表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断界の英雄  作者: 明太子
天断来臨
95/100

五つの意思

圧縮された風が解き放たれる。

次の刹那、空間が歪んだ。


押し潰す力が戦場一帯を呑み込み、三人の逃げ場ごと消し飛ばした。

地面が砕け、視界が引き剥がされる。


天狗の至近距離にいた蒼真の体が弾かれた。

踏み込みの勢いごと押し返され、地を削りながら後退する。

灯真も間合いを維持できず、強制的に引き離された。

上から見ていた翠霞さえ、流れを完全には外せず足場を崩される。


一撃で、全てが壊れた。

その余韻すら踏み潰すように、天狗は踏み込む。


天狗の狙いは蒼真である。

立て直すより速く、蒼真との間合いが詰まった。


終わる。


三人がそう思った、瞬間——


天狗の拳が落ちた。

見えない何かが空間に沈み込み、進んでいた力の流れが歪みだす。

風の軌道が全て狂い始めた。


ほんの一瞬だが、それだけで彼には十分だった。

戦場に閃光が走る。

視界を裂くような、一直線。

空気ごと貫く速度で叩き込まれたそれが、天狗の眼前に割り込んだ。


衝突ではなく、天狗の進行方向と蒼真の間に、無理やり通される。


風が途切れ、静止する。

天狗の流れが、そこで一度全て死んだ。


その中心に、影が落ちる。

何事もなかったかのように、静かに着地した。


足が地に触れた瞬間、周囲の空気がさらに沈み、重さが支配する。

もう一つの影が、その隣に踏み込んだ。

先刻までの速さのまま、地面を叩き割るように。

残光が遅れて消えた。


天狗がそこで理解する。

戦場の主導を奪われた。


ゆっくりと、顔が上がる。

「……だいぶやられてるな!」

軽い声だが、その場にいる誰よりも前に立っていた。


隣で、視線が戦場をなぞる。

「……今のは、確実に仕留めに来ていた」

短く、断言した。


二人の上から声が落ちてくる。

「耐えただけでも上出来でしょ」


遅れて、息を整えながら言葉が返ってきた。

「まあ、相手が相手だからね」


その空気の中で、蒼真が前へ出る。

体は重い。

だが、それでも足を止めない。


一歩、踏み出す。

「いいじゃん」

視線を外さず、静かに言う。

「それくらいじゃなきゃ、ここで倒す意味がない」


五人の空気が締まった。


灯真が、わずかに息を吐く。

「……僕たちの目標は一つだ」


全員の意識が揃う。

「犠牲は出さない。誰一人欠けずに、完全勝利する」


短く、言い切った。

灯真に応えるように、それぞれがわずかに動く。


笑う気配。

視線が戻る。

静かな頷き。


そして、

「……了解!」

五つの意思が重なる。


天狗がゆっくりと全員を見渡す。

「ようやく揃ったか」

静かに落ちる声。


その周囲で、風が再び動き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