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断界の英雄  作者: 明太子
天断来臨
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壊れた軌道

二人が同時に踏み込んだ。


カナガラの拳が振り抜かれる。

一直線で迷いがない。

迅が体をずらし、紙一重で外した。


そのまま迅が懐に入り、拳を打つ。

鈍い音が響く。

カナガラの体が揺れる。


間を置かず、もう一撃。

さらに重ねる。

正確に打ち込み、体勢を崩す。


迅は止まらない。

肘を入れ、足を払う。

崩れたところへ追撃を重ねる。


主導権は完全に迅にあった。


カナガラが後ろに下がり、距離が空く。

息を吐きながらも、笑っている。

「強いね」


それでも、笑みは消えない。

「でもさ」

一歩踏み出す。

「まだ君は僕に勝てない」


「言っとけ」

迅が踏み込みながら、小さく吐き捨てた。

拳を打ち込む。

カナガラの腹部に深く入った。

さらに追撃を加え、肘を叩き込む。


そのまま押し切るはずだった。

だが、違和感が走る。


崩れたはずの体勢のまま、カナガラが止まらない。

体が不自然に曲がっている。

ありえない角度で。

それでも動こうとしている。


「ありがとう、鎖くん」

カナガラは笑っていた。


崩れた体勢のまま、蹴りが放たれる。

常識では届かないはずの軌道が、視界の外から差し込まれた。


迅の首に直撃する。

重い衝撃が走り、迅の体がぶれる。

わずかに遅れた。


その遅れを、カナガラは逃さない。

踏み込み、距離を奪った。


迅が腕で受けようとする。

だが間に合わない。


一撃を受けながら、思考が走った。

ーーおかしい。


強さの質が違う。

速さでも力でもない。

何かがおかしい。


天狗との戦いがよぎる。

あれと比べて、目の前のこれは。

「……」


わずかに視線が揺れた。


ーーこいつの方が上かもしれない。


確信ではない。

だが否定はできない。


思考が途切れきる前に、顔面に拳が叩き込まれる。


完全に主導権が移った。

迅がいなそうとする。

しかし絶妙に噛み合わない。


わずかにズレている。

カナガラの動きが読めない。


「いいな!!」

笑いながら踏み込む。

「こういうのがいい!!」


拳がぶつかり、重い音が響く。

一撃ごとに感覚が狂っていくのが分かった。


迅の動きが遅れる。

ほんのわずか。

だが、それで十分だった。


顔面に拳が入る。

直撃した。

迅の体が揺れる。


続けてもう一発。

呼吸が乱れていく。


さらに膝が入った。

重い衝撃で迅の体が浮く。


着地しようとするが体勢が崩れた。

カナガラが距離を潰す。


連撃が止まらない。

迅はもう受けようとしていなかった。


一撃ずつ重ねられる。

迅の体が持たない。


「崩れてきたな!!」

拳が振り抜かれ、またもや直撃した。


迅の体が流れ、足が床を削る。

そのまま壁へ叩きつけられる。


鈍い音が響いた。

部屋の床には血が流れていた。


一瞬動きが止まったが、終わろうとしなかった。

カナガラが詰めてくる。

逃がそうとしない。


カナガラが拳を振りながら口を開いた。

「実はね!あの時君と天狗の戦いを見ていたんだ!」

「……は?」

受けきれない。


「君と天狗の戦いを見た時、ビビッと来たんだ!」

身体中拳で打たれる。


「君となら僕は楽しめる!!」

カナガラは止まらない。


迅の体が揺れ、支えきれない。

膝が落ちる。

それでも立とうとした。


カナガラが笑う。

心底楽しそうに。

「いいな……まだ壊れない」


迅が顔を上げるが、拳が叩き込まれる。

視界が揺れ、音が遠くなっていくのが分かった。

足が崩れる。


そのまま前に倒れた。

床に落ちる音が響く。


迅はもう動かなかった。

完全に意識を失っている。

呼吸は浅く、出血量は多かった。


カナガラが迅を見下ろす。

しばらく動かなかったが、やがて笑った。


「ここからでしょ」

しゃがみ込んだカナガラは迅の髪を掴み、無理やり持ち上げた。

力なく迅の頭が揺れる。


「まだ壊せる」

カナガラの口角が上がった。

拳を振り上げる。

ためらいはない。


「じゃあ、終わりにしようか」

それは迅に向かって振り下ろされる。

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