よろしくお願いします
前を歩く兵士とマニーズに置いて行かれないように付いていきながらも、ミルファは辺りを見回し、カールの姿を探していた
「ミルファ。カールの事なら心配ないよ」
不安げに辺りを見回すミルファを見かねたマニーズが声をかける
「うん……」
「でも、はやく見つけないとね」
「うん」
「まったく、カールはすぐにどっかいっちゃうんだから……それで何気ない顔してひょっこり帰ってくるんだよね。こっちの気も知らないで」
気がつけばいなくなり、気がつけば傍にいてくれる。そんなカールのきょとんとした顔を思い出したミルファはくすりと笑う
そんなミルファをみたマニーズも口元を緩め、前を歩く兵士の背中を追った
「誰だ!?」
曲がり角を前に兵士達が立ち止まり身構える。この先から誰かが歩いてくる。土を踏みしめる音から相手は一人のようだった
対してこちらは兵士二人とマニーズの三人だ。だが、数が優っているとはいえ油断は禁物なのを三人は理解していた。一人が前に立ち身構えると、もう一人はその斜め後ろに立つ
不意に襲われた際に固まっていては危険だ
徐々に近づく音に緊張が走る
「アイリス様!?」
視界に飛び込んできた少女に兵士が驚きの声を上げた。だが、マニーズとミルファは別のところを見て叫んだ
「「カール!!」」
少女の足元の先にはカールが立っていたのだ。誰よりも早くミルファは駆けつけカールに抱きついた
「あなた達は……」
「お探ししましたぞ! よくぞご無事で……」
「私を助けに……?」
「もちろんですとも! さあ、こんな所からはすぐに出ましょう! 皆も喜びます!」
兵士達がアイリスの両脇に立ち、出口へと向かう。その姿をミルファはカールを抱きしめながら眺めていた
するとふとアイリスがこちらを振り返る
「カール……と言うのね。ありがとう」
カールを見て微笑む少女はとても美しかった。その瞬間、なにかザラっとした感覚をミルファは感じる
「貴方達が飼っていらっしゃるの?」
目線をミルファとマニーズに向けてアイリスが聞く
「あ、はい。そうです」
アイリスの問いにマニーズが答える
「そう……とても不思議な犬ね」
アイリスはそう言いながら再びカールを見つめる
「くぅ〜ん」
腕に抱かれたカールがミルファに何かを訴えるような目で見上げながら鳴く。そこで初めてミルファはカールを抱きしめる腕に力を込めてしまっていた事に気がついた
「ご、ごめんね?」
慌てて、力を緩め今度は優しく、しっかりとカールを抱きしめた
「アイリス様」
兵士に促されたアイリスは出口へと歩いて行った
「私達はみんなを探さないとね」
「うん……」
カールが見つかって嬉しいはずのミルファはどこか晴れない気持ちに困惑していた
「いないね」
リプシーは誰もいない小さな小部屋の前で途方に暮れていた。フレアヴォイドの話ではここにアイリスが捕まっているはずなのだ。だが、そこには誰もいなかった
「どこか別の場所に移されたのでしょうか?」
エイムも不安げに呟いた
『あ、いたー』
聞き覚えのある声が響き、全員が振り返ると、そこには美しい女神がいた
『探しちゃったー。こんな所にいたのね』
「えっと……フレアヴォイド様ですか?」
セレナが首を傾げながら聞く。声は確かに先ほど聞いた声だ。だが、髪をこの目で見るのは初めてに等しい。目の前の美しい存在が人知を超えた存在だという事は直管でわかっていたのだが、確証がなかった
『そうそう。ありがとねー。君たちのおかげで自由になれた!』
「あ、いえ、その、それでここにアイリス様がいるというお話だったのですが……」
セレナは誰もいない小部屋に目線を移す
『あれー? っあ!! そっか、ここさっき扉を開けてあげたんだ!』
「え?」
『ごめーん、たぶんもう逃げてると思うよ?』
「なっ!?」
『ごめんごめん、でももうここには変な奴いないっぽいから大丈夫。さっき大勢の兵士が入ってきたみたいだし』
「皇国軍でしょうか?」
オミロが小声で話しかける
「たぶんね」
と、リプシー
『ああ、その兵士に抱えられて洞窟の入り口にいるよ? 今から行けば間に合うんじゃない?』
「わかりました!」
その言葉を聞いたセレナは出口へと駆け出した
「あっ!? も、申し訳ありません……フレアヴォイド様、ありがとうございました」
セレナは思い出したかのように立ち止まり、フレアヴォイドに礼をする
『いいよいいよー。こっちも助かっちゃったし』
「先を急ぎますので・・申し訳ありません」
『はいはーい。またねー』
「お待ちください!お嬢様!」
走り去るセレナをエイムは慌てて追いかけていった
「……どうする?」
置いて行かれたシグルがリプシーに話しかける
「うちらも帰ろうか」
「っあ!!」
突如、声を上げるオミロに二人は何事かとオミロを見た
「マニーズお姉ちゃん怒ってるんじゃ……」
日が落ちる前には戻る約束。それをすっかり忘れていたのだ。すでに外は暗闇に包まれているはずだ
「ど、どうしよう」
怒られる未来を想像した三人は顔を青褪めさせた




