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異世界冒犬譚  作者: さくら
正義の味方
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閑話

閑話になります。よろしくお願いします

 シグルは息を切らせながら、細い路地を走っている


オミロ達との待ち合わせの時間から大分時間が過ぎているのである


リーダーとしての威厳を保つために、シグルは絶対に遅刻はしないようにと気を付けていたのだが、今日は事情が違った。レオンがシュナイダーを伴って訪れ、両親に事情を説明をしに来ていたのだ


カイラの件の後、レオンは旧バルミルス邸でカイラ捜索を行う。その仕事を手伝う為にシグルも一緒に行くことになった。その了承を得る為にレオンが訪問したのだ


既にオミロ、リプシー、ミルファの両親からは承諾を得ていたので、後はシグルの両親からの承諾を得れば全員がレオンと一緒に行ける


レオン達が今日シグルの家に来ることは全員が知っていたので、その報告会をしようと集合を掛けていたのである


細い路地を何度も曲がると見覚えのある曲がり角へとやってくる。あそこを曲がればいつもの空き地だ


最後のひと踏ん張りと走る足に力を込めて駆け抜けると、広場には見慣れた三人がすでに集まっていた



「遅いよシグル!」


リプシーが手を振りながら迎えてくれた


「いつも僕には遅刻するなって言ってるのに」


いつも怒られる側のオミロが言ってくる。顔がにやけているので怒っているわけではなさそうだ


「大丈夫?」


全速力で走ってきたので膝に手を置き肩で息をしているとミルファが心配そうに声をかけてきてくれた。ミルファは突然倒れてしまったのだが、すぐに目が覚めた。なんでも依り代?だとかになったせいで倒れたとシャールから説明されたのだが、シグル達にはよくわからなかった


「はあ、はあ。わ、悪い」


「それで? どうだった?」


どうだったとはもちろんレオンと両親の話し合いの事だ


「はあ、はあ。う、うん。それが……」


答えを焦らすつもりはないのだが、息切れで喉が乾き言葉が詰まる


「え、もしかして……」


オミロは不安そうにこちらをみてる。オミロは何かにつけてダメな方に考える癖がある。逆にシグルは良いほうに考える癖があるので時折オミロの言葉に腹を立ててしまう。だが、この後のオミロがどういった顔をするのかが想像でき、自然と顔がにやけてしまう


「何にやついてるのよ! バレバレだって! 大丈夫だったんでしょ?」


そんな表情を見逃さなかったリプシーが答えを先に言ってしまった。リプシーはいつも皆の隠し事を最初に気づいてしまうのだ


「へへ、大丈夫だった!」


これ以上、隠しても仕方がないのでシグルは顔を上げ報告をした。意識した覚えはないのだが表情がこれでもかと緩んでしまった


「やったーーー!」

「よかった……」

「ほーらね。やっぱり!」


三人はまるで自分の事の様に喜んでくれた





 「いつから行くのかな?」


いつものように向かい合い座った四人は今後の事について話し合っていた


「レオンはもう行ったり来たりしてるみたいよ?」


リプシーが言うにはひとまずの生活ができる環境を整える為にレオンは先行して動いているらしい


「私達だけで生活できるのかな?」


「シャールお姉ちゃんとエルロッテお姉ちゃんがいるから大丈夫だよ」


「あ、そっか。楽しみだね」


ミルファはカールのお世話が中心になるらしくすごく嬉しそうにしている。オミロはシャールに魔法を教わるんだと意気込んでいる。シグルとリプシーはもちろんシュナイダーとエルロッテに鍛えてもらう約束をしてある


「スターアビシオンもすごいことになったよね」


オミロが遠くを見るような目で呟いた


「そのことなんだけどさ」


シグルは先日から考えていた事をいつ言おうかと悩んでいたが、遂にそのことを切り出した


「スターアビシオンは解散しようと思うんだ」


「え!? どうしてさ!!!」


突然のシグルの言葉にオミロはたまらず立ち上がってしまった。ようやく認められてきたのだ。これからが本番なんじゃないかとオミロは叫ぶ。そんなことはシグルもわかっていた。だが、それを許せない自分もいた


「俺さ。すごい悔しかったんだ」


説得などではなかった。どのみち口ではリプシーとオミロに負けてしまう。なのでシグルは本当の気持ちを打ち明ける事にした


「本当はさ、もっと格好良く戦うはずだったんだ。サルジアスフレイみたいにバシッ! ザシュッ! てさ」


シグルの言葉にオミロは口に出そうとした言葉を飲み込み、再び座りこむとシグルの言葉に耳を傾ける


「でもさ、やっぱ無理だった。みんなを守りたかったんだけど怖くて動けなくなっちゃった。そしたらカールが……新入りなのに……」


格好良かった


だが、その言葉は飲み込んだ。言ったら負けを認めてしまうようなそんな気がした


シグルの思いはその場にいる誰もが感じていた。広場で話している時はうまくできていたのだ。シグルが前に立ってリプシーとオミロがサポートする。ミルファは応援役だ。いつも誰が敵にトドメを刺すかで喧嘩していた


「俺、強くなりたい」


正義の団スターアビシオンのリーダーに相応しくなりたい。それまではスターアビシオンを名乗れない。顔を上げたシグルの瞳には固い決意が込められていた


「僕も……迷惑しかかけてないや」


「わ、私も」


シグルの気持ちを聞いた三人は黙り込んでしまった



「うん。よし! みんなで強くなろう! それでもう一度結成しようよ!」


その空気を吹き払うようにリプシーが立ち上がり拳を握る


「絶対に四人で再結成だよ!」


オミロも立ち上がると、ミルファも慌てて立ち上がる


シグルも立ち上がる


「もちろんだって!」


自然と四人は手を前に出し重ね合う


「絶対に強くなるぞぉー!」


「「「おーー!」」」







 後世、多くの庶民に愛される物語がある。二人の剣士はその剣を掲げ敵を打ち倒し、一人の魔導士はありとあらゆる魔法を駆使し彼らを助け、一人の巫女は聖獣と心を通じ合わせた。彼らの苦難と栄光の物語を子供たちはこぞって真似をし、酒場では多くの詩人が歌う事となる


その物語の名は三獣士と聖獣の巫女と呼ばれ、表紙には黄金の毛並みを持つ聖獣とその傍らに立つ少年少女の絵が描かれている




次回から新章となります

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