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異世界冒犬譚  作者: さくら
君を照らす闇
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1話

新章となります。宜しくお願いします

 夜の帳が下り、人々が寝静まった時刻。町外れの廃屋の一室ではロウソクの揺らめく炎で五つの影が照らされていた


「で、俺達を呼んだのはなんだ? よほどの事がなければ招集はかけない約束だろう」


髭面の男が口を開いた


「まあ、ここにいるメンツ見れば、そのよほどの事があったってこったろ。それにしても年取ったね」


ほうれい線が目立つ女性が他のメンバーを見て感慨深そうに言った


「急に集まってもらって悪かった。これを見て欲しい」


腕を組んでいた男が一枚の手紙を中央のテーブルに置いた


「それは?」


「まずはそれを読んでほしい」


三人の男女が手紙を回し読む


「これは、マニーズちゃんからかい?」


「ああ、先日、カールが見つかったと連絡がきてな。ただ、事情があってマニーズは向こうにいる。それはいいんだが、問題はその手紙にある神印についてだ」


タウレは頷いて言った


「我らがセイファル様の事となれば放って置くわけにはいかんな」


ホグツが身を乗り出す


「神印はホグツのところにあったか?」


「ああ、うちにあるのが最後の一つだ」


「まさか譲るのかい?」


「娘の頼みだ。断れんよ」


「ふむ。誰が送るんだ?」


「俺とネフティで行く」


「おい! まさか夫婦で行く気か? 畑はどうするんだ!?」


「セゲルがいるから問題はない」


「ラティちゃんはどうするんだよ!」


「セゲルが面倒見てくれるさ」


タウレの言葉にホグツは呆れたようにポカンとするが

「よし、なら俺も行こう」

腕を組み深く頷く


「は!? ホグツまで何言ってんだい! 店はどうすんのさ!」


「心配ねえ。息子に譲ってやるさ。誇り高き盗賊団の血が騒ぐぜ」


暫くの静寂が支配する


「はあ。仕方ないね。父ちゃん。うちらもいくよ」


「え!?」


「腑抜けた声出してんじゃないよ! 盗賊団の誇りを失くしちまったのかい!!」


「そういってやるな。もう十年以上も前の話だ」


「年甲斐もなく興奮してきたな。盗賊団再建か!!?」


「落ち着けよ、ホグツ。そんな事してみろ。あいつらが黙っちゃいないぞ?」


「けっ。暗殺団供なんざ返り討ちにしてやるよ」


「あんたも年なんだからほどほどにしときなよ」


「本当にいいのか?」


タウレは全員の顔を見回し確認する


「女に二言はないよ。それにセイファル様の為ならなんだってするさ。ねえ父ちゃん?」


「お、おう……」


「よし、それじゃあ」


五つの影は身を寄せ合う。密会は夜遅くまで続いた








マニーズは突然の訪問者に開いた口が塞がらなかった


「え、な、なんで父さん達が? それにホグツさんまで?」


「おう! マニーズちゃん久しぶりだな! これからもよろしく頼むぜ!」


ガハハと笑いながらホグツはマニーズの背中を叩く


「え? よろしく頼むって?」


言葉の意味がわからずマニーズは父と母の顔を見る


「あたしらもここでお世話になるってことよ」


ネフティはケラケラと笑いながらさも当然と言ったような表情だ


「ええっ!!???」


「あの〜、マニーズさん? こちらの方達は?」


レオンが申し訳なさそうに手を挙げマニーズに質問する。突如現れた訪問者達は玄関に着くや否や辺り一帯に響き渡るほどの大声で来訪を告げた。驚いた全員が玄関へとやってきている


