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断界の英雄  作者: 明太子
天断来臨
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均衡の裂け目

断ち切れる感触の直後。


宙を舞った天狗の片腕が地面に転がり落ち、静かに止まった。

血が吹き上げ、地面に滴り落ちる。

それでも、天狗は崩れない。


片腕を失ったまま体勢を整え、何事もなかったかのように構え直した。

視線はまっすぐで、呼吸にも乱れはない。


「……そうか」

低く落ちた声の直後、間合いが一気に詰まる。


蒼真の視界から外れた天狗が横に現れ、そのまま叩き込まれた衝撃が蒼真の体を押し流した。

受け止めながらも踏ん張りきれず、地面を削るように後退する。


距離を立て直そうとするより先に、次の攻撃が重なってきている。

天狗の動きに一切の無駄がない。

片腕になったことで余計な動作が削ぎ落とされ、必要な動きだけが残っていた。

その分、圧が増している。


ほんの少し前まで通していたはずの攻撃が、今は届かなくなっていた。

戦闘の流れが、完全にひっくり返されている。


そのときだった。

天狗の腕の切断面に、変化が現れる。


失われたはずの天狗の片腕に、力が集まっているのを蒼真と灯真は感じていた。

形を取り戻そうとする力が、そこに集まり始める。


(……再生する!)


その兆しが見えた瞬間、空気を裂く音が走った。


遠方から撃ち込まれた何かが、正確に天狗の切断面の一点を貫く。

そして、再生しかけていた片腕が内側から弾けた。

集まっていた天狗の流れごと崩され、再生は強引に断ち切られる。


「……翠霞!」

天狗の動きがわずかに止まった。


その一瞬を逃さず、蒼真が踏み込む。

同時に、横から灯真が間合いへ滑り込んだ。

天狗の退路を塞ぐように位置を取り、その動きを二人で制限する。


さらに上から、もう一手が重なった。

瓦礫の上に立つ翠霞が、指先だけをわずかに動かす。

「遊線!!」

軌道が変わっていく一撃が、再び正確に弾けた天狗の上半身に差し込まれた。


三人の動きが噛み合い、その動きに天狗は応じる。

だが、確実に天狗は押し込まれていた。

その一手を、三人は逃さない。


蒼真がさらに踏み込み、距離を詰め、その動きに合わせて、翠霞の攻撃が重なり、灯真が逃げ場を削る。


戦いの形が変わっていき、空気が張り詰める。

その中心で、天狗が静かに構えた。


残った腕を引き、重心を落とす。

風が天狗の片腕に集まり始めた。


散っていた流れが一つに束ねられ、周囲の空気が重く沈む。

足元の瓦礫が軋み、場全体が圧に包まれた。


三人の動きが、わずかに鈍る。

その一瞬を捉え、天狗が息を落とした。

「……烈風掌」


低く響いた声と同時に、圧縮された風の衝撃波が解き放たれる。

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