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異世界冒犬譚  作者: さくら
面影に君を想う
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8話

宜しくお願いします

 子供達は日が傾きかけた森の中を歩きながら、後ろから付いて来ている、この場に似つかわしくない二人をチラチラとなんども見返していた


「私たちは大丈夫です。皆さんのペースで進んでくださいね」


そう言ってにこやかに微笑みを投げかけるセレナとエイムは先ほどのロングスカートだった服装とは打って変わり、体にフィットするズボンとブーツ姿だった


腰に差した剣と言い、美人が着るとなんでも様になるんだなぁとシグルは内心感心していた


「ちょっと。鼻の下伸ばしてないでちゃんと周り警戒しなさいよ」


肘でシグルを突きながらリプシーが小声で言う。リプシーは最後までセレナの同行を反対していた。当たり前だが、アイリス救出になにもセレナが行かなくてもいいのだ。すでに皇国軍とこの付近に駐留する兵士が捜索に乗り出している


だが、セレナは自分が行くと言ってエイムとリプシーの説得に応じることはなかった。このままでは一人でも行ってしまいそうだったので、それならばと渋々了承したのだ


早速準備をしだすセレナの元にタイミングよく皇国軍からの報告が入った。セレナを襲ったのはシャフトカンマで農業を営む家族との事だった


最近、よく村の先にある森に行くところを目撃されていたらしい


報告を聞いた一行は、その情報を頼りに屋敷を抜け出し、こうして森の中を行軍しているのである


だが、本当かどうかもわからない情報なのだ。本当にこの先にアイリスがいるのかどうかも不明だった


「止まってください」


突如、エイムが声を上げたので、全員がエイムを見る


「これを見てください。枝が折れてます」


そう言い枝を指差すエイムを見て子供達は首をかしげる。周りを見渡せば折れた枝などいくらでも見つかるのだ。そう珍しいものでもない


「まだ、若いですね……恐らくこっちです」


気がつけばエイムが先導するような格好になっていた。最初は半信半疑だった子供達も次第にエイムの言っていることが事実なのではと思い始める


エイムが導く方向に進むにつれ、残された痕跡が子供達でも確かにわかるほどになっていったのだ


「エイムさんは……メイドさんじゃないんですか?」


明らかに分かった上でのエイムの行動にリプシーは驚きの声を投げかける


「ん、昔ちょっとね」


それ以上、エイムの口から何かを語られることはなかった


しばらく進むと前を進むエイムの動きが止まる。全員が身をかがめ、その先にあるものを見つめた


目の前には沼が広がり、その先には山がある。そり立つ壁にはぽっかりと口を開けた洞窟があった


「あそこですね」


エイムの言葉に全員が頷く。洞窟の入り口には松明が掲げられ、見張りの男が立っていた。誰の目から見てもあそこには何かがある


沼を迂回するように進み、洞窟の入り口へと近づく


「見張りがいますね。どうしましょう?」


セレナが不安げな声を上げる


「お任せください」


そう言うとエイムは立ち上がり、当然のように姿をさらけ出した。そのあまりの唐突な行動に子供達は声をあげそうになるが、とっさに口を手でふさいだ




 「止まれ!」


突如現れたエイムに男は剣を抜き警戒する


「ああ……良かった! 人がいた!」


胸に手を当て、大げさな態度でエイムは近づく


「止まれと言っているだろう!」


「道に迷ってしまったんです! どうか助けてくれませんか?」


エイムはまるで胸を強調するように、胸の下で腕を組見ながら近づく


「ずっと一人で心細くて……」


「こんなところで迷子だと? お前どこから来た」


男は警戒しながら近づくエイムを止めようとはしない。その視線の先には二つの大きな膨らみがあった


「もうダメかと思ったけど、優しそうな方に出会えて私は幸運だわ」


「っぐあ!」


男は短い悲鳴をあげて崩れ落ちる。エイムの合図で全員がエイムへと近づいた


「エイム……なにをしたの?」


セレナが驚きの目つきで男を見つめている


「特に何も。男なんて一人しかいなければ、単純ですからね」


倒れこむ男を見ながら、シグルとオミロは、自分は気をつけようと心に誓った




 洞窟の中に入ると、鼻につく甘ったるい匂いでむせ返りそうになった


「これは……」


「臭い……」


「吐きそう……」


「スイーマの匂いですね」


エイムの発言に全員が首をかしげる


「エイム。スイーマとは何です?」


「スイーマは特殊な製法で作られたお酒の一種です。摂取することで通常では得られない感覚を得られるそうです。なので、それを摂取して……その……」


エイムは言いながらも言葉を濁らせるが、子供達はよく分からない


「その……それを摂取して行為をするとすごいらしい……です……」


それを聞いたセレナとリプシーは顔を真っ赤にする


「なあ? 何をするとすごいんだ?」


シグルは意味がわからず、リプシーに聞き返す


「うるさいっ!」


リプシーに怒られたシグルはなぜ怒られたのかがわからずオミロを見つめた


「つまりここは……」


セレナは伏せていた顔をあげ、エイムに聞き返す


「はい、恐らくはスイーマを楽しむための場所ですね」


「そんなものがあるなんて……」


「皇国ではその依存性から禁止しているはずです。皇国だけでなく、他の大陸でも発覚すれば処罰されます」


「そんなものがなぜここに……」


「それはわかりませんが……早くアイリス様を見つけ出したほうがよさそうですね」




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