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レクイエム双響曲 〜声楽家と刑事のエクソシズム事件簿〜  作者: 路明(ロア)
第1楽章 Kyrie eleison:主よ、あわれみたまえ――血まみれのマリアと不協和音の双響曲

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バディの条件 8

 少女がいきおいよく折れた腕をふり、海東をふり切る。

 門のほうに向かって走りだした。

 

「おいっ、手当て……!」


 海東がもういちど少女の手をつかもうと、追いすがる。

「折ったのか?! 応急処置してやるって!」

 少女が、すばやい動きで躱(かわ)して走り去る。

 敷地から出て数メートルほど追った海東が、ややして少女を見失いため息をついた。



「百メートル何秒だよ、ありゃ。中学生くらいの女子としたらそうとう速いな」



 あっけにとられてそうボヤく。

「陸上でもやってんのか?」

「それより、経緯はともかく警察官が未成年者の腕を骨折させるとか。問題にならないんですか?」

 離れのドアに背をあずけて京也は尋ねた。イライラと腕を組む。


「俺には喉(のど)つかえんくなったら養えとか言ってきたくせに、未成年は加害受けても擁護か」

 海東がおもしろくなさそうに吐き捨てる。


「養えなんて言ってないでしょう。ふつうに問題にならないんですかって聞いてるんです。警察官に厳しい人って一定数いますし」

「おまえが傷害の被害受けてんだし、正当行為で通んだろ。――調査と書類めんどくせぇけど」

 書類仕事なんてやるんだ、と京也は思った。

 海東が腕に巻きっぱなしだったモッズコートをはずして、両手でパンッと広げる。


「あーやっば切り傷ついてる。こういうのも繕(つくろ)えるか?」

「そういうのは業者さんに頼むものなんじゃないんですか? お値段張ると思うから、あたらしいコートを買ったほういいかもしれませんけど」


 京也は答えた。

 モッズコートを両手で広げたまま、海東がこちらを見る。

「いい業者さん知ってっか?」

「……いい加減にしてください。僕はあなたの家事の困りごと相談室じゃないんです」





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