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異世界冒犬譚  作者: さくら
夢見る乙女が描く未来
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10話

この章はあと数話で終わらせる予定です。よろしくお願いします

 デリンの家を訪れた俺たちはその後、チェスタークの町に戻り宿を借りた


いつもは全員同室なのだが、大部屋が空いていない事、宿泊客が少ない事、全員が一人で考えたいという事でバラバラに部屋を借りている


俺とマニーズは部屋に入りベッドの上で寝転がっている。いつもは俺の寝床用に布を敷いてくれてくれるのだが、今日はマニーズがベッドに来て欲しいと言うので添い寝中だ。モテる男はつらいぜ


わらを布のシーツで包んだベッドは思った以上にふかふかだった。もっとちくちくするのかと思っていたのだが、それは偏見だったらしい。たまたまだろうか?というか、普段は固い地面だしなぁ


俺は足を投げ出し顎をベッドに付け、うつ伏せの状態でこの至福の時間を過ごす


「幸せってなんだろうね……」


ふと頭の上の方から声がし、マニーズが俺を抱きしめる


暖かい



幸せねぇ。デリンの事を言っているのだろう


夢と日記をつなげて考えると、彼は冒険者になりたくて村を出た。念願の冒険者になって、好きな人と結婚して子供もできた。幸せだっただろう。だが、友達と思ってたやつに殺された。不幸せだったろう


彼の人生は幸せか、不幸せか


「私は村に居る時、自分は不幸だなって思ってた。冒険者に慣れればいろんな世界が見れて、体験した事のない事もいっぱいあるんだろうなって……それがやれたら幸せなんだろうなって思ってた。でも違うのかな……」


むぅ、運が良いこととか巡り合わせが良い事が幸せなら、デリンは不幸せだったんだろうな


「家族か……お父さん心配してるかな」


そういや、マニーズの事は知っているようで知らないな


「カールには話してないけどね。私、家を飛び出して冒険者になったんだ」


まさかの家出少女


「毎日毎日、畑仕事ばっかり手伝わされてさ。もっと世界はひろいんだ!って……」


どこか遠くを見るような目は寂しさが滲み出ていた



——ッコンコン!



「あ、はい!」


ドアのノックでマニーズは飛び起きる


「休んでるところすまないな。ちょっといいかな?」


ドアを開けるとデルフィンとネリーが入ってきた


「どうしたんです?」


「今、ネリーと話合っててな。ワルドを探そうと思う」


「え!?」


マニーズはネリーを見るが彼女は俯いたままだ


「なにも見つけて復讐しようってわけじゃないさ。でも、このままじゃあたしらが納得いかない」


「生きているかどうかもわからないけど、どうなったのかは知っておきたい。そのうえでこの剣は元の場所に戻そうって話になったの」


ネリーは俯いたまま淡々と話す


「マニーズにも話しておこうと思ってな」


「私は……」


少し悩むマニーズだったが答えはすぐに出た


「私も手伝います」


「いいのか?」


「はい。私も気になるし……それに何もしないでいると幸せってなんだろうとか……色々考えちゃうから」


「そうか、よし、じゃあ、今日はこのまま休んで明日からはワルドの捜索をしよう」


「はい、でもアテはあるんですか?」


「ああ、実はさっき酒場に行ったんだが、デリンの事を知っていた爺さんが居たんだ。デリンがどうなったのかは知らないらしいが、仲間の事は知ってた。ワルドはスデンシュバルツの出身らしい」


「スデンシュバルツ……盗賊団があるところですね」


「今は落ちぶれてるらしいけどな。行って見れば何かわかるかもしれない」


「わかりました」


三人はお互いの顔を見合わせ大きく頷いた



*********************************************



 スデンシュバルツはセントラルロートから南西方面にある地方で大きな湖の畔に首都リーベがある


かつては盗賊団、暗殺集団が町を支配していたが、今ではどちらの集団も衰退してしまっているらしい。いわゆる荒くれ共が住む町らしく、治安はあまり良くはない。


オストヴァイスからは馬車で七日ほどで到着した


大きな石の壁で町は囲まれており門前では兵士が警備をしているのはシュレーダーと変わらない、違うのは対応の差か。特にこちらは問題ないはずなのだが、中々町に入れさせようとしなかったのだ、後から聞いたが賄賂を寄越せってことだったらしい。デルフィンが相手をしていたので結局は賄賂を渡さなくても入れてもらえたのだが……つまりはそういう町ってことらしい


