重さを断つ風
蒼真と雷牙が一気に前に出た。
蒼真の踏み込みの速さで間合いを潰し、そのまま連撃へ繋げる。
天狗を止めるためではなく、このまま押し切るための攻撃だった。
その動きに重なるように雷牙が天狗の懐に滑り込む。
蒼真の連撃の余白に入り込み、わずかに生まれた隙間へ一撃を通した。
「紫電撃!」
二人の動きが噛み合う。
一瞬だけ、天狗の体勢が崩れた。
蒼真と雷牙の攻めが続く中で、場の重さが変わる。
足元が沈むような圧が走り、天狗の踏み込みの軌道がわずかに狂った。
そのズレが生まれた瞬間、また遠方から鋭い一撃が打ち込まれる。
狙いはぶれず、先程と一緒の再生に移ろうとした箇所へそのまま通った。
四人の連携は、形としては成立している。
だが、五人の時のようには噛み合いきらない。
ほんのわずかにズレていた。
灯真がいない。
その影響が、確実に出ていた。
蒼真の踏み込みに対して、圧のかかり方が合わない。
雷牙の動きに対するフォローが追いつかない。
その結果、流れが繋がらない。
そのズレを、天狗は見逃さなかった。
風の圧が一気に増し、攻撃の密度が上がる。
蒼真と雷牙が押し返された。
振り抜かれる一撃。
範囲ごと押し潰す攻撃で、回避の余地がない。
二人の動きが止まる。
その瞬間、空気が沈んだ。
重さが一気に落ちてくる。
見えない圧が天狗を押さえつけていた。
振り抜かれるはずだった攻撃が途中で止まる。
軌道が歪み、押し潰される。
蒼真と雷牙の目の前、あと一歩の位置で拳が止まる。
その後ろに、優雅が立っていた。
腕を上げたまま、歯を食いしばっている。
余裕はなく、明らかに限界に近かった。
「離…れろ…」
低く言う。
蒼真と雷牙が天狗から距離を取り、それを確認して、優雅が踏み込んだ。
(灯真……俺を守ったのはこうしてほしいからだろ……合ってるよな?)
「——重力…崩壊!」
空気が軋み、一点に圧が集まる。
逃げ場のない重さが、天狗を押し潰していた。
地面が歪み、瓦礫が浮き、至るところで砕ける。
天狗の体が地面に押し込まれ始める。
だが、沈みきらずに、わずかに持ち上がった。
天狗も耐えている。
優雅の呼吸が乱れた。
腕の震えが止まらない。
重力崩壊という技は相手にかけた重力の分だけ、自分にも同じ反動が返ってくる技である。
つまり、天狗が重力を振り切るか、優雅が先に押し潰すかの戦いとなっていた。
(押しきれない…)
このままでは優雅も崩れる。
それでも圧を緩めない。
さらに力を込めた。
空気が軋み、地面の沈みがより一層深くなる。
天狗の体が、もう一段落ちた。
それでも、天狗は止まらない。
押し潰されながら、天狗が動きだす。
無理やり体を起こし、重さを力でこじ開けた。
異常な密度で風が集まる。
優雅の表情が歪んだ。
耐えきれない。
それでも止めない。
(……ぶつかる!)
「天断風!!」
重さごと断ち切る風が解き放たれる。
圧が崩れ、空間が裂けた。
その光景を見て、翠霞が動く。
優雅の限界を理解する。
このままでは耐えきれない。
翠霞に迷いはなかった。
距離を一気に詰め、割り込む。
そのまま、受けた。
天断風が二人を飲み込む。
圧と風がぶつかり合い、空間が弾けた。
衝撃が消えたあと、優雅と翠霞はもう動かなかった。
風が止み、一瞬完全に静かになる。
残ったのは、二人。
蒼真と雷牙。
正面に、天狗が立っている。
距離は近く、二人とも逃げ場はない。
ここから先は、耐え切るしかない。




