表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒犬譚  作者: さくら
面影に君を想う
91/126

10話

宜しくお願いします

 日が傾きかけた時刻になっても一向に戻る事のない子供たちにマニーズは、やはり子供達だけで行かせたのは失敗だっただろうか?と内心焦っていた


探しに行ったほうが良いだろうかと考えるが思い留まる。入れ違っても困るのだ


「帰ってこないね」


ミルファも不安げな顔をしている


「探しに行ったほうがいいかな?」


自分に問いかけるようにポツリと呟く。ミルファを残して自分が探しに行くという選択肢もあった。だが、夜道の一人歩きは危険極まりない行為だった


どうしたものかと途方に暮れていると、突然カールがマニーズの足を頭でグイグイ押してくる


「え? カールどうしたの?」


待ちくたびれてしまったのだろうか? 遊んであげたいところなのだが、それどころではないのだ。いっそ詰所に行って兵士に相談でもしてみようかと思っていた


するとカールが外に向かって歩き出す。その様子をマニーズとミルファは不思議に思いながら見つめる


「カール? どうしたの?」


「ワン!」


カールはこちらを振り返り、その場に座ると、まるでついて来いと言うようにひと吠えした


マニーズはミルファの顔を見ると、ミルファもマニーズを見つめていた。カールは普通の犬とは違う。その行動のすべてに意味があるのだ


「ついて来いって事だよね?」


マニーズは確認するようにミルファに尋ねる


「うん、きっとカールはみんながどこにいるのか知ってるのかも」


なぜそんな事が出来るのだろうかという疑問もある、だが、聖獣であるカールにはきっとすべてを見通しているのだろう


「ま、待って! すぐに準備してくる!」


マニーズは門をくぐり宿屋へと走り出した





 西日が差し込む森の中、マニーズとミルファは森の中を歩いていた。前方ではそれを導くようにカールが先導している。その足取りはまるで行くべき場所がわかっているかのようだった


「そこの二人! 止まれ!」


声のするほうを見ると数人の兵士がこちらを見ていた。こんなところになぜ兵士がいるのだろうかと不思議に思っていると、兵士達が近づいてくる


「こんなところでなにをしている?」


「仲間がこの辺りに依頼で来ていたのですが、戻らないので様子を見にきました」


マニーズが事情を説明する


「依頼だと?」


「シュレーダーで受けた依頼で、この辺りに狼の群れが目撃されたそうです」


「ああ、そういえばそんな依頼が出てたな」


後ろの兵士の一人がマニーズの言葉に頷く


「そうか。今、この辺りは皇国軍が警戒中だ。変な疑いを持たれる前に離れたほうがいいぞ」


「なにかあったんですか?」


「詳しくは言えんが、この辺りに怪しげな集団がいると報告があったのだ」


マニーズとミルファは顔を見合わせる。まさかとは思うがシグル達はそれに巻き込まれたのではないだろうか?


「日も暮れ始めている。子供を連れては危険だろう。なんなら近くの村まで護衛してやらんでもないが……」


「ワン!!」


予想だにしない犬の鳴き声に兵士達が身構える


「す、すいません! カール、今行くから……私達の犬です」


マニーズが慌てて謝罪する


「びっくりさせるな。珍しい犬だな。まあ、いい。忠告はしたからな?」


そう言うと兵士達はその場を離れようとする


「ワン! ワンワン!!」


それをまるで止めるようにカールが吠える


「お姉ちゃん。もしかしたらカールは兵士さんも一緒に来いって言ってるのかも」


マニーズはその言葉にはっとする。カールが意味もなく吠えることはないのだ


「す、すいません!」


咄嗟に兵士達を呼び止める


「どうした?」


「あ、あの……」


だが、どのように言えばいいのかがわからない。カールがついて来いと言ってるので、ついて来てくれませんかなどと言おうものなら変人扱いされてしまう


「実は、匂いを頼りに仲間を探しているのですが、良ければ同行してもらえないでしょうか? この先を見て、何もなければすぐに帰りますので……」


マニーズの言葉に兵士達は顔を見つめ、一言二言相談をしているようだった


「ふむ。この先になにかあるのか?」


「恐らくは……」


「よし、何もなければすぐに帰れよ?」


暫く悩んだ様子を見せた兵士は顔を上げると快諾してくれた




 その光景にマニーズ達は元より、途中から付いて来た兵士達も目を見開いて驚いていた。カールの後を追うように付いて行くと、そこにはいかにも何かありますと言わんばかりの洞窟があったのだ


