表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒犬譚  作者: さくら
もう一つの未来
74/126

4話

よろしくお願いします

 正義はノルベリン大陸からマンダス大陸へと入り、ジルベストル地方へとやってきた。ここから東へ行けばヨルーダ大陸に入れる。北に行けばマンダス大陸の皇都へとたどり着ける


特に宛てもなかった正義はひとまず近くの町へと行ってみようと考えた


道は獣道のような物で、長年まったく人が通っていなかったのが伺える。また道中では気になる遺跡跡地のような物がいくつか見れた


やはり宝箱とかあるのだろうかと興味は沸いたがひとまず置いておく事にした


それ以上に早く町に行って宿に入り体を洗いたかった


ノルベリンで最後に立ち寄った町から既に三日が立っている。つまり三日ほど体を洗っていないのだ


前の世界ではニートだったので風呂に入らない事もしばしばあった。なので、ある程度は気にならないだろうと思っていたのだが、甘かった


そもそもニート時代は家から出ないし、運動もしなかった。一方、こちらの世界にきてからは歩きづくめだ。汗のかき方が違うのだ


さっさと町へ行って体を拭きたい


そんな事を思いながら、道を通っていればいつかは人が住んでいる場所に着くだろう。そんな安易な気持ちで進んでいた





 獣道を進んでいると、開けた場所へと出た。丁度、T字路のように一目で人が通っているであろう道へと出れた


問題はどっちに進めばいいのかだが、右を見ると遠くに人の背中姿が見えた。あちらに町があるのかもしれないと、ひとまずついて行く事にした


 森の中に作られた集落は石垣で作られた家が立ち並んでいた。ひとまず酒場らしき家に入り、情報を集める。どうやらこの世界では酒場と宿屋は兼任しているらしい。一室を借りた正義は身の回りの整理をした後、時間を持て余したので町を見て廻る事にした


「なんで持ってこないんだよ!」


ぶらぶらと町を歩いていると、ふと声が聞こえた。何事だろうとふと見る


家に挟まれた細い路地に数人の子供が集まっていた


「持ってこれないよ……」


「殴られたくなかったら持ってこいって!」


正義は一目見てその現状が理解できた——イジメだ。少女を数人の子供がイジメているのだ


(異世界にきてまでいじめかよ。くそが)


通り過ぎたところで正義は足を止める


ふと自分の消し去りたい過去が蘇り胸のあたりがもやもやした


(俺には関係ない)


正義は足早にその場を立ち去った




 翌日、酒場で食事をしていると気になる話を聞いた。なんでもヨルーダ大陸には聖獣という存在がいるらしい。特に宛てもない正義は聖獣をみてみるのもいいかもなと考えた


だが、その為には少し財布の中が心許ない


少し稼いでから行くかと、荷物を担ぎ、町を出ようと門をくぐる。すると門の脇でうずくまり泣いている少女がいた


先日、いじめられていた少女だと気付く


「おい、どうした?」


正義が話しかけると、びくりと体を硬直させ少女は恐る恐る見上げる


「お前、昨日、いじめられていただろう?」


正義が話しかけるも、少女はどこか挙動不審だった


なんとなく、気持ちはわかる。いじめを受けていた自分もこうだったのだ。世の中の全てが自分に敵意をもっていると錯覚してしまうのだ


「なんでいじめられてたんだ?」


「お父さんがいないから……」


母子家庭かなにかなのだろうか?


「十ゴールドもってこいって……そんな大金持ってない……またいじめられちゃう」


そう言うと少女は目に涙を溜めた


「ほら」


正義は懐から数枚の金貨を少女の前に放り投げた。心許ない財布事情だが、この世界の基準で言えば正義はお金持ちだった。城を出るときに渡された大金と道中で稼いだお金を合わせれば、数千ゴールドは持っていた


「いいの?」


驚くような顔で見上げる少女に正義は無言で頷くとその場を立ち去った






 近くの森に住み着いたゴブリンの討伐


酒場で見かけた中で一番高額な依頼だったのだが、正義の力を持ってすれば一瞬で解決する内容だった


ゴブリンを見かけた正義は、身構える事もなくその姿を晒し、敵意丸出しで襲いかかるゴブリンを一箇所に集め、魔法で蹴散らした


「こんな依頼、余裕だな」


正義は気分が良かった。ゴブリンを倒す優越感もあったのだが、町を出る前に少女に恵んでやった事で気を良くしていたのだ


——だが、町へと戻った正義は自身が浅はかだった事を思い知らされる


「もっと持ってこれるだろ!」


「やめてよ! 殴らないで!」


酒場へと向かう途中で聞こえてきた子供たちの声。まさかと思い路地裏へと入ると、少女を取り囲む数人の子供達がいた


「なにやってんだ」


正義は自分でもビックリするぐらいドスの効いた声を出した


「な、なんだよ。関係ない奴はあっち行ってろ!」


「なんだと?」


「こいつは金を盗んだ悪い奴なんだ! だから懲らしめてるだけなんだ!」


相手が求めるものを満たせば、さらなる要求が待っているだけなのだ


なぜ気がつかなかったのだろうか、自分が散々経験してきた事なのに……


「クソガキが。調子にのるなよ?」


カチンと来た正義は大人げなく、力の片鱗を見せつけた


「ひっ……」


力を見せつけられた子供は恐怖に顔を引きつらせる


(生意気なクソガキが。ちょっと痛い目でも見せてやろうか)


「ひっ……う……うわぁぁぁぁぁん!!」


けたたましく鳴き叫ぶ少年。それに釣られるように他の子供達も鳴き始める。まるで大合唱だ


「おい! どうした!」


近くの大人たちが駆けつける


「おい! あんた! なにやってるんだ!」


「あ? こいつらがいじめ……」


「うわぁぁぁぁん!! このおじさんが虐めるぅ!!」


「あ!? ふざけんな! お前らが……」


「お前! 子供相手になにしてんだ!」


「ちっ」


続々と集まってくる野次馬達に正義は顔をしかめる


「どけっ!」


集まった野次馬達を押しのけるように正義はその場を立ち去った


(くそ。なんなんだよ! 悪いのはあのクソガキ共だろうが! あいつらがあの子を一方的に虐めてたんじゃねーか)


その通りだ


(だから俺は助けようとしてやったのに……)


本当にそうだろうか? 正義の脳裏にかつてのクラスメート達の顔が思い浮かぶ


(俺はあいつらとは違う!)


正義は首を振り否定する




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