街に入ると入り組んだ道と至る所に橋が掛けられている。覗き込むと下は用水路になっているようだ


まずは情報収集をしようと酒場に行くと、男共から三人に舐めるような視線が浴びせられる


「ったく、これだから……」


デルフィンは吐き捨てる様に言った


「騒ぎ起こさないでよね……」


ネリーがそんなデルフィンを窘める様に耳打ちする


「わかってるよ」


肩をすくませカウンターへと歩く


「なんか飲むのかい?」


カウンターに行くと恰幅の良いおばちゃんが三人を見ながら訪ねる


「ワルドって人知ってるかい?」


デルフィンは早速情報を聞こうとする


「飲まないなら他所行っておくれ」


「エール三つ」


「毎度。ワルドねぇ……マードックならなんか知ってるかもね……マードック! 聞きたい事があんだけど!」


おばちゃんは大きい声で店の隅まで聞こえる様に叫んだ


「ああん?なんだよ。聞きたいことって……」


隅のテーブルからのそりと大柄な男が立ち上がり近づいてくる。背丈でなく腹回りも大柄のようだ


「この人がワルドについて知りたがってるんだよ」


「ワルド……? ああ、あいつか。ふーん、それで?」


マードックはにやにやしながら三人を品定めする様に見た


「知ってることがあるなら教えて欲しい」


「おいおい、タダは頂けねぇな。そうだな……5000ゴールドでどうだ?」


ずいぶん吹っかけてきたな


「払えねえんならお前らが相手してくれればタダで教えてやってもいいぜ? へへへ」


「エール一杯だ。それが無理ならお望み通り体で払ってやるよ……表でな」


デルフィンは普段よりもドスの利いた声で睨みつける。ネリーやマニーズと違って凄んだデルフィンは迫力がある


「じょ、冗談だ……良いぜ。エール一杯で手を打とうじゃねえか。どうせ大したこと知ってるわけでもねえしな」


知らないのかよ!


「ワルドか……あいつはここの町に住んでたんだが、いつだったか冒険者になるとか言って出て行っちまったな。それからしばらくして女連れて戻って来やがってよ。居付いたと思ったらまた姿見えなくなっちまったな。そのあとは知らねえ」


冒険者になるって言ってデリンと知り合ったのだろうか、デリンが結婚してウーリーとここに戻って来て……で、デリンのところに再度向かったと……その後が聞きたいんだが肝心なところを知らないらしい


「なんだ? ワルドの事か? あいつならその後またひょっこり戻って来やがったぜ?」


俺たちの話を聞いていたカウンターの男が話に入ってくる


「そうなのか? 俺は知らねえな」


「この世の終わりみたいな顔して帰ってきたと思ったら、ふらっとどっか行っちまったらしいぜ?」


「どこに行ったのかわかるか?」


デルフィンがカウンターの男に掴みかかりそうになるのをネリーが静止する


「お? おお、なんでもジルベストルの方に行ったって話は聞いたが……どっこに居るのかまではわからねぇな。今頃なにしてんだかなぁ?」


デルフィンはカウンターの男が話し終わると、ネリーとマニーズの方に視線を向けると二人は頷く


「ありがとうよ。おばちゃんさっきのエールも二人にくれてやってくれ」


そう言いながらカウンターに代金を置き酒場を出た



「ジルベストルまではここから三日程度だな」


酒場を出ると三人は輪になって話し合う


なんで俺を囲むんですかね?


「早速行きましょ」


「そうですね。すぐ出発しますか? それとも準備をして明日?」


「明日にしよう。今日はここで宿を取って準備して明日出発だ」


確認が終わると俺たちは宿屋へと向かった


ちなみに部屋はいつも通り三人同じになった



*********************************************



 ジルベストルはセントラルロートの南。スデンシュバルツからは東に位置する。


この地方の大半は森に覆われており、森深くは古代ドワーフの遺跡が多数あるらしい。古代ドワーフはその高度な技術で仕掛けが至る所にあるので危険度が高い。その為、ジルベストルの南の奥深くは未調査の遺跡で溢れている


首都メーファは緑豊かで林業が盛んのようだ。町を歩いているとどこからともなく鳥の鳴き声が聞こえ、家は木造が多く温かみを感じる。自然豊かな街並みは先日まで居たリーベとは正反対の印象を受けた


正直こっちの方が居心地はいい


町に到着した俺達はその足で酒場へと向かいワルドの事について尋ねる。やはり情報収集といえば酒場が基本だ。昼間から酒を飲んでいる人は多いのだが、仕事はしているんだろうか?といらぬ心配をしてしまう


「ワルド? 知らねえな」


「ワルドって能無しガイストのとこの倅じゃねえか?」


「あー、あいつのとこか。いつの間にかいなくなってたなそういやぁ」


「そういや、南の遺跡に変な奴が住み着いたとか聞いたが」


「南の遺跡? あんなところに住む奴がいるのかよ。無理だろ? とっくにくたばってるだろ」


ワルドの事を聞いてみると散々な言われようだった


結局、それ以上の情報は得られなかったので、南の遺跡に関して調べることにした


メーファから南に延びている街道を歩くこと一時間


森の中にひっそりと佇む遺跡があった。遺跡といっても小さな石造りの監視台みたいな感じだ。ここも地下に医籍が広がっているのだろうか


どんな罠が待ち受けているかわからない、噂ではドワーフの遺跡の罠はかなり高度で危険が高いらしい


正直行きたくなかったのだが、それは杞憂に終わった


入口付近に生活感があった。一目見てそこで人が暮らしているのがわかる。遺跡の中ではなく、遺跡の入口を雨避けとして生活しているのだろう


それに気づいた三人は身を隠し様子を伺う


数十分ほど入口の様子を眺めていた時にその男は塔の裏手から姿を現した

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