6.学校に来た!①
央世と茉莉の待ち合わせ場所は、都合で時々変わってきた。
現在は、央世と茉莉の家の中間地点——より、茉莉の家側で、学校の方面に近い場所。住宅街のT字路だ。
植え込みや街路樹、住宅のおかげで、日陰もある。そして、人通りも少ないため、ちょうどよかった。
「おっす! マツリ」
「オハヨウゴザイマス、オウセサン。ズイブンオソイデスネ」
央世が懸念した通り、ギギッと首を向けた茉莉は、何やら電子的な声色だった。
「あー……ははは。ちょっとトラブってさ」
ポリポリと頭を搔く央世に、茉莉のジト目が刺さる。
「……ふーん。まぁいいわ。遅刻しちゃうし、行こ」
トスッと自転車に跨り、茉莉は脚に力を入れた。
「おう」
央世は、小走りで並走する。
「で? 今日は何と戦ってきたの? ……あ! まさか、アード?」
「いや、アードは意外と大丈夫そうだった。留守番しとくように言っといたしなー」
「そうなんだ。留守番ねー。なんかちょっと意外。あの感じだと、来たがりそうなのに。ふーん。そっか。……ん? え? じゃあ、何? 何で遅かったわけ?」
「ああ……ほら、近所の北条さんいるだろ? なんか朝っぱらから、変なやつに絡まれてたんだよ」
「あー……。北条さん、大人しそうだもんね。そっか……絡まれてたんだ……。大変だったんだね。あの人、未亡人だっけ。そういうのも関係あるのかなぁ? 色々大変そうとか、近所で噂だよね」
「さーなー。そんな話、詳しく聞く気もないしなー。おばちゃん連中は、噂好きだけどさ。オレは、あーゆーのは好きじゃないしよ」
「まぁおうせは、そうよねー。自分の興味あることしかしないもんね?」
茉莉は、舌でも出さん勢いだった。
「まぁな!」
央世には、そんな皮肉も通じないようで。とても爽やかな返事をしていた。
▽
私立真展学園高等学校。真なる発展を——という理念のもと、創立されたらしい。全校生徒数は約600人ほど。大き過ぎず、小さ過ぎない規模だ。
二人で校門を通り抜け、登校中の生徒たちに紛れながら、駐輪場に自転車を停める。
「ふー……。間に合ったねー……」
茉莉が、カチャリと自転車に鍵を掛けながら、安堵の息を漏らした。
「はっはっ。余裕だって余裕」
央世は、からからと笑う。
「はぁ?! あと5分で予鈴なんだけど?!」
茉莉は、がばっと上半身を起こし、目付き鋭く央世を睨んだ。振り乱したゆるふわロングから、いい香りが周囲に漂っていく。
「マツリは細かいなぁ~」
やれやれといったように、両手のひらを上に向ける央世に——
「おうせがいい加減すぎなだけ!」
茉莉は、もっとやれやれといった様子だ。怒りを通り越して、最早、哀しそうである。
「お? お二人さん、今日も朝から熱いねぇー」
後からやってきて自転車を停めた女子生徒が、二人に声を掛けた。
「はぁ?! 全然熱くなんてないって!」
茉莉は揶揄われて、顔を赤くしていた。
「あはは! またムキになってる」
「んじゃ、オレは行くわー」
だが、央世は意に介した様子もなく、しれっと走って行ってしまった。
「あ!? おうせっ……! くっ……」
茉莉が振り返った時にはすでに、央世は校舎に吸い込まれるところだった。
「ほら、早く行かないとー。旦那様、行っちゃったよぉ?」
「だからー、旦那様とかじゃないからー!」
茉莉は揶揄われながら、校舎に向かって走り出した。




