バディの条件 7
「んでよ。その代わりここ、ときどき仮眠室がわりに使わせてくんね?」
海東がそうとつづける。
牙をガチガチと鳴らし突進してくる少女をふたたび躱し、少女が前方につんのめったタイミングで腕を取りうしろに捻った。
「そんな話ししてる場合ですか」
離れのドアに背中をあずけて京也は反論した。
「いやいつでもいいんだけどよ、中学生くらいの嬢ちゃん一人に全力になってたら何か恥ずかしいからよ」
海東が少女の腕をググッと彼女の背中につける。
腕を不自然なかたちに曲げられ、少女が左右に体をゆすって抵抗した。
「……恥ずかしいって、そんな牙とか妙な動き見て何言ってんですか」
「よう知らんけど、精神疾患の一種とかじゃねえの? 牙も錯覚で大きく見えたっつうか。怪異的な人物なんてたいがいそんなオチだって」
海東がのんびりと返す。
「鏡から出てきたあの防犯カメラの映像とはべつだとでも?」
「べつだろ。この嬢ちゃんはどう見たって触ったって生身の人間だぞ。鏡から出てくるとか物理的にムリだろ」
少女が、うなるような声を上げる。
ますます大ぶりの動きで抵抗した。
「あーまあ嬢ちゃんもつらいだろうけど、警察がちゃんと精神鑑定のセンセイ呼んでやるからな」
海東が少女の頭をぽんぽんと軽くたたく。
ガァァ━━ッと少女が大きく吠えた。
さらに大きく体をゆすると、不自然に曲げられた腕を強引に外そうとする。
「おいやめろ。ムリしたら骨折するって」
海東が顔をしかめる。
「許せね゙え゙!! てめ゙え゙殺す!! ぜってえ゙殺す!! そこの゙胸くそ悪い゙声のや゙つとまとめてサイコロステーキにしてやるから゙覚悟しろ゙な゙ぁ゙━━━━!!!」
少女が低音の声で罵りながら体を大きく左右にゆさぶる。
「やめろって。骨折したら痛えぞ……!」
そう声を上げた海東の顔が、ふと真顔になる。
まさか、折れたのか。
京也はぶらんとあり得ない方向にぶら下がった少女の腕と、信じられないという顔で手を離した海東の顔を見つめた。




