壊れ方を見せて
二人が踏み込んだ瞬間、宙に浮いた金属が動き出した。
ばらばらの軌道で、同時に襲いかかる。
雷牙はそのまま前に出た。
雷を纏った拳を振るい、迫る金属に叩き込む。
勢いで弾き飛ばしたが、すぐに別の方向から入り込まれた。
避けた瞬間、足元が引かれて体勢が崩れる。
「っ、またかよ!」
踏ん張ろうとした足が浮いた。
そのまま横に引きずられ、壁に叩きつけられる。
「ねぇ今のさ」
カナガラが声をかける。
「崩れ方、ちょっと綺麗だった」
雷牙が顔をしかめる。
「は?」
「もう一回できる?」
本気で聞いている声だった。
雷牙の額にまた青筋が浮く。
「できるかボケ!」
そのまま前に踏み込んだ。
次の瞬間、見えない圧に押さえつけられる。
膝が沈み、動きが止まる。
「お、止まった」
楽しそうな声。
しかしカナガラは無理矢理動き出した。
圧が消えた瞬間、今度は横へ弾かれる。
体が浮き、そのまま床を滑る。
悠雅が前に出た。
「……範囲が異常だな」
周囲を見渡す。
おそらく床の中や壁の内側の金属まで動いている。
「全部使ってるのか」
重力が落ち、空気が重くなる。
カナガラの足元がまた沈んだ。
「お、重い」
軽く声が弾む。
「さっきよりいい」
それでも姿勢は崩れない。
「でもさ」
指が動く。
その瞬間、悠雅の体が浮いた。
「っ……!」
次の瞬間には逆方向へ引かれていた。
バランスが崩れたところに金属が集中する。
複数の方向から同時に来る。
悠雅は重力で軌道を逸らすが、すべては防げない。
肩に衝撃が入り、距離を取る。
「……面倒だな」
その横で、雷牙が立ち上がる。
血を拭いながら笑った。
「はは……いいじゃねぇか」
雷が強くなる。
「やっぱ強ぇ奴はこうじゃねぇとな!」
一気に踏み込む。
カナガラの視線が動いた。
「それそれ!」
楽しそうに言う。
「そういうのがいい!」
次の瞬間、雷牙の体が引かれ、押され、軌道が歪む。だが止まらない。
無理やり体勢を戻し、腕を振る。
雷牙の拳が掠めた。
カナガラの頬にわずかな傷が入る。
一瞬だけ空気が止まった。
雷牙が笑う。
「当たっただろ」
カナガラは自分の頬に触れる。
指に血が少し付く。
それを見て少しだけ考えた。
「……あれ」
首を傾ける。
「今の、なんで当たった?」
間を置く。
そして、急に笑う。
「やっば」
声が弾む。
「今のもう一回やって!」
完全に楽しんでいる。
空気が変わった。
悠雅が低く言う。
「……こいつ」
雷牙は笑ったまま前を見た。
「いいじゃねぇか」
雷をさらに強める。
「やりがいあるだろ!」
二人が同時に踏み込む。
だが、その瞬間に理解した。
届かない。
距離も軌道も、すべて操作されている。
それでも止まらない。
止まれない。
カナガラはその様子を見ながら、楽しそうに笑っていた。




