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真の意志

 施設に入った螺茅たちの元に銃を持った連中が向かってくる。それに気付き、鐵月は手に刀を作り、握り込む。他の三人は、肩から下げている鞄の口を開け、武器を用意する。岸青は手にサファイアを集めて盾を作り、汐はパチンコを、螺茅は拳銃を取り出した。

「お前、鐵月とか言ったな。敵は出てきたら容赦なく潰せ。いいな。」

「わかった。」

 施設の入り口の階段からしばらくは、三人が丁度横並びになれない程の狭さが続いている。

 螺茅が真っ先に発砲する。それを返すように向かいから銃弾が数倍になって帰ってくる。直後に岸青が飛び出し、その後ろに螺茅を隠す。

 前に出てから、盾をより分厚く、大きくしたため、銃弾は一発も貫通しない。敵の間近まで迫り、盾を蹴り飛ばして後ずさる。

 相手が転倒しているのを確認したら、真っ青な盾は液体になって岸青の手に行き、再び盾になる。先ほどよりも小さく、薄くなっており、鞄の中に入っていく液体も見えた。

 螺茅が起き上がった敵の頭を次々と打ち抜く。道が狭いためか、敵の数も少ない。

 死体を踏み越えて足を進める。すると、扉があり、そこを開けると、ようやく広めの道に出た。

「やっと施設内に来た感じか。」

「もっと明るいところ想像してた~。」

 侵入者が来たというのに、施設内は妙に静まり返っており、最初に出てきた数人以外誰とも出会わない。「おかしくない?なんで俺らに何もしてこないのかな?」

 どうやら、岸青は異変に気付いていたようで、疑問を零す。

「この時間だと、食料の配給班くらいは居てもおかしくないはずなのに…。」

「…お前、ほんとにこの施設の事覚えてるんだな。」

 鐵月の発言に螺茅が反応する。そして、今度は鐵月が疑問を口にする。

「そういえば、皆はどうやってこの施設の事を?」

「それはだな…」

 螺茅が口を開いた途端、突き当りの右から患者衣を着た包帯だらけの男の子が歩いてきた。

「なんだ?」

 岸青が呟くと、男の子は声がした方を向いて無邪気に笑う。その後、笑顔を向けたままどこかへ走り去っていった。

 四人は、男の子を追い、突き当りの左を見る。そこには既に男の子の姿はなかった。

「っ!!これは⁉」

 岸青の声につられて三人が右を見る。そこには、目を覆いたくなるほど大量の患者衣や白衣を着た人達の死体が転がっていた。

「これ…あの子が…?」

「でもあの子、返り血付いてなかったよ⁉」

 動揺する岸青と汐を黙らせるように螺茅が声を出す。

「あのガキは、俺の兄さんだ。」

「っ⁉」

 全員が驚愕する。あの小さな子供が螺茅の兄だという事が誰も信じられなかった。

「俺らは双子で生まれた。だけど、兄さんには適性がなかったんだ。」

「適性!どうしてそれを⁉」

 鐵月には、赤子の頃の記憶があるため、施設の事や特異の事も知っていたが、螺茅は何故知っているのか。

「母さんがな、俺を孤児院から引き取ったことを話してくれたんだよ。それで、”施設(ここ)”がどんな場所なのか気になって密かに調べたんだよ。そしたら、偶然にも俺らの体と関係があったんだよ。だから、岸青と汐にも教えた。」

「なるほど。なら、あの子供がどうして螺茅の兄だと分かったんだ?」

「さんか先輩を付けろ。俺らはお前よりも年上だぞ。」

「え?そうなの?」

「うん。でも俺は、先輩後輩とか気にしないかな。」

「あたしもそんな気にならんし、別にいいよ。」

 施設の事を知った経緯と皆が鐵月よりも年上なこと、螺茅が上下関係を気にしていることを把握した。

「で、質問の答えだが、単に俺が調べた事と照らし合わせただけだ。母さんが俺を引き取る時、俺と似た顔の子供が居たらしく、誰なのか訊いたところ、俺の双子の兄さんだったそうだ。」

