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異世界冒犬譚  作者: さくら
交わる旅路
49/126

1話

よろしくお願いします

 レオンが旧バルミルス邸付近の土地を譲り受けてから数週間が経った。ひとまず生活ができるだけの改修が終わったとの事で全員で移住することになった


皇都であるドナーコニスを出立し東に半日ほど歩くとプロケンタスの町に辿り着く、そこで一泊した後、橋を渡って南下。更に半日で目的地である旧バルミルス邸へとたどり着く。すでに西日が差し込む時間帯だ。すぐに日は落ちるだろう


元々屋敷と数件の民家が立ち並ぶ小さい集落だったのだろう。それを物語るように複数の民家が立ち並んでいた。入口らしき門の木は腐りきっており、いつ倒れてもおかしくないと言った様子だ


門をくぐると目の前には小さいながらも池があり、池の先にはそれを見下ろすように丘がある。屋敷は丘の上のようだ。池は門から丘へと縦長に伸びており両脇に民家が立ち並ぶがどれも朽ち果てていた。とてもじゃないが人は住めそうにない


左右に分かれた民家を結ぶように池には橋が架かっているがこちらも渡るのは危険だろう


池を回り込むように屋敷へと歩き出す。道中朽ち果てた民家を横目に見るが、長年放置されていたのが一目でわかる


土がむき出しになった階段を上り、小さな丘の上へとやってくると石造りの門が見えてくる。所々欠けており廃墟に相応しい門構えだ。まったくもって嬉しくない


門の中に入ると長年放置され伸びきった芝生が見渡す限り広がっている。屋敷そのものはかなり大きかった。コの字型をした屋敷は左右に西館、東館の建物があり、それらを中央館が繋ぐような作りになっている。横に広いと言った感じだ。ぱっと見ただけで窓が数十個見えるのだが、そのいずれも窓枠のみなので空気の入れ替えは万全のようだ


東館だけが新品の様相なので、恐らくここを改修したのだろう


「こっちです」


レオンが皆を案内して屋敷へと入っていく


「なかなかすごいわね」


「これは、直し甲斐がありますね」


「申し訳ありません。まずは生活ができるだけと改修は最低限になっております」


シャールとエルロッテが呟いた言葉にシュナイダーが謝罪する


「すげー!!」


「ここが僕らの秘密基地だね!」


「お部屋がいっぱいある!」


「ちょ、ちょっと怖いね」


子供たちは妙に楽しそうだ


中央館の仰々しい玄関をくぐると広い吹き抜けのエントランスが出迎えてくれた。正面にはL字のかね折れ階段があり、左右のどちらからも上れる。お屋敷っぽくてすごい。俺の実家は折り返し階段でとても狭いのだが、ここのは三人ぐらい並んで上れそうだ。いや、三人仲良く上る意味はないな・・ダンディな執事のおっさんがタキシード着て出迎えてくれそうだ。シュナイダーはやってくれないだろうか。イケメン執事、似合いそうなんだが


更に目を惹くものがあった。かつては煌々(こうこう)とこのエントランスを照らしていたのだろうか、中央の天井からは錆びれたシャンデリアがぶら下がっている。いいなぁ、アレ。そのうち直してくれないかな


エントランスの左右には朽ち果てた棚やらソファなどが配置してある。当時は調度品などを置いて客人を出迎えたのだろうが、今は寂しい佇まいをしている


口を開けてその広さを眺めているとレオン達は奥へと行ってしまったので慌てて後を追いかけた


「古びてはいますが、造りはしっかりしているので倒壊することはないと職人さんのお墨付きをもらっています」


東館に向かう通路を歩いているとレオンが前を向いたまま言ってくる。そうか、廃墟なんだからその心配もあるよな


「ここから先が当面の部屋になります。さあどうぞ」


扉を開けると更に通路が続いているが、今いる場所と見比べるとまさにビフォーアフターだ


「一通り部屋の説明をしますね」


レオンに案内され各部屋を見ていくことになった


横に長いと言ったが、あれは嘘だ。結構奥行きもあるので相当でかい屋敷だ。さすがは元男爵のお屋敷といったところか


東館に入ると十字の通路が目に入ってくる。正面の突き当りには階段があり、あそこから二階へと上がれるようだ。十字路まで歩き立ち止まると左右を見る。右には向かい合うように部屋が二つ。この二つが男子部屋だそうだ。レオンは十字路を左に曲がる


