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異世界冒犬譚  作者: さくら
面影に君を想う
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7話

宜しくお願いします

 シュレーダーの各地区にはそれぞれ詰所と呼ばれる場所がある。いわゆる交番みたいなものだ。住民は困った事があると酒場に相談に行くのだが、それは報酬が支払えるだけのお金を持っていればの話だ


それ以外の住民達はどうするかというとここの詰所へ来て嘆願書のような物をだす


出した所で聞き届けてもらえるかはわからないが、やらないよりマシという程度なのだろう。どうしても優先してやってほしい時は賄賂を握らせる等の手法もあるが、それをするだけのお金を持っていれば酒場に行ったほうがマシである


それ以外にも各種手続きなどが行われているので、詰所はいつも大勢の人で賑わっている


俺とマニーズ、そしてミルファはシグル達と別れた後にこうして詰所に来ているのだが、すでに多くの人が詰めかけており、中々順番が回ってこない


ここシュレーダーでは兵士と住民との関係も良好ということもあり、それに拍車をかけているようだった


マニーズが番号札のような物を受け取り、呼ばれるまで椅子に座って待っているのだ


「ミルファも町の外に出たかった?」


「ううん、初めて来る町だし、色々見れて楽しいよ?」


「そっか、ごめんね。付き合わせちゃって」


「払わないと怒られちゃうもんね」


シグル達が出かける時に事情を説明した所、融通をきかせてくれるということなので問題はないのだが、できれば戻る前に支払いを済ませてしまいたい


「それにしても、相変わらず混んでるなぁ」


「いつもこんなに混んでるの?」


「みたいよ? 私が前に来た時もいっぱい人いたし。なんか年寄りの相談とかも聞いてるみたい」


「へぇ〜」


皇都であるドナーコニスではあまりみられない光景にミルファは興味津々といった様子で辺りを見回している


「でも、よく考えたら子供達だけで行かせたのはやっぱりまずかったかなぁ?」


マニーズは今頃になって不安そうな顔をしていた。最近、だいぶ成長したといっても所詮は子供なのだ


(俺が付いて行ってあげれば良かったかな)


『なんじゃ、心配なのか?』


セイファルが顔を寄せて来る。近い


(そりゃね。子供達だけでってのも初めてだし。初めてのお使いって所か)


よくわからないといったような表情でセイファルはこちらを見つめている


『妾が見て来てやろうか?』


(え!? いいの?)


『構わぬよ。どうせ退屈していた所じゃ』


そういえば外に出たがっていたな


『何かあれば教えてやろう』


(まじか、ありがと……う)


礼を言い終えるよりも早くセイファルは姿を消してしまった。そんなに暇だったのか


「ミルファはドナーコニスを離れて寂しくないの?」


セイファルとそんなやりとりをしている頃、マニーズはミルファと話の花を咲かせているようだった


「え?」


「いや、ほらさ。好きな人とかいなかったのかなーって」


「え? ……え!?」


「あ、でもシグル達と遊んでたんだっけ? どうなの? シグルとオミロは?」


突然、マニーズが口に手をあて下品な笑顔でミルファに問いただす。お前は近所のおばちゃんか


「ふ、二人は好きだけど……」


「え!? どっちがタイプなの?」


「そういうのじゃないよ!!」


顔を赤らめながらミルファは突然立ち上がる。周囲の人も何事だろうかとこちらを見つめていた


「ちょ、落ち着いてよ……ミルファ。そんなにムキにならなくても……」


マニーズはミルファを(なだ)めさせながら座らせる。ミルファは耳まで真っ赤にしていた


幼い子供にムキになるなというのが無理だろう。お多感な時期だぞ?


「二人は好きだけど……そういうのじゃないもんっ!」


「うんうん、そっか。ごめんね? それじゃあ、ミルファはどういう人がタイプなの?」


どうしても聞きたいらしい。ぶっちゃけ俺も気になる


「ん? どうしたの?」


顔を伏せたミルファに催促するようにマニーズが擦り寄る


「……一緒にいてくれる人」


先ほど以上に顔を真っ赤にさせたミルファは聞き取れないほどの小さな声でボソッと呟く


「え? それだけ?」


想定外の回答にマニーズはなんと返せばいいのかがわからない。もっと背が高くて〜とか、格好良くて〜とか、そういったのを期待していたのだろう


まあ、気持ちはわかる。かくいう俺も地面に伏せながら、上目遣いで見ながら耳をしっかりと傾けていた


そんな俺をミルファがちらりと見て来た


なんだろうか? あれか、俺がいるから言いづらいとかそういう話か? まあ、シャールから漏れる可能性もあるしな


別に離れててもいいんだよ? 聞こえるけどね!


「そういうマニーズお姉ちゃんは?」


「えっ!?」


思わぬ反撃に今度はマニーズが挙動不審になる


「シュナイダーさんとかがタイプなの?」


「え!? ないないないない!」


「そうなの? シュナイダーさんってちょっと天然っぽいけど、格好良いから。マニーズお姉ちゃんは好きなのかなーって」


「あー、シュナイダーさんは天然っぽいよねぇ」


「やっぱり、タウレさんみたいな人?」


「お父さん!? 嫌だよ!」


「じゃあ、どんな人?」


「ほ、ほら、私のことはいいじゃん! そんなことよりシャールさんとかのタイプとか気にならない?」


「私は言った……」


「う……」


「どんな人が好きなの?」


「んーと。い、一緒に居て疲れない人・・?」


ミルファと大差ねぇじゃねえか!


結局、その後は呼ばれるまでの間、マニーズ先生による恋愛談義が続いた



 長い待ち時間末、ようやく手続きを終えた俺達は宿屋へと戻った。もうじき日も傾き始める頃合いだ。そろそろ子供達も帰ってくる時間だろう。もしかしたらもう戻ってきているかもしれない


「まだ、戻ってきてないみたいだね」


先に部屋へと入ったマニーズが第一声を発した


「もうそろそろ帰ってくるかな?」


「そうだね。ちょっと屋台見ながら門まで迎えに行こうか」


日が暮れる頃には屋台の商品も値引きが始まる。特に食品系に関しては次の日に持ち越せないので安売りをし始めるのだ。もしかしたらなにか買ってくれるかもしれない。ぜひ行こう


「うん!」


その後、夕暮れまで門で子供達を待ったが、帰ってくることはなかった




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