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断界の英雄  作者: 明太子
天断来臨
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壊れた想い

静けさが残った。


さっきまでの激しい戦いが嘘みたいに止まっている。誰も動けない。


ただ二人だけが向かい合っていた。

蝶使いと、人形使い。

「……なんで、あなたがここにいるの?」


低い声だった。

怒りだけじゃない、押し込めていた感情が混ざっている。


人形使いはすぐに答えない。

目を伏せたまま、小さく息を吐いた。


「……もう、やめて」

その一言が、静かに落ちる。


蝶使いの眉がわずかに動いた。

「何を言ってるの?ここまで来て、今さら止めるの?」


一歩近づく。

空気が張り詰めた。


「ふざけないで。ここまで全部、あなたのせいでしょ」

その言葉に、人形使いの肩がわずかに揺れる。


「……違う」

掠れた声だった。


「違わない」

すぐに返される。


「覚えてるんでしょ?」

その一言で空気が止まる。


人形使いの目がわずかに揺れたあと、静かに頷いた。

「……覚えてるよ」


その瞬間、蝶使いの表情が崩れる。

「じゃあなんで……なんでそんな顔してるの」


声が震えている。

怒りだけじゃない、押し込めていた何かが滲み出ている。


人形使いは答えない。

ただ一歩近づいて、目を上げた。

「……ごめん」


それだけだった。

その一言で、張り詰めていたものが一気に軋む。


「今さら謝って、何になるの」

蝶がざわめく。

空間がわずかに歪んだ。


「私がどれだけ……」

言葉が続かない。

息が詰まる。


そして、堪えきれずに溢れた。

「思い出さなくてよかったのに……!」

叫びと同時に蝶が乱れる。

制御を失い、空間が不安定に揺れる。


だが人形使いは動かない。

ただその言葉を受け止める。


「……ごめん」

もう一度繰り返す。

逃げずに、まっすぐに。


蝶使いの目から涙が落ちた。

「なんで……今さら……」


答えは分かっている。

それでも聞かずにいられない。


人形使いは静かに言った。

「終わらせるために来た」


その言葉で一瞬だけ動きが止まる。


短い沈黙のあと、蝶使いが小さく息を吐いた。

「……そう」


ゆっくり顔を上げる。

その目はもう揺れていなかった。


「なら、最後まで付き合いなさい」


蝶が再び舞い上がる。

さっきまでとは違う、静かで重い圧。


戦いが、もう一度動き出す。

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