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異世界冒犬譚  作者: さくら
夢見る乙女が描く未来
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8話

8話になります

 「あああああああぁぁぁ!!!」


静けさが辺りを支配していた宿屋の一室で叫び声が響く


デルフィンは今起きた事が夢なのか現実なのかもわからず叫びながら飛び起きた。目覚めてもなおぞっとする感情が体中を蝕むような感覚で体は汗で滴り、目からは涙が溢れていた


部屋はまだ薄暗い。デルフィンは自分の胸に手を当て、剣が刺さっていないことを確認する



胸を抉られたあの違和感はない。生きている



ほっと一息し辺りを見回すとネリーとマニーズ、それにカールも上半身を起こしこちらを見ていた


「だ、大丈夫?」


薄暗い部屋で顔ははっきりとは見えないがネリーが心配そうに声をかけてきた


「あ、ああ。大丈夫……」


「でも、すごかったよ?どうかしたの?」


ネリーは優しい子でいつもデルフィンの事を考えてくれる。だが、それが今は煩わしかった


「何か悩み事とかあるの?」


「なんでもないっていってる!!」


なんでこんな言い方をしたのかデルフィンは自分でもわからなかった


「……なによ」


「え?」


「大体にしてデルフィンの様子がおかしいのが悪いんでしょ!! 心配してるのにその言い方はないじゃない!!」


普段ネリーが声を荒げることはない。というかデルフィンは見たことがない。あまりにも突然の叱責にデルフィンは眼を大きく広げネリーの方を見る


「なんだよ……ネリーには関係ないだろ!!」


「関係なくないわよ! あの剣にしたってそう! 最初は売るとか言ってたくせにいきなり売らないとかなに考えてるの! それで私を殺そうとでも思ってるの!?」


何をいっているのだネリーは


先ほどの夢がフラッシュバックする


「あたしがネリーを裏切るとでも言うのかい!?」


「いい加減にしてください!」


見かねたマニーズが叫んだ


「マニーズは黙ってて!!」


「黙ってられません! なら私をその剣で刺すんですか!?」



*********************************************



 最悪の目覚めだった


突如、デルフィンが叫び声をあげて目を覚ましたかと思ったら、今度は三人で言い争いを始めているのだ。最初はネリーとデルフィンが言い争っていたのだが、そこにマニーズも加わった


というか、デルフィンが誰をあの剣で殺すのか的な話になってるのだが、なんでそうなるんだ?


拡声器のようにぎゃーぎゃー騒いでいる三人はいまだに止まらない。止まるどころかヒートアップしているのではないだろうか……そろそろ苦情きそうだな・・


「ガルルルルル……ワン!!!」


眠りを妨げられたストレスと未だ止む気配のない、がなり声の嵐に思わず吠えてしまった


俺の一声で三人ははっと我に返ったようにこちらを見つめる


「す、すまん……」


「あ、ううん。私こそごめん」


「いえ、私こそ……」


三人は罰が悪そうに俯いた


今度は誰も言葉を発しない


「本当にデルフィンが心配だったの……それなのにあんな言われ方したからカッとなって……」


ネリーが口を開く


「本当にすまない。あたしもカッとなって……」


デルフィンが続いて謝罪をする


「すいません。私も……変な夢を見て怖くなって、それでつい……」


夢? 夢見て怖くなっちゃったのかマニーズは可愛いな。添い寝してやろうか?


「「夢?」」


デルフィンとネリーが綺麗にハモった


「え? あ、はい。すいません子供みたいな言い訳で」


「え、ちょ、ちょっと待って。その夢ってどんな夢?」


ネリーが驚いたように尋ねる。今にも飛び起きてマニーズに飛び掛かりそうな勢いだ


「えっと……その……冒険者の男性になって……それで家族ができて……とても幸せで……でも」


「親友に裏切られるのか?」


マニーズの言葉をデルフィンが遮った。マニーズとネリーは雷に打たれたように驚きデルフィンを見る


ん? 何の話だ? 夢占いか?


「ど、どうして、それを?」


「あたしもみたのさ。その夢を」


「ま、まって! じゃあなに? 三人が同じ夢でも見てるってこと?」


ま、まって! 俺は見てない


「ネリーもそうなんだろ。デリン……この名前知ってるだろ?」


デルフィンの問いにネリーは驚愕した。そしてゆっくりと頷く


「全員が同じ夢……あ! 今、思い出しました」


「どうした?」


今度はデルフィンとネリーがマニーズを見る


「今日の夢。刺された剣……その剣でした」


マニーズは震える手でデルフィンの横を指さす


そこには遺跡から持ち帰ったあの剣が静かに佇んでいた



*********************************************



 今、俺たちは朝食を食べながら話をしているのだが……誰も口に運ぼうとしない。俺はもらったウサギ肉を飲み込み、マニーズをじっと見つめる



べ、別に食べないならくれないかなぁとか思ってないんだからね!



「やっぱり聞けば聞くほど、まったく同じ夢を三人が見ていたって事になるわね」


ネリーが呟いた


「ああ、でもなんでだろう?」


デルフィンがネリーに疑問を投げかける


「その剣にデリンの恨みが残っている……とかでしょうか?」


そう話すマニーズはどこか震えている気がする。たしかにそうだったら怖いよな。呪われた装備じゃん


俺だけその夢とやらを見ていないのだが、三人の話をまとめると


デリンという男になった夢を見た。デリンは冒険者で三人の仲間がいた。その中の一人ベレッタだっけか?と結婚して家を買い子供もできたと。で、しばらくしてからワルドってやつとウーリーって女が訪ねて来て、協力してほしいことがあると。それを手伝ったらワルドが裏切って殺されたってことか


ワルドってやつは実はベレッタの事が好きだったんだけど、それをデリンに奪われたって思い込んでデリンを殺害したのか……クズじゃね?


でも、ウーリーって子と結婚するって矢先になんでそんなことしたんだろうな? ベレッタもその後どうしたんだろうか……子供と二人で夫の帰りを待ったのだろうか?


むぅ、胸糞悪いな


「手放した方がいいのか……?」


三人の話を一人整理しているとデルフィンが呟いた


デルフィンの顔はどこか諦めきれないといったような表情だ


「……」


そして沈黙が再度訪れる


俺からすれば呪われた装備であればさっさと売るべきだと思うのだが


まあ、デルフィンはずいぶんとあの剣にご執心だったからなぁ


でもマニーズとネリーまで思いつめた顔をしているのはなぜだろうか?


「……家を探しましょ」


「「え?」」


ネリーの提案にデルフィンとマニーズが顔を上げ驚愕しながら聞き返した


俺もびっくりした


「家ってデリンの家をか?」


デルフィンの問いにネリーは無言で頷く


「探してどうするんだ?」


「正直、怖いわ。でもあんな終わり方って悲しすぎるよ。せめて、私達で供養してあげられないかなって……」


三度訪れる沈黙


なるほど、感情移入しちゃった系か


「私も……賛成です」


マニーズが口を開いた


「よし、なら決まりだ。探そう。デリンの家を」


こうして三人はデリンの家を探す事を決めた

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