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異世界冒犬譚  作者: さくら
夢見る乙女が描く未来
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11話

皆さん結構な更新頻度で書かれていますよね。すらすら書ければ・・

ない才能を言っても仕方ないのでマイペースに頑張りたいと思います。

宜しくお願いします

 浮浪者。この言葉が見事に当てはまるその男は髪は乱れつやもなく垢で濁った地肌は遠目からでも不快感を感じる。正直近寄りたくない


男は挙動不審に辺りを見渡すと遺跡の入口へと入っていった


三人は男が見えなくなると、遺跡へと近づき中を覗く。男は入口を背にしながら何かを食べているようだった


「あんたがワルドか?」


前触れもなくデルフィンが姿をさらし男に尋ねた


「——っひ!?」


男は鞭で叩かれたように体を硬直させ、体を震わせながらこちらを見た


近くで見るとそのみすぼらしさは目を反らしたくなるほどの物だった


「だ、誰だ? おまえら?」


「質問に答えな。あんたがワルドか?」


デルフィンは持っていた剣に手を掛ける


「そ、そうだ! 頼むから殺さないでくれ!」


見つけた。こいつがワルドだ


「デリンを知っているな?」


「——っひいぃ! お、俺は知らねえ!」


「嘘! あなたは知っているはずです!」


隠れて様子を見ていたネリーが飛び出した


「知らねえ……俺は知らねえ」


「あなたがデリンを殺したんですよね?」


「違う! 俺は悪くない! あいつが……ウーリーが悪いんだ!」


「知っていることをすべて話しな……」


デルフィンは男を睨みつけ、ワルドがデリンを殺したあの剣を見せつけた


「そ、それは……」


なぜそれがここにあるのか。男は眼を見開き瞬きをすることもなく剣を凝視している


「私達はこの剣をフンダート遺跡で見つけました。それから夢を見る様になったんです。デリンの夢を。そしてそこにあなたも出てきました」


「……」


ネリーが話しかけるが男は剣から目を反らそうとはしない


「この剣は元に戻します。ですが、あなたの罪を聞き届けない限り私達の安寧も訪れないのです。素直にすべてを話してください」


暫くの沈黙が流れる


「デリンが……あいつがすべてを奪いやがった……ベレッタを……だから殺したんだ……そうすればベレッタは過ちに気づいて俺と幸せになるはずだったんだ! なのに、なのにウーリーの野郎が!! ベレッタを殺しちまいやがった! ……ううっ……っひ」


ワルドは嗚咽を流して崩れ落ちる


こいつは何を言ってるのだろうか


完全にイカれてる思考の持ち主だ。デリンが居なくなればベレッタがお前に振り向いてくれるとか、どんだけ頭がお花畑なんだよ


「信じられない……あなたの勝手な思い込みでデリンとベレッタの幸せを壊したんですか!?」


「違う! ベレッタは俺と一緒になるべきだったんだ! それなのにデリンとウーリーがなにもかもを奪っていったんだ!」


あまりの身勝手な言葉にマニーズが責め立てるが、もはや返ってくる言葉は意味不明だ


「お、お前らも奪っていくんだな……俺から何もかも! そうだ! お前らのせいだ。俺は悪くない!」


壊れたか?


男の身勝手さにネリーとマニーズは開いた口が塞がらないといった状態だった


だが、デルフィンだけは違った


「リーベでベレッタを襲ったのもお前か……?」


淡々と喋るデルフィンだがその言葉には抑えきれない怒りを感じる


だが、リーベで襲ったとはなんのことだ? 三人の夢の話で一度も出てきてないぞ?


「——っ!? なんでお前が……!?」


「答えろ」


「ひ、ひひ、そうだ。ベレッタはずっと俺にそうしてもらいたくて待っていたのさ。だからあいつが一人になるのを見計らって襲ってやったんだ! なのにあの女、抵抗しやがって……あの時、あの女が抵抗しなければ今頃俺とベレッタは……!?」


——ッガス!


鈍い音とともに男の腕が地面に落ちる


「ひっ!!!?? ひぃぃぃぃぃ!!! う、腕が……痛てぇええよおお!!!」


「殺してやる」


「デルフィン!? なにしてるの!?」


男は痛みで傍にのたうち回る


突然のデルフィンの行動にネリーとマニーズが驚き止めようとする。だが剣先は容赦なく男に襲い掛かった


「ぎゃあああああ!!!!!」


「貴様が!!! 仲間だと思っていたのに!!! カルネンで助けたときも!」


燃え上がるような怒りをその顔と言葉に表し、何度も何度も両手で剣を男に打ち付ける


仇を打つような形相で、ただひたすらに何度も剣を振り下ろすデルフィンに気圧されてその場にいる誰もが身動き一つ取れなかった


痛みに叫ぶ男も次第にその声が聞こえなくなる。だが、それでも剣を振り下ろす事を止めない


「っ!? デルフィンやめて!!」


我に返ったネリーが後ろからデルフィンを羽交い絞めにして止めようとする


マニーズと二人掛りでようやくデルフィンは動きを止めた


「ひひっ! やった、やったぞ! 仇はとった! これでベレッタもコリンも……ふふ……うふう……ひ……いひひひ! あーははははははははは!」


デルフィンは気がふれたような声を上げ、目の前の先ほどまで人であった塊をみて笑い続けていた



*********************************************



 あの後、気が狂ったような笑い声を上げ続けたデルフィンは糸が切れた人形の様に崩れ落ちてしまった。マニーズと俺はメーファに戻り馬車を借りるとデルフィンを荷台に乗せその場を離れた。あの惨殺現場をそのままにしといていいんだろうかと心配したが、ネリーもマニーズも何も言わず、逃げる様にセントラルロートに帰ってきた


セントラルロートについた後、デルフィンの意識は戻ったがその様子はもはや以前の彼女のソレではなかった。意味不明な言葉を繰り返し、時折癇癪を起こし暴れるのだ。治癒士もお手上げらしい


ネリーとデルフィンと別れた俺たちは依頼にも手が付かず数日を過ごした


三日程経ち、俺たちの部屋にネリーが訪れた


久しぶりにみたネリーは顔もやつれ、かつての優しい面影は身を潜めていた


「私達、故郷に帰る事にしたわ」


酒場で話す光景は久しぶりだったが、そこにあのデルフィンはいない


「……」


マニーズは何も答えられず目を伏せたままだった


「デルフィンは……もう元には戻らないかもしれない……私もこれ以上冒険者を続けるのも無理だし……家族の元へ帰る事にしたの」


それが妥当な判断かもしれない。ネリー一人でデルフィンの面倒をみるのも限界だろう


「ごめんなさい。私……あんなことになるなんて」


「マニーズが謝る必要ないわ。全員が納得した上での事だもの」


「でも……」


二人の眼には涙が溢れている


「謝るのはこっちよ。マニーズまで巻き込んで……」


「そんなこと……! 私、お二人に声をかけてもらえて嬉しかった……です」


「そう言ってもらえると少しは救われるかな」


そう言ってネリーは弱弱しく微笑む


「また、どこかで会えますよね?」


「そうね。明日にでもここを発つわ。デルフィンのお兄さんが明日迎えにくるはずなの。いつか……生きていればまた会えるわ」


ネリーは涙で溢れたマニーズの手をぎゅっと握ると席を立って出て行った。その姿が見えなくなってもマニーズはその視線を逸らすことはなかった




 部屋に戻った後もマニーズはずっと黙ったままだった


初めてのパーティで胸糞の悪くなる人の過去を見せつけられて、挙句、仲間が精神異常になったとなれば落ち込むのは無理もないか


冒険に危険は付き物とは言え目の前で仲間がこうなるのを目の当たりにすると結構来るものがある


「……カール」


薄暗い中でマニーズが俺を呼んだ


俺はベッドまでのそのそと近づきマニーズを見上げる


ベッドに座り頭から毛布をかぶっているマニーズが手を伸ばしてくる


ベッドに飛び乗り俺が近くに行くと存在に気が付いたマニーズが俺を抱き寄せた


「家に帰ろうかな……」


俺の後頭部に顎を乗せてマニーズは言った


それもありかもしれないな。無理に冒険者を続ける必要もないし、稼げるのも事実だろうが、命には代えられないだろう。帰るから俺をここで捨てられなければの話だが……それは困る


「今回の件で怖くなっちゃった……冒険者を辞めたから安全かって言われると……そんなこともない気もする。でも、だからこそ生きているうちにお母さんやお父さんの傍に居てあげたほうがいいのかなって……」


そうだな。俺も親孝行なんて大してしてあげないまま両親とは死別しちゃったしなぁ


「カールも来てくれる?」


お!? 飼ってくれるならどこへでも行きますぜ?

「くぅ~ん」


無言のまま俺を抱く腕に力が入りマニーズはベッドに倒れ込んだ

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