バディの条件 8
少女がいきおいよく折れた腕をふり、海東をふり切る。
門のほうに向かって走りだした。
「おいっ、手当て……!」
海東がもういちど少女の手をつかもうと、追いすがる。
「折ったのか?! 応急処置してやるって!」
少女が、すばやい動きで躱して走り去る。
敷地から出て数メートルほど追った海東が、ややして少女を見失いため息をついた。
「百メートル何秒だよ、ありゃ。中学生くらいの女子としたらそうとう速いな」
あっけにとられてそうボヤく。
「陸上でもやってんのか?」
「それより、経緯はともかく警察官が未成年者の腕を骨折させるとか。問題にならないんですか?」
離れのドアに背をあずけて京也は尋ねた。イライラと腕を組む。
「俺には喉つかえんくなったら養えとか言ってきたくせに、未成年は加害受けても擁護か」
海東がおもしろくなさそうに吐き捨てる。
「養えなんて言ってないでしょう。ふつうに問題にならないんですかって聞いてるんです。警察官に厳しい人って一定数いますし」
「おまえが傷害の被害受けてんだし、正当行為で通んだろ。――調査と書類めんどくせぇけど」
書類仕事なんてやるんだ、と京也は思った。
海東が腕に巻きっぱなしだったモッズコートをはずして、両手でパンッと広げる。
「あーやっば切り傷ついてる。こういうのも繕えるか?」
「そういうのは業者さんに頼むものなんじゃないんですか? お値段張ると思うから、あたらしいコートを買ったほういいかもしれませんけど」
京也は答えた。
モッズコートを両手で広げたまま、海東がこちらを見る。
「いい業者さん知ってっか?」
「……いい加減にしてください。僕はあなたの家事の困りごと相談室じゃないんです」