こちらは通路を挟んで合計六つの扉が見える。奥から中央館側の部屋が浴室、調理場らしい。それの向かいにあるのが奥から物置、トイレ、物置、リビングだそうだ。


女性メンバーはここで各部屋の扉を開け始める。中を見るとなにやらキャーキャー騒いでいる。一方男達は遠目からそれを眺めているだけだ。そういや、ホテルに止まった際とかアパートの見学行くと女性って細かい所まで見るよな。そんなところ見なくてもよくね?って所まで見たり。まあ、楽しそうだからいいけど。現にシャールとエルロッテは目につく扉を開けてなにやら喋ってる。おい、全部開ける気か、もうやめて


レオンの説得?により、ひとまず全部の部屋を見ようという事で二階に上がってきた。シャールとエルロッテはまだ見足りないといって様子だ。建付け見て回るだけでご飯三杯いけるねあれは


二階に上がると、基本的な構成は下と変わらないが、こちらはT字の通路のようだ。正面突き当りの扉は中央館二階に繋がっているのだろう。T字までやってくると一階では通路だった場所に扉がある。下は男部屋が二つに分かれていたが、二階は二部屋を繋げているのだろう。かなり広い部屋でここが女性メンバーの部屋らしい


早速と言った感じでシャール達が部屋へと入る。一通りの家具は置いてあるようだ。ベッドが四つ、クローゼットが二つ。そしてなにやらベッドの脇に変なものが置いてあった。なんだあれ


気になって近づいてみる。一言で言うと、お姫様ベッドをすごく小さくした様なそんな物だった。赤いクッションが敷いてあり、その厚さたるや10cmぐらいあるんじゃないか? ちょっと前足で触るとめちゃくちゃ肌触りがいい。むぅ、これは良い物ですねぇ


「あ、それは……父上がカールにって」


え!? これ俺の!? まさかとは思ってたが、俺のベッドなのか


「すごーい。ふわふわー」


「なんでカールだけこんなに良い物もらえるの? ずるーい」


ミルファとリプシーが感触を確かめる様に手をクッションに埋めながら口を尖らせている。悪いな。お嬢ちゃん。君達にはまだ早いんだよ


ポテアム皇帝の弱みを知っているからっていうだけなんだが、なんだが強請り集り(ゆすりたかり)のようで申し訳ない気もする


放っておいたらいつまでも見ているシャール達を強引に部屋から追い出す。正面の通路には向かい合う形で部屋がある。こちらはそのうち使うかもしれないがひとまずは空き室だ






 一階に戻るとリビングへと入り、全員が席に着く。背の高いテーブルと椅子なので俺からは皆の顔が見えなかったのだが、レオンが俺を抱きかかえるとテーブルの奥に併設された台の上に乗せてくれた。ちょうどテーブルの上全体が見渡せる。というかこれお誕生日席じゃねえか


「カールはここです」


なぜか上座のお誕生日席に置かれた俺からは右にシャール、エルロッテ、ミルファ、リプシーが座り、その向かいにレオン、シュナイダー、シグル、オミロが座っている


「どうでしたか?」


席に座りながらレオンが皆に尋ねる


「とても素晴らしいです。でもこんな場所をお貸ししてもらって本当に良いのですか? 家具も用意して頂いて」


「ええ、もちろんです。私一人で使っても寂しいだけですし」


シャールの質問にレオンが笑って答える。確かに俺たちが来ないとなると、この大きい屋敷にレオンとシュナイダーだけになってしまう


「本来は改修も自分達でやるはずだったのですが、この事を知った兄が代わりに出してくれました」


「お兄様? アーナス皇子ですか?」


レオンには兄妹が三人いる。長男のアーナス皇子は今年で十八歳になる。次期皇帝という事もあり、日々政務に追われているようだ。後は姉のサフィア皇女がいるらしい。十六歳だそうだ。見たことないけど綺麗なんだろうな。なんせ皇女だし


