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双子の適性者

 扉を開いた先で瓜生が見た光景は、おびただしい数の子供が皆筒状の装置に入って、首と両の手、足首に奇妙な輪が掛けられていた。

「ここは何の部屋だろ?」

 あたりを見渡してもその奇怪な光景が広がるばかりで、目の前にいる子供たち以外に人の気配が感じられない。それでも歩みを止めず、先へと進む。気が付けば部屋の端へと到着していて、そこには同じ形状でも一際大きな装置に入った金剛の姿があった。

「っ⁉金剛くん⁉何で此処に…っていうか、何で金剛くんだけこんなに大きな装置に入ってるの⁉」

 慌てた様子の瓜生の傍に二人の女性が近寄って来るのが見えた。

「彼は特別なんだ。」

「貴重な血液個体だし。」

 似た顔をした二人は、背丈に若干の違いがあり、先に声を出した方は、いかにも真面目そうな印象を抱く口調で、長い黒髪と眼鏡をしていた。

「あまり施設の情報を漏らすな。」

 絵に描いたような堅物の女性が軽く見下ろしながら注意する。

「別にいいじゃん、こいつ俺らと同じ適性者みたいだし。」

 一方で、先ほどの女性よりも少しだけ背が低く、短い白髪の女性は、常に頭の後ろに手を回して、笑顔を浮かべて軽く顎を上げながら緩く適当な印象を抱く。

「同じであるかは関係ない。お前の悪い所だ、同類は必ずしも仲間ではない。」

 勝手に会話を繰り広げている二人に瓜生は、金のナイフを右手に警戒態勢を取る。

「わかってるって堅いな~。それよりあんた、名前は?俺、黒夜(くらや)。こっちは妹の白朝(しらさ)。」

「勝手に挨拶をするな!それに僕は、妹じゃなくて弟だ!」

 片方は男性だということを知らされ、瓜生は目を疑った。

「男の人だったんだ…私は瓜生叡。金剛くん…この装置にいる男の子を開放してほしいんだけど…。」

 話し合いで解決できるわけがないことは分かっていたが、一応訊いてみる。

「なら、この装置ぶっ壊せば開放できるぞ。」

「え?」

 質問にすんなりと答える黒夜の姿に思わず拍子抜けする。しかし、瓜生には、引っかかる点があったため、そこを指摘する。

「もし仮にそれが本当だったとして、あなた達にはそれを私に教えるメリットは何も無いよね?どうしてそんなにあっさり…。」

「お前はそこの友達さんと違って、用心深いな。」

 金剛は一体何をされて此処に幽閉されたのか気になるところだが、今は目の前にいる二人の人物に注意を払っていた。

「でも、疑うなら試してみたらいいじゃねえの?」

 黒夜は右手を差し出し、笑顔で提案する。

「僕らは邪魔しないでおくからさ。」

 二人は動きを示さない。この場で暴れても困らないのか、微動だにしない。それが怪しさを助長していた。そこで、瓜生の中の何かが音を立てて千切れた。

「…。」

 瓜生は右手に持っていたナイフを空中に置き、左手に移動させる。そして、一番近くにいた子供の入った装置に突き刺した。すると、破損したのは一部だが、直後に警鐘が鳴り響き、子供に付けられていた輪が締まり、生命活動を停止させた。

「やっぱり罠なんだね。」

 不思議と瓜生に罪悪感は無かった。一人の子供の命を奪ったというのに、本人にその認識が無く、「ただ知らない命が亡くなった。」としか思わなかった。

「ッカハ!あんた、スゲーな。今、あんたのその行動のせいで一人のガキが死んだんだぞ?」

 黒夜は盛大に笑って瓜生の行動を煽る。そして白朝は、一歩下がって、静かに眼鏡を押し上げた。

「もうどうでもいい。私は、友達を助けに来たんだから、見ず知らずの赤の他人にまで気持ちを割く余裕は無いの。」

 既に火傷の痛みも気にならない程瓜生の認知機能は鈍っていた。意識もはっきりとしていない状態で、発言もほぼ無意識であった。

「これは、だいぶ精神がやられているな。」

「相当しんどい目に遭ったんだろうな。」

 この時の瓜生の眼は虚ろとしており、体の重心も安定していない。ナイフを握る力も()もっておらず、今にも意識を失い倒れてもおかしくなかった。

 瓜生は持っていたナイフを逆手持ちに切り替え、刃を少し伸ばし、黒夜に向かって斬りかかる。しかし、真っ黒な盾に防がれてしまい、攻撃は届かなかった。その後、思いきり床を蹴って跳び上がり、空中で体を半回転させ、右足の踵に金の刃を作り、今度は白朝の頭目掛けて足を振り下ろした。

「僕か…。」

 白朝の頭上を盾を構えた黒夜が通り過ぎ、瓜生の攻撃をまた防ぎ、黒夜は空中で後転して着地。その際、瓜生の背中を蹴飛ばし、壁に激突させた。

 黒夜のいた地点には、宙に浮かんだ白い板が在り、それを踏み台にして飛んできたことが推測される。

「いいサポートだ、白朝。」

「次に備えろ馬鹿が。」

 壁の付近に瓜生の存在は確認できず、周囲を警戒する二人の頭上に突然、音もなく金の氷柱のような棘が出現し、落下してきたが、黒夜は持っていた盾で防ぎ、白朝は宙に浮かんだままの板をぶつけて軌道を逸らした。

 棘は破壊されず、形が残ったままであり、互いの防いだ棘が今度は横に飛んで行き、また同じ方法で防ぐが、白朝が逸らした棘は、金剛に向かって飛んで行き、装置にぶつかる寸前で二つの棘は、液体になり、地面を這って二人の足を拘束しようと追いかける。

 黒夜は棘が近くにあった事と、盾が大きく不透明な事もあって、気付いた時には既に、足に冷たい液状の金が纏わりついていた。

「クソッ!動けねえ!」

「だから次に備えろと言っただろ。」

 静かに怒りを露わにし、白朝が黒夜に近づいたその時、黒夜の胸から金色の刃が飛び出した。

「うっそ…全然気づけなかった…。」

 その刃は、床から黒夜の胸に架けて伸びており、その場で倒れる事を許しはしなかった。

 黒い盾は床に落ち、腕が力なく垂れ下がる。そんな黒夜の姿を見た白朝は、表情にこそださなかったが、確かに激昂していた。

 白朝は、空中に幾つもの白い立方体を作り出し、金剛に向かって放った。それらが装置に傷を付けようとした所に、長い金の棒を左手に持った瓜生が姿を現し、全て打ち落として見せた。

「やっと顔出したな。」

「…。」

 相変わらず瓜生は虚ろな眼をしたままで、金の棒を振り回し、白朝の攻撃を防いだり、防御を破壊していた。

「厄介だな…。少し趣向を変えてみようか。」

 そう言った白朝は一つの立方体を瓜生の正面ではなく、瓜生から見て右側に回って金剛の入った装置に飛んできたため、移動して立方体を打ち落とす。その直後に、瓜生の背中に衝撃が走る。

「ほんっと…いいサポートするよね…白朝…。」

「だから次に備えろと言っているだろう。」

 足は拘束され、胸には床から伸びた金が刺さったままの黒夜が、床に落としたはずの盾を手に、瓜生を殴ったのだ。

 金剛の囚われた部屋

実は、血液に適性があるのは非常に稀であり、現時点で確認されているのは金剛だけ。その希少性から、血液に適性を持つ子供を作り出す研究部屋が用意されていて、金剛の遺伝子を利用している。

それと同時に、傷口の回復スピードも研究者の目に止まり、それを職員に移植する研究としても活用されている。

手始めとして、実験体でもある黒夜と白朝に移植しているようだが、至って良好な様子。

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