「カール。ここにリプシー達がいるの?」


「ワン!」


そんなマニーズとカールのやりとりを見て兵士達はさらに驚いた


「入ってみましょう」


「ま、待ってくれ!」


マニーズの提案に兵士の一人が待ったをかける


「我々だけで入るのは危険だ」


そう言うと振り返り、二人の兵士を見る

「救援を呼んで来るんだ。もう一人は俺と一緒に来い」


「はっ!」


命令を受けた兵士が足早にその場を立ち去る


「援軍が来るまでは慎重に行動しよう。申し訳ないが、君達は一時的に私のチームに入ってもらうことにする」


何かあった時に指示系統を一つに絞っておかなければ、混乱を招くのだ


「はい、兵士さん達の指示に従いますね」


「すまないがよろしく頼む」


兵士達の後に続いて洞窟に入ったマニーズはその異様な空気に顔を(しか)めた。むせ返るような甘い匂いが鼻をつく


「これは、どうやら当たりのようだな」


「隊長。なんですかこの匂いは?」


「スイーマだ。ここでスイーマをやってるんだろう」


兵士達の話を聞きながらマニーズは匂いの理由に納得していた


「お姉ちゃん。スイーマってなに?」


口元を腕で塞いだミルファが聞いてくる


「体に悪いお酒だよ。ここで密造してるみたい」


それだけではないのだが、幼い子供に詳しく説明しても仕方がない


「気分悪かったら早めに言ってね?」


「うん」


正直なところ、幼いミルファを連れて中に入るのは忍びないのだが、かといって外に一人置いていくわけにもいかない。マニーズはミルファの顔を伺いながら慎重に歩を進めた





 (本当にみんなここにいるのか?)


俺は隣を歩くセイファルに尋ねる


『なんじゃ? 疑っとるのか?』


(いや、セイファルの言う事は信じてるけどさ。この臭いが……)


『ふむ。妾はなんとも思わんがのぅ。まあ、それはさて置き……子供達がここにいるのは事実じゃ。フレアとなにやら話していたしな』


門前で待ちぼうけていた俺のところにセイファルが突如戻ったのだ。セイファルに導かれてここまでやって来たのは良いが、この臭いに正直ギブアップしそうだった


『フレアに何を言われたのかは知らんが……どうせ碌な事ではないじゃろう』


そもそもフレアってのが誰の事かわからないが、セイファルが言うからには神様の仲間かなにかだろう


後で詳しく聞こうとひとまずマニーズ達の後をついていこうとすると、突如、浮遊感に襲われた


「え、えへへ……犬だぁ……かわいい」


後ろから両脇を抱えられ持ち上げられてしまった。何事かと振り返ると、そこには焦点が定まっておらず、胸元を肌けた男が立っていた


(うお!? なんだお前!?)

「キャイン!」


俺の声に全員が振り返る


「カールを離しなさい!」


マニーズが剣を抜き身構える


「っひ!」


その行動に男は驚き手を離す。人の胸元の位置で手放されたらどうなるか? そう、落ちるのだ


人の胸元程度と侮るなかれ、こちとら犬なのだ。犬の体で人の胸元となると、自分の体の数倍以上高い位置になる。人で例えるなら2階から落とされるようなものだ


(嘘でしょ!?)


「カール!!」


無我夢中で体を捻り、男の足にしがみつく


「あ゛っ! い゛だ!!!」


ズボンの上とはいえ、ジーパンのように硬い布地ではないのだ。俺の爪が食い込みそのまま下へと落ちる。男は情けない声で叫んだ


「ワンちゃぁぁん……」


それでも尚、俺を捕まえようと男は俺に襲いかかる


(ひぃぃ!! 助けて!)


体から甘ったるい臭いを発し、廃人のような目つきの男に襲われる恐怖に俺はその場から逃げ出した


「この!!」


後ろからはそれを見かねたマニーズが男を止める声が響いた




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