終わらない狂気
金属の軌道が変わった。
さっきまでよりも速く、迷いがない。
雷牙が踏み込んだ。
「っらぁ!」
雷を纏った拳が一直線に伸びる。
だが、その軌道は途中で歪んだ。
引かれ、押され、ねじ曲げられる。
いつまで経っても届かない。
「……またかよ!」
次の瞬間、背後から衝撃が走る。
体が前へ弾かれ、床に叩きつけられる。
「ねぇ」
カナガラの声。
「さっきより雑になってない?」
興味なさそうに不貞腐れた感じで言う。
雷牙が顔を上げる。
「は?」
「もうちょっと綺麗に壊れてよ」
本気で言っている声だった。
悠雅が前に出る。
「雷牙、下がれ。一回組み直す」
だが、カナガラの指が動いた。
その瞬間、二人の体が同時に浮く。
「っ……!?」
空中で固定された。
動けない。
「我ながらいい位置だね。それならちゃんと見える」
周囲の金属が一点に集まる。
二人に逃げ場はない。
雷牙が歯を食いしばる。
「……ふざけんな!」
悠雅も動けない。
「……ここまでか」
カナガラが首を傾けながら、楽しそうに言う。
「どこから壊そうかな」
その瞬間、空間が裂けた。
カナガラの視界が歪む。
その直後、雷牙と悠雅の体が横へ引きずられる。
拘束が外れ、二人が床に落ちた。
集まっていた金属は、何もない空間に吸い込まれるように消えていく。
裂け目から、一人の男が現れた。
「遅ぇんだよ」
玲司は吐き捨てる。
そのまま前に出て、カナガラを見た。
「好き勝手やってんじゃねぇぞ」
空気と圧がぶつかりあう。
カナガラの視線が玲司に向いたとき、風が走る。
気づいたときには、もう一人いた。
迅がカナガラの背後に立っている。
そのまま迅は周囲を一瞥する。
歪んだ空間、浮いた金属、崩れた屋敷。
短く息を吐く。
「……派手にやってるな」
カナガラが振り返る。
「あ!侵入者だ!」
玲司が呆れたように言う。
「侵入者はお前だよ……」
迅は特に構えもせず、視線だけを向ける。
「お前がやってるのか」
それだけ聞いた。
カナガラの口元がわずかに歪む。
「そうだよ?」
少し嬉しそうに言う。
「壊れ方が増えた」
玲司が一歩踏み込んだ刹那、空間が歪んだ。
「おい」
低く言う。
「遊びは終わりだ」
玲司の姿が消えた。
空間を飛び越え、一気に距離を詰める。
カナガラの腹部に目掛けて、拳が振り抜かれる。
今までとは明らかに違う速度。
カナガラの操作がわずかに遅れた。
衝撃が入り、カナガラの体が後ろへ流れる。
カナガラの表情が変わる。
雷牙が目を見開き、悠雅が静かに言った。
「レベルが違うな」
迅がゆっくりと前に出る。
「じゃあ、始めるか」
声は静かだった。
だが、その一言で空気が変わる。
カナガラが笑った。
さっきまでとは違う笑い。
興味ではない。
もっと強い何か。
カナガラの笑いは止まらないーー