「そこで兄の存在が発覚したと…。その調べた事っていうのは?」

「適性がないとどうなるかだ。」

 それを聴いた瞬間、場が凍りついたように誰も何も言わなかった。しかし、先を急ぐ気持ちが出たのか、岸青が口を開く。

「あのさ、進もう?ここで止まってても仕方がないしさ。」

「…そうだな。」

 その後は、ただひたすら黙って歩き続けて、エレベーターに辿り着く。見つけた瞬間に汐が思わず声を上げた。

「やっと下に行ける~」

「いや、ここは使えない。」

「え~何で~。せっかく見つけたのに~。」

 冷静に鐵月に否定され、文句が垂れる。

「エレベーターは、モニタールームで常に監視されてる。見つかってもいいなら別に止めないけど。」

「でも、あたしたち四人いるんだよ?職員も倒せるんじゃないの?」

「職員。(もとい)高橋は、触れたものを劣化させる。たとえそれが金属でも、石でも、人体でも、体に触れただけで錆びたり、崩れたり、腐敗したりする。手を出さない方が賢明かと。」


「おやぁ、どうしてここにぃ?」

 モニタールームにいる男性の元に患者衣の男の子が駆け寄る。

「まさかぁ、一連の騒動ぅ、君のせいかなぁ?」

 男の子を持ち上げ、笑い掛ける。持ち上げられた男の子は、笑いながら腕や足を振り、楽しんでいる様子。

 男の子の手が男性の腕に触れると、男性は笑顔のまま男の子に話し掛ける。

「やはり君はぁ、変異体だねぇ。駄目じゃないぃ、勝手にぃ、抜けだしちゃぁ。」

 男の子は、瞬く間に腐り、異臭を放ち始めた。男性は、「ゴミ箱」と書かれた壁の穴に男の子だった物を入れて、直ぐ横のレバーを下ろした。

「貴重なぁ、変異体だけどぉ、しょうがないよねぇ。」

 そう言って再びモニターに顔を向ける。

「階段を下りてるねぇ、さすがぁ、記憶持ってるだけあるぅ。」


 四人はB1からB2に到着し、明かりが全くないことに気付く。

「何でこんなに暗いわけ?」

「上の階の方がまだ明るかったね。」

「無駄口叩いてねえで先行くぞ。」

 暗さに慣れず、皆誰がどこにいるのかも把握できない状況だった。だが、鐵月が右の壁に触れて、触っている物が単なる壁ではなく、ガラスであることを確認し、刀を振る。

「うわっ!眩し!」

「え?子供?」

 暗い状態が続いたからか、そこまで明るくないはずの光量に目が眩む。

「ここは、適性が見つかった子供を保管しておく部屋。反対の部屋は、まだ適性が見つかっていない子供が居る。」

「気持ちわりいな。こりゃ。」

「この先には、佐藤の収容部屋がある。今度は子供じゃなく、大人がこのぐらいいるから、覚悟はいい?」

 鐵月の呼び掛けに全員が頷く。

「でも、ほんと妙だね。ガラスを割ったのに、この子達微動だにしない。」

「っていうか、部屋のガラス割っても警報とかならないの不自然じゃない?」

「置いて行くぞ?早く来い。」

「ちょっと待ってよー。」

「僕には、君らまで救えるほどの力がない。ほんと悔しいよ。」

 螺茅に返事をした二人の後を一足遅れて鐵月が追いかける。


「力なら、とっくに持ってるくせに…」

 名無し(ネームド)変異体

佐藤、鈴木、高橋にはそれぞれ変異体が存在しており、験体の数が非常に少なく貴重。

佐藤の変異体は、手から熱を吸収する。対象が生物であれば、問答無用で活動を停止させられる。

鈴木の変異体は、足から珊瑚を生やす。ただし、骨格のみを生やすため、ほとんど制御が効かない。

高橋の変異体は、体に触れた物の年齢を固定する。現在では、変異体の力をほぼ全ての職員に流用されているため、個体としては存在していない。

螺茅の兄は、佐藤の変異体だが、高橋の変異体の力に触れてしまい、若返る性質のみが移り、子供の姿をしている。

ちなみに、死体の山を作ったのは、螺茅の兄ではない。

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