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0号の遺伝子

 鐵月が避けた結果、弾丸は夕南先生の頭を確かに捉えていたが、当たる寸前で掌で止められてしまう。

「錆びた鉄とは比べ物にならない位痛いな。」

 その手には、少々抉られたような傷と粉々に崩れた白金だけが残っていた。

「全く…銃というやつは、人間が作り出した脅威の一つだね。そうは思わないかい?」

 溜め息交じりに二人に尋ねる。

「それが何だって言うんだ!」

 鐵月は新たに剣を作って斬りかかり、螺茅は二丁の拳銃で再び撃ち続ける。

「君らに会話をするという意思は無いのかい?」

 鐵月の攻撃を避け、螺茅の弾丸を手で受け止めるが、片腕であること、出血が止まらないことで全てを対処することが難しくなっており、遂には、弾丸を止めた時の衝撃で態勢を維持できなくなり、倒れてしまう。

「ダメだ…起き上がることもできない…。負けか…。」

 仰向けで横たわる夕南先生は、天井を見上げて嘆く。たとえ相手がそんな状態であっても、変わらず螺茅は、頭を撃てるように拳銃を向けて近づく。

「あんた、何で能力を二つ持ってる。」

 右手の銃で頭を捉え、左手の銃は下して質問する。観念したのか、螺茅の質問に何の躊躇もなく答え始めた。

「僕は元々、高橋になる予定だったんだけど、さっき鐵月さんが壊した0号(オリジナル)に触れることがあってね、そしたらこうなっていたんだよ。」

 大量の出血のせいか、顔色が徐々に悪くなっていく。表情は笑顔だが、その裏には死が近いことを予見させていた。

「0号ってのは触れただけでその能力を与えんのかよ。」

 相手が動けないこともあって、息と気持ちが落ち着き、自然と螺茅と鐵月の顔は無表情になり、螺茅の口調は淡々としていた。

「触れただけではないかな。厳密には、触れた際に0号(オリジナル)の血が体に入って来てね。そしたら、鈴木の能力も手に入ってしまったのだよ。」

 声色も疲れ切っているように感じられるほど弱弱しくなっていたが、それを悟らせないように口調や顔は少々笑っていた。

「0号は生き物なの?」

 ほんの少しだけ鐵月が焦った様子を見せ、普段よりも声を張り上げて訊いた。

「君が壊したんだろう。(笑)まあいいけど…生きてはいる。ただ、そこに思考をするほどの力はない。生きていながら死んでいると言ってもいい。」

 鐵月自身も何故そんな質問をしたのかわかっていなかった。施設の事はかなり情報を持っていたはずなのに0号(オリジナル)の事を気にした。生き物を手に掛けたことに動揺した。全身から汗が湧き出した。

「鐵月、しっかりしろ。」

 螺茅の一言で一気に落ち着いた。それどころか、憑き物が落ちた様に笑顔になった。

「ねえ、話し終わった?ならさ、早く僕の意識を無くさせてくれない?さっきからずっとしんどくて、早く楽になりたいんだ。」

 辛そうな声色で二人に懇願する夕南先生の頭に向けて、螺茅が引き金を引こうとした直前。鐵月が首を()ね飛ばしていた。

 斬られた首は、螺茅の方へと転がり、足の横を通り過ぎていく。それを確認した螺茅は銃を下ろして鐵月に話し掛ける。

「珍しいな、こうゆうのは嫌がりそうな印象だったんだが。」

「いやね、気が変わったんだ。」

 薄ら笑いを浮かべている鐵月に多少の不信感を覚えつつも、部屋を出ようと螺茅が鐵月に背を向けた瞬間。螺茅の胸には剣の先端が突き出ていた。

「は?おいテメェ、何してやがる。」

 困惑しつつも、痛みと憤りの原因である鐵月の方へと振り返り、銃口を向ける。

「流石に警戒心が強いね。でも、その状態で俺に傷付けんのむずくない?」

 鐵月は螺茅に突き刺した剣を振り上げ、螺茅の意識を奪った。

「ああ…思い出した。全部思い出した。俺は、俺こそが、鐵月灰だ。」

 螺茅の死体を踏んづけて、部屋を後にする。


 男性の意識が無くなったことを確認した瓜生は、立ち上がって自身の右手を見遣る。掌の皮膚がほとんど無く、震えが止まらずにいた。「顔の左側もこうなっているのか。」と思いつつ、ゆっくりと左目を開く。

「…よかった、目は見えてる。」

 覚束無い足取りで階段を降り、廊下を歩く。この先で何が待っているのか、どこに何があるのか一つもわからないが、兎に角足を動かす。

「…痛いなぁ。」

 歩いた際に当たる僅かな空気でも、火傷した顔の左半分と右手には鮮明な痛みが走る。

 男性を倒した後で気付いた事として、冷えて固まった金は回収が可能で、再度使うことが出来る。ただし、男性に押し当てた金は一切回収が出来ず、融解して人体に触れた金は、特異の範疇外と予測を立てた。

 程なくしてB3に到着し、もっと下へ行こうとするも、階段は続いておらず、仕方なしにB3に何があるのか調べて回る。

 まず扉を開けた部屋は、広大な農場だった。季節ごとに旬な作物が立ち並んでいて、それらが同じ空間に存在しているという異様な光景が視界に入る。

「…変な部屋。子供たちが食べる物に困らないよう作られた場所なのかな?」

 気温管理や水やり、更には収穫まで全てが自動で行われていた。

「すごいハイテク…。これだけの設備、どのくらい電力が必要なんだろう…。」

 疑問は消えないが、一先ず部屋を出て、次の扉を開く。

 夕南(ゆうな) (みどり)

年齢 40  適性 なし  パターン 名無し(ネームド)特殊体  変換 触れた物を老化・足から苔(蔓)を生やす

代償 使用した分だけ体組織が劣化

鐵月たちが通う中学で養護教諭をしている先生のクローン。本人は今も学校に居て、施設にまつわる記憶も無い。

変異体高橋の力でクローンの見た目は、推定年齢20代後半になっており、肉体もそれに比例して若返っている。

特異を二つ持ちできたのは改造手術を施されたからであり、当人はそれを自覚していない。

クローンとなる被験体は、施設外の者であれば誰でもよかった。

キャラクターのモデルは存在しておらず、わかりやすい強敵が欲しかっただけ。

因みに、本人は施設と何の(ゆかり)もないただの一般人。

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