「あ、レオン様。紹介が遅れました。こちらは私の父のタウレ、こちらが母のネフティです」


「いつも娘がお世話になっております」


マニーズの紹介でネフティが深々と頭を下げる


「い、いえ! こちらこそお世話になってばかりで」


「こちらは農具を販売しているホグツさんです」


「よろしく頼むな!」


「こちらはマルゲーヌさんとご主人のレイヴァンさんです。同じ農家です」


「このような格好で申し訳ありません皇子様」


「マニーズお姉ちゃんのお父さんとお母さんがどうしてここにいるの?」


全員の紹介が終わると今度はリプシーが疑問を投げかけた


「わ、私にも……どういう事よ! お父さん!」


「お前が神印について聞いてきたんだろうが。わざわざ持ってきてやったんだ感謝しろ」


「なにもお父さんとお母さんが持ってこなくてもいいじゃない!」


「ひとまず、中に入られては如何でしょうか?」


マニーズとタウレのやりとりを見ていたレオンは何かを察し、来訪者達を中へと促した



 「盗賊団と関係のある方達なのですね?」


レオンは来訪者達の前に座り全員の顔を眺めている


「ああ、ここいる全員が元盗賊団だ。俺達を捕まえるか?」


大きな溜息と共にタウレが告げる。こうなる事はすでに予想していたのだろう。むしろ全員がそれを告げる為に来たような面持ちだ


「確かにあたしらは元盗賊団だ。だけどね、盗賊団末期の頃にはあたしらはすでに盗賊団を抜け出していた。あの頃の盗賊団は何かが狂い始めてたのさ。そのツケを払わされたのさ」


 元々、盗賊団は必要悪として皇国は取り締まる事はなかった。犯罪といえば犯罪なのだが、盗賊団がもたらす経済効果は無視できない。そこで皇国は重大な犯罪は取り締まるが、殺人や皇国に不利益な事以外の行動に関しては黙認していた。だが、盗賊団の行為はエスカレートして行く。殺人に関しても以前から多少はあったのだが、公然と行うようになり、まるで一つの国家を作るのではと思うほどの行為を見せていた。それに焦った皇国が軍を送り込んだのだ


「あなた達を捕まえるつもりはありません。捕まえたところで今更ですし。何かが変わるわけでもありません」


レオンは首を横に振り答えると

「ただ、盗賊団を再結成するとなれば話は別です」

そう言って、五人の目を見つめる


「俺たちは農家だ。今更、クワを捨てるつもりはない。だが、セイファル様の事となれば別だ。闇を生きてきた俺達にとってセイファル様信仰の復活は悲願でもある」


「ですが、セイファル信仰を表立って行えば皇国が黙ってはいませんよ?」


セイファルの信仰はそれほどまでにイメージが悪いという事なのだろう。俺の横で寄り添うセイファルは幾度となく見せた悲痛な面持ちでこの会話を聞いている


なんとかしてあげたいのだが、どうすればいいのだろうか?


単純にクリーンなイメージを売っていき、認識を変えさせるのがいいのだろうが、その手法が思いつかない


「皇子様の言う通り、セイファル様信仰を復活させるとなると一筋縄ではいかない事は分かっている。だが、ここにいる全員がセイファル様への信仰を忘れた事はない。ここで手伝いをさせてもらいながら、セイファル様の祭壇を手入れさせて欲しい」


タウレが言い終わると、全員が頭をさげる


『こやつらは盗賊団におった者共か、そこの者とそちらの女は見覚えがある。敬虔な信者でいてくれたが、随分年をとったようじゃな』


タウレとマルゲーヌの事らしい


『のぅ、カール。妾からも頼みたい。どうかこの者らをここに置いてやってはくれぬか?』


神が頭を下げるというのは如何なものだろうか、自分の存在が消えるとなればなりふり構わないと言ったところなのだろうか。だが、セイファルの顔はまるで自分の子供達を想う母親のそれに近い感覚を受ける


(シャール)


「はい? どうしたの?」


シャールが小声で応えると俺に顔を近づける


(この人達に祭壇の手入れしてもらえるように俺からもお願いしたいんだけど)


シャールは俺の言葉を聞くとすぐさまレオンに顔を向ける

「レオン様。カールからもこの方達にお願いしたいといっております」


その言葉を聞き、レオンがこちらを一瞥し、再び五人へと顔を向ける


「わかりました。どのみち、マニーズさんのご両親を無下にするつもりはありません。それにカール様のお願いという事もあります。ですが、状況によっては私の判断に従ってもらう必要がありますが、よろしいですか?」


「本当か! ありがたい! もちろん皇子様の判断には従う」


五人は顔を挙げ目を輝かせる


「ん? カール様? おい、マニーズ? カールってそんなに偉いのか?」


タウレが怪訝な表情でマニーズを見つめる。その後、シャールから一通り説明してもらったタウレ達は微妙な顔つきで俺を見つめてきた


なんだちくしょう。文句あるのか



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