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異世界冒犬譚  作者: さくら
君が居る意味
123/126

13話

よろしくお願いします

 届かないと思っていたアイリスが、気がつけば目の前にいた


突然の出来事に俺は戸惑う。これはあれか? 噛んでもいいよってことなのだろうか? そんなわけないか


既にアイリスはボロボロと涙を流しているのだ。きっと何かがあったに違いない。その理由まではわからないが……


改心したのだろうか? だとしたらなぜ? やはり女の子だから、噛まれるのが嫌だったとか? そんなわけないか。そもそも届かないってわかってるんだし


そこで気づく。モロ見えだったのに、それを許す女の子がいるわけがないと——


確かにアイリスは俺の事を貶した。だからと言って下着を見ていい理由にはならない。それはそうだ。それが許されるのであれば、「思わずムラっときたので手を出しました」と言って痴漢が許されるのと同義だ


そんな事が許されるはずがない


彼女の下着は白だった。純白と言ってもいい。誰にも汚されていない聖域を俺は勝手に覗いてしまったのだ


正確には言うほど純白ではない、この世界には幾つかの布があるが、下着でよく使われる絹があるのかどうかはわからない。絹でないとすると結構ゴワゴワなんだろうが、着心地はどうなのだろうか?


だが、先ほど見たアイリスの下着は、普段見る布よりも光沢が強かった気がする。と、なるとやはり絹なのだろうか? 絹は肌触りがいいので下着には最適だろう


今までに絹の布って見た事あっただろうか?


などと、考えていると気がつけば俺はアイリスの足の臭いを嗅ぎながら、その聖域へと顔を突っ込みそうになっていた


「カール!!!」

「アイリス様!!」


突如、自分の名が呼ばれた事でドキリと飛び跳ねる。別にやましい事してないのに。いや、してるからびっくりしたのか


ドキドキしながら振り返ると、シャール達が階段を駆け上がってきていた


「アイリス様……」


セレナが泣きじゃくるアイリスに優しく声をかける。その声にアイリスが顔を上げる


「お許しください」


セレナがそう言うと、手のひらをぐっと後ろに振り被る。その動きはまるでスローモーションのように見えた


——ッパン!


乾いた音が響く。頬を打たれたアイリスは唖然と自分の頬を押さえていた


「心配したんですよ!!」


セレナはアイリスに抱きつくと、今度はセレナが泣きじゃくる


「セレナ……私……」


「いいんです。アイリス様がこうして戻ってきてくれたのであれば……」


その光景を俺も唖然と見つめる。そもそも何が起きているのかがわからない。セレナとアイリスは知り合いだったのか? そもそもなんでアイリスはセレナやシャールを殺そうとしたのだろうか? 誰か説明してほしい


わからないなら聞けばいいじゃないという事で、説明を求めるように後ろを振り向く。シャールやセイファルなら事情を知っているはずだ


後ろを振り向いた先は真っ暗だった


「カール!! 無事でよかった……」


シャールに抱き抱えられる。そして、次の瞬間無数の人に体を撫で回されるという恥辱を受けた


「カール!!」

「さすがは聖獣様ってか!?」

「カールがいなかったら、どうなってたか……」


みんなが思い思いに俺の体を弄る



『なんということを……』


その声に全員が一点を見つめる。その先にはアカリウムがいた


「アカリウム様。私は、私はやはりこの世界を……この世界に住む人々を殺す事はできません」


アイリスが身を乗り出す。だが、アカリウムから返事はない


「アカリウム様。たしかに我ら人は愚かです。ですが、そんな人だからこそ、歴史から学び、そして生かす事ができます。どうか、もう一度我々にチャンスをください」


「もちろん、私達も手伝うわよ?」


見れば、勇者達もいた。その姿はボロボロではあるが、瞳からは強い意志を感じさせる


「追いついたぞ! アカリウム!」


アカリウムを追ってマグナスも現れた


『どうやら私が間違っていたようですね……』


突然の懺悔に全員が驚く。だが、それと同時に安堵にも似た、ため息がこぼれ落ちる。こうして戦い傷つきはしたが無駄ではなかったのだ


命を懸けて戦う姿を示したことで、アカリウムは考えを改めようとしているのだ


「アカリウム。間違いは誰でも犯す。そこに人も神もない。大切なのはその失敗を糧にどう未来を紡ぐかだ」


『失敗を糧に……そうですね』


誰もが失敗はする。だが、言い換えれば誰もが成功もするのだ。諦めさえしなければ。ここにいる全員が明るい未来を作る。その強い決意をもっているのだ


『中途半端に残そうとした私が愚かだったのですね』


「アカリウム?」


『全部壊しましょう』


アカリウムはそう言うと玉座の上に漂う光の元へと近づく。アイリスが放とうとしていた魔法がまだそこにあったのだ


「何をする!?」


『私の大切な世界に紛れ込んだ害虫の駆除にも失敗し、選ばれた人間達だけで創生を果たそうと思いましたが……もはや手遅れのようでしたね。どうやら私もまだ甘かった』


光の玉は次第に大きくなる


「何をする気だ! アカリウム!!」


『曲がりなりにも私が育てた世界。私も傷つく覚悟が足りなかったという事です』


アカリウムはにっこりと笑う。そしてその姿は霧散し、光の玉へと吸い込まれた


「アカリウム!!! っく!!」


マグナスが慌てるように近づく


「な、なにが……」


その光景を眺めていたシャールが呟いた


『なんてことを……』


セイファルが顔を青褪めさせながら言う


「セイファル様。一体、どういうことでしょうか?」


事態を飲み込めないシャールがセイファルに尋ねる


『あの魔法はアイリスがその力を失った事で、止まっていた。それをアカリウム様……いや、アカリウムが自らの魂で再度動かし始めたのじゃ』


「つまり……?」


レオンがごくりと唾を飲み込む


『この世界は無に帰る』


世界崩壊へのカウンドダウンが告げられた




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