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異世界冒犬譚  作者: さくら
面影に君を想う
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4話

宜しくお願いします

 「え!? マニーズお姉ちゃんは一緒にいかないの?」


少し遅めの朝食をとっているとシグルが声を上げた


「税金払い忘れちゃって、あの様子からすると結構時間かかりそうなんだよね」


各町では入る際に門兵に対して税金を支払う義務があるのだ。税金といっても対した金額ではなく、一度払った町では証明書が発行され、二度目の訪問では免除される


集めた税金は町の運営や、冒険者達の支援に充てられる。その町で滞在中に大怪我を負った際や死亡した時は町がそのサポートをしてくれるのだ。とはいえ、介護とかのレベルではないらしい。あくまでも死体処理とかそんな名目らしい


どうやらシュレーダーに入る際にマニーズの証明書を見せたところ、全員入れてしまったせいでシグル達の税金を納めていない事に気づかなかったらしい


「僕達だけで大丈夫でしょうか?」


オミロが不安そうな顔をする


「前に似たような事があって、手続きしたんだけれど、詰所で一日待たされたんだよね」


憂鬱そうなため息を吐きながらマニーズが言う


「依頼受けるのは明日とかにしたほうがいい?」


「でも、昨日お金使っちゃったし・・二日間も何もしないわけにはいかないよね」


リプシーとミルファが言うように、先日全員の装備を一新してしまったのだ。装備を買い換えた上に稼げませんでしたでは言い訳もできない


「この辺りなら治安もいいし。依頼は一緒に見に行きましょう」


少し前までであれば子供達だけで外に行かせるという事はなかったのだが、最近の成長ぶりから問題ないとマニーズは判断したのだ


それにこの辺りは治安も良いので道に出れば巡回している兵士達もよく見かける


「リプシー。みんなの事は任せるわね」


マニーズがリプシーを見る


「はい」


俺はその流れを見ておや? と感じた。こういう時は決まってシグルが「俺がやる!」とか言い出しそうなものなのだが、シグルは黙ってそれを見ているだけだった


「簡単な依頼を選ぶけど、あんまり遅くならないようにね」


「「「はい!」」」







 今回、子供達が受けた依頼は野草の採集とシャフトカンマ付近の治安調査だった。初めての子供達だけの冒険という事もあり、全員がどこか楽しげに道を歩いていた


「お姉ちゃんがいないからって浮かれちゃだめだからね」


リプシーがシグルとオミロを見て言った


「大丈夫。せっかくのチャンスなんだし。ちゃんとやる」


楽しげにオミロと話す反面、思いの外しっかりとしたシグルの回答にリプシーは少しだけ驚いたが、すぐに納得する


自分たちの実力を見せられるチャンスなのだ。町を出ずにドナーコニスで遊んでいる時であれば、こうはいかなかっただろう。皆に良い所を見せたくて我先にとシグルは駆け出していたはずだった


旧バルミルス邸に移り住み、年上だらけの環境で過ごす事でシグルはもちろんリプシーとオミロは驚くほど成長した


年齢で言えば最年長のシグルが十二歳、続いてリプシーが十一歳、オミロは十歳だ。小学生高学年程度なのだが、ここ数ヶ月で精神年齢はかなり高くなったのだろう


「位置的にはシャフトカンマに行ってから、野草採集だろうけど、今回の野草は日持ちするからあまり気にしなくて良いかも」


オミロが二人に向かって言う


「どっちが先がいいのかな?」

と、リプシーが首をかしげる


「気にしなくていいなら、野草が先でそのあと治安のほうがいいのかな? 暗くなってからだと見つけにくいかもしれないし」

シグルも顎に手を当て考える仕草をする


「うーん、そこまで暗くなるとそれはそれでダメな気もするけど、とりあえず野草採集を先に行こうか。治安調査はまたマニーズお姉ちゃんといけばいいんだし」


リプシーの提案に二人は頷くと、野草が生えている場所へと向かって歩き出した





 思いの外、野草はすぐに見つかった。頼まれた量よりも少し多めに採集した野草をオミロは濡れた布で包み、その上から皮で包み込む


「すぐに見つかって良かったな」


「これだけあれば大丈夫でしょ」


オミロがカバンにしまいこむ様子を見ながらシグルとリプシーは一安心する


「休憩したら、シャフトカンマに行こう」


カバンを背負い直したオミロが二人に向かって言う


「どうする?」


シグルがリプシーに判断を委ねる


「ここからそう遠くはないけど、オミロの言う通り、少し休憩して行こうか」


三人は街道へと戻り近くの岩へと腰掛けると、カバンから果物を出しかじり始めた


「シグルはちょっと物足りないでしょ?」


リプシーが果物を(かじ)りながら言った


「まぁね。でもこういうのをちゃんとやらないと怒られちゃうしね」


「あら、意外ね。シグルの事だからもっとゴブリン討伐とかやりたい!って文句いうかと思ってた」


「そりゃもちろんそっちの方が楽しいけどさ。それじゃいつまでたっても師匠とかエルロッテお姉ちゃんに認めてもらえないだろ?」


「そうだね。今回はマニーズお姉ちゃんだから三人で行くの許してもらえたけど、まだシュナイダーさんとエルロッテさんじゃダメって言われそうだね」


オミロはシグルに同意するように言った


「マニーズお姉ちゃんがおっちょこちょいだからってだけかもしれないけどね」


リプシーはため息をつきながら言う


「欲を言えばカールは連れて行きたかったかなぁ」


「あはは、マニーズお姉ちゃんが離さないでしょ」


シグルの本音にリプシーは笑って答えた


「ずるいよね。子供達だけなんだから、カールはこっちについて来させるべきじゃない?」


オミロの言い分ももっともである


「かといってミルファを連れていくわけにもいかないしね。私たちじゃ、まだ、自分たちの事だけで精一杯だし」


リプシーはそう言いながら目線を落とす


「まぁね。この依頼もちゃんとこなして、早く認めてもらおうぜ!」


シグルの言葉に二人は力強く頷く


「それじゃあ、そろそろ行きましょ。あんまりゆっくりしていると暗くなっちゃう」


まだ日は高いのだが、日が落ち始める前には帰路に着かなくてはならないのだ


「おーし! 頑張るぞー」


「気負いすぎないようにね。退くときはちゃんと退いてよね」


リプシーは苦笑いしながら立ち上がった





 シャウトカンマの町へとついたシグル達は、町の中を入らずに迂回し、その先にある森へと向かった。依頼の内容ではこの辺りに狼の群れが見かけられるとの事だった。その確認と狼を発見したら退治してほしいというものだった


三人は森の中に入る。あまり奥深くへと入るのは危険なので、街道が見える程度までにしている


しばらく進むと、前を行くリプシーが動きを止めた


シグルとオミロはその意味を察し、身構えながらあたりを見回す


「なんかいた?」


特になにも見当たらず、不思議に思ったオミロがリプシーに問いかける


「気のせいだったのかな? さっき何かが……っあ!」


リプシーが指差す方を見るとそこには数匹の狼がこちらを見ていた


「どうする?」


「襲ってくる気配はないわね。退治しろとは言われてるけど、これ以上奥にいくのも危険ね」


三人の腕前は、もはや狼相手で遅れを取る事はない。だが、森の中となれば話は別だ。知らず知らずの内に囲まれてしまう可能性もある


ここは一度帰ろう——そう言いかけたリプシーの目に飛び込んできたのは、かつてドナーコニスで見た白い狼と巨大な狼だった




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