包帯を置き去りにしたって
僕は慌てて会場へ急ぐ。
昇が僕を手招きする
「おせーよ。もう、二回戦突破しちまったぜ?」
「すごいね。ていうか、昇先鋒でいいの?」
昇が少し照れていう……。ああ、そういうことね
「あのな……」
「うん。聞かなくてもわかるからいいよ」
楓に褒められたんだね……
試合が終わったのか隆二が面を外しながら僕らの会話に入ってくる
「次は準々決勝。ねえ、昇。ちゃんと偵察した?」
昇の目が泳ぐ
「僕がしてくるよ、みんな疲れてるでしょ?こういうことは僕に任せて!」
僕は今日ルンルンって言っても車だけど病院に向かった。
鹿山尚武さんー診察室二番へどうぞ
中年の丸メガネのおやっさんが僕の担当だった
「あーもう多分普通に歩けると思うよ?でも走ったりはダメだから、激しいスポーツはね?後遺症で再発することも君の場合あるから。じゃあ、包帯外そっか」
ガラガラガラ……
くっさい。早く帰って風呂で洗お……
家に帰ってすぐ足を洗い僕は母親が運転する車に乗り込んだ
「ねえ、始まっちゃうってば!」
イライラしながら母親は答える
「ちょっとくらい遅れてっても大丈夫でしょ?」
うう、そうだけどさ………
ガチャ……バタン
母親は僕を下ろすとすぐに会社に向かっていった。
「ありがとう」
準々決勝……
昇が真剣な表情で面を被った。そして竹刀を構える。
開始の合図と共に昇はすぐさま飛び出した
……パアン
審査員たちが赤い旗を四本たてる
一本!ああ、やっぱりいいなあ。昔の僕みたいだ
楓はやっぱり僕なんかじゃダメだ………
パアン………
ビーーーー
気がつくと茂山が立っていた
「えーこれで三年は最後だったな。俺の責任だ。俺が二年のお前らに一本をあげさせてやれなかった。引退式は明日やるからな。それじゃあ解散」
パン……
準々決勝、敗退。県大会へは行けなかった。大将の隆二に回る頃には敗退が決定してた。
昇が近づいてくる
「ごめんな。連れていってやれなくて」
「別に、県大会行ったらさ思い出しちゃうじゃん。一年生の時そこで戦えてたことを」
昇がムッとした顔になる
「嫌味か?」
「嫌味」
僕をじっと睨んで隆二の方へ行ってしまった。
ポツ……ポツ……
「傘、持ってないなあ」
松葉杖がなくたって。僕は傘がさせないらしい