ふと、皇女という言葉に何かを思い出しそうになるが、それが何なのかがわからない


「どうかしましたか?」


何かを思い出しそうだったので考えているとシャールが心配して声をかけてきてくれた


(いや、なんでもない。なんか忘れてる事があったような気がしただけ)


「そうですか。思い出したら教えてくださいね」


(うん)


「折角なんだから全部直してくれりゃよかったのになー」


シグルが口を尖らせながら言った


「ばか! ここまでしてくれただけでも感謝しなさいよ!」


リプシーがそれを咎める


「でもよー」


「全てを改修してしまうと手伝った事が父上にバレてしまいますからね。元々この改修は私がするべきだったのですが、それを負担してくれたんです。その程度であればバレませんし」


なるほど、要はそういう資金繰りも修行の内ってことなのかな


「それでは、これからの事を少し話し合いましょう」


「まずは何すればいいの?」


オミロは目を輝かせながら身を乗り出す。子供達は新しい秘密基地を与えられてテンションが上がってるのだろう


「えっと、まずは一緒に暮らしていく上でのルールとか決めましょうか」


親しき中にも礼儀ありってことか


「それは重要だと思います。シャール様は元より、レオン様に何かあったら困ります」


エルロッテの言葉にシュナイダーも頷く。この二人は一応皇子と王女の護衛役だしな


「私はそこまで気にしていないけれど、仲間外れは嫌よ?」


「まずは、そもそもなのですが」


レオンが言うには今回の件に関して、ポテアム皇帝からいくつかの約束事が出されているらしい


1.カイラ捜索・情報収集を行うのが最優先

2.その地にあるもの、出来事はすべてレオンの裁量に任せる

3.資金に関しては元々あるレオンの財産のみとし、皇国からの援助はない。ただし月一回の視察により判断を行う

4.建物の修復や技術者の提供は皇国から無償で行われる(その際に必要な材料のお金は自身で支払う事)

5.治安に関しては、プロケンタスに駐在する皇国軍の新人チームを派遣する(指示はこちらが出す)


以上がそもそものルールらしい


カイラの情報に関しては早々には掴めないだろう。それは皇国としても承知しているとの事だ


なので、ここで求められるのは、この廃墟と化した集落の再建がレオンにできるかどうかってところなんじゃないだろうか。結構ハードモードな気がするが


その後の話し合いで更にローカルルールが決められた


食事は可能な限り皆で一緒にとか、一人で決めずに皆に相談する事はまあいいとして


エルロッテとシュナイダーが強く推してきたのが、外出する際には必ず二人のどちらかを連れて行く事だった


護衛なしで出歩くのはまずいしな。それは絶対条件なんだろう


あとは風呂の時間とか家事の分担を決めた


で、明日からだが、二手に分かれて行動するらしい


俺、シャール、シュナイダー、リプシー、シグルで依頼をこなしながら情報を集め


レオン、エルロッテ、ミルファ、オミロで廃墟の片付けをするらしい


とはいえ、課題は山積みだ。まずはこの廃墟をどうするかだ。直すには直すが今いるメンバーだけなら正直直さなくてもいい気がする。それに金ないっぽいし。人を誘致するような何かがあればいいけど、そういうのもない


で、金もないと。依頼をこなして稼ぐ感じだろうけど、メンバーが生活するお金は稼げても改修するほどのお金は稼げないだろう。なにせこの豪邸だ。普通の一軒家を直すのとはわけが違う


一番の問題はカイラ捜索だ。そもそもどうすればいいのかがさっぱりわからん


うーん、前途多難だ



説明ばかりになってしまいました。。約束事を箇条書きで書いておいてなんですが・・私自身、約束事を守って書けるかが心配です。適当に流して頂けると助かります。思い出したように持ち出すかもしれませんが・・

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