3話
よろしくお願いします
翌日、夜でも朝でもない、白さが残るような町中に少年少女と一匹の犬が集まっていた
皆が寝静まっている明け方にレオンがこっそりと宿屋にやって来て俺を抱きかかえて連れてきたのだ。もはや拉致誘拐なんじゃないだろうか
「みんな集まったな」
相変わらず偉そうにシグルが皆に尋ねると、全員が神妙な面持ちで頷いた
「いいか、敵は残党とはいえ油断したら駄目だぞ? 町の安全を守るための重要な任務なんだからな。俺たちは正義のスターアビシオンだ。規則を忘れずに……」
隊長が士気を上げる為に演説を始める
「朝ごはんは何持ってきたの?」
「えっとね。パンとりんごと……水もあるよ!」
「すごいや! 何も食べてないからお腹空いちゃった」
リプシーとオミロは朝ごはんが気になる様子だ
「おい! 正義の味方なんだからちゃんとしろよ!」
「ね、ねえ、早く行こうよ。遅くなるとお母さんが心配するし」
ミルファは帰りの心配をしているようだ。遅くなって怒られたら怖いもんな
「よ、よし! それじゃあ、しゅっぱーつ」
「「「おー!」」」
なんだかんだ言いつつ、門兵とかに見つかって外に出られないんじゃないかと楽観視してた時期が俺にもありました
そんな期待はあっけなく覆されるわけで。お前らどっから出るんだよとツッコみたくなるような道なき道を通され、気が付けば外に出ていた
いいのか、これは?
まぁ、子供一人くぐれるかどうかという抜け穴だったので、大人は通れないだろう。一番年上のレオンは華奢な体格なので問題なかったが、シグルのお腹がつっかえて泣きそうになってたのは見なかったことにしよう
『お出かけ?』
『どこいくの?』
くっついてきたユグラシル達も興味深々のようだ
(悪の組織を倒しにいくんだってさ)
『わぁー』
『私達に掛かればそんなの余裕だよね』
やめてくれ。お前らが暴れたら悪の組織どころじゃなくなる
とはいえ、ちょっと期待しているのも事実だ。子供だけではさすがに危険だという事は理解してる。それでもこうして楽観視しているのはユグラシルの存在があるからだ。いざとなればユグラシルにお願いして一網打尽にしてもらうつもりなのだ
『でも、僕たち魔法つかえないよ?』
『そうだね使えないね』
……はい?
『僕らにはカールがいるから余裕だね』
『余裕だね』
(いや、ちょっと待ってください。魔法使えないの? なんで? すごいの使えてたじゃん)
『森から離れてるから』
『魔素が補充できないから』
(うそでしょ…… じゃあ、何かあっても助けてもらえない?)
『カールが僕らを助けるんだよ?』
『護るんだよ?』
まじかよ!!!
いきなり雲行きが怪しくなってきた
「この辺で休憩するぞ!」
「やったー!」
「お腹空いちゃった!」
ピクニックのような雰囲気で道中にある古ぼけた塔跡で朝ごはんを食べる
「まずはオミロが監視役な!」
「えーーー! 僕も食べたいよ!」
「馬鹿っ!こういうときが一番あぶないんだよ!」
「だってぇ」
「僕が周りを見張ってるよ。オミロもご飯食べていいよ」
レオンが塔の入口に立ち外を眺める
「やったー! 早く食べよう!」
「ちょっと! 慌てないでよ! 今出すから!」
楽しそうで何よりである。で、俺の飯は?
「はい、シグルの分。こっちがオミロ」
リプシーがお母さんの様に甲斐甲斐しく世話をする。当然俺の飯はない。くそ!
ないものはしょうがないのでレオンの方へと行き監視を手伝ってあげることにした
「はい」
ふと目の前にパンの切れ端が差し出された
おおお! レオン! 心の友よ!
「リプシー。カールのご飯はないよね?」
俺が貪るようにパンに食らいつくとレオンがリプシーに尋ねた。リプシーは手を口に当てながら思い出したかのように目を見開く
「忘れちゃった……」
「そっか。大丈夫、僕の分あげてるから」
「わ、私のもあげる」
ミルファもくれた。いい子だ。可愛いな
食事を一通り終えると、シグル達は学校の話で花を咲かせているようだ。学校といっても話の内容から察するに寺子屋みたいな所らしい
この国では義務教育のようなものはない。なので子供たちは親の手伝いをしたり、たまに大人たちがボランティアで勉強を教えてあげるようだ
他愛もない話がひと段落したところで再び洞窟へと歩き出す
ちなみに後ろから隠れてついてくる男がいるのだが、匂いからしてシュナイダーのような気がする。もしもの為にとレオンが連れてきたのだろうか。あんたも大変だな
思ったよりも早く洞窟の前へと到着した。大人達と違い体力があり余っているのか、途中駆けだしたりするのだから当然と言えば当然か。後ろからは悲鳴のような喘ぎが聞こえた気がする。頑張れシュナイダー
多くの人が踏み荒らした跡が生々しく残っている。ここにいた怪しい集団を掃討するために皇国軍が踏み荒らした後だと推測できる
「ここが悪の組織の住処だな」
先ほどまでのピクニック気分はどこかにいったのだろう、シグルが低く呟いた
「こ、こわいね」
ミルファはリプシーの服の袖を引っ張りながら身を隠すように立っている
「大丈夫だ! なにかあったら助けてやる! いくぞ!」
何気にシグルは男らしい事を言う
中に入ると子供達はそれぞれの腕を取り合うように身を寄せながら奥へと進む。先頭はレオンとシグルで最後尾には俺がいる。正しく言うと最後尾はシュナイダーだ。大分離れた位置からこちらに気づかれないようについてきている
洞窟の壁にはところどころに剣で切り付けたような跡が残っており、皇国軍と怪しげな集団との間に戦闘があったと想像させられる
前にレオン達と合流したポイントへとやってくると全員の足が止まった
「おい! これ!」
部屋の先の通路を見ながらシグルが興奮した声で叫ぶ
「すごい。なにこれ」
「どうなってるの?」
通路は黒く焼け焦げ、明らかに他の通路とは違う様相をしていた。俺とレオンはそれがシャールの仕業だという事は知っているが、他の子供たちは知らない
「きっと悪い魔法使いがやったんだ……」
「怖いよ……」
「これは、きっと古代魔法ですね」
通路の壁に近づきオミロがなんか言い始めた
「古代魔法?」
リプシーは恐る恐る聞き返す
「ええ、本で読んだことがあります。かつて神々から与えられし禁断の魔法があると。それが古代魔法です。きっと悪の組織はそれを復活させて世界を支配しようとしたんでしょう」
なんてこった。シャールめ。そんなことをしようとしてたのか!
「私達の町はどうなっちゃうの!?」
「恐らくは壊滅するでしょうね……」
ミルファは涙目になり、その問いにオミロが落胆する様に答えた
「そんな……」
「ばか! それを止める為に俺達、スターアビシオンは来たんだろ! 俺達が止めるんだ!」
禁じられた魔法の封印を解いた邪悪な魔法使いを倒す。その思いを胸に四人は震えながらも足を踏み出した
「これってシャールさんがやったんだよね? シャールさんって悪い魔法使いなの?」
レオンは困惑しながらこちらを見つめてくる。頼むよ最年長




